日本大百科全書(ニッポニカ) 「鎮市」の意味・わかりやすい解説
鎮市
ちんし
中国、唐末五代、宋(そう)から一般化した地方の町。節度使が割拠したとき、地方の軍事、商業の要所に鎮を置き、地方経済、社会の核をなす町に発展した。文治による中央集権をねらった宋朝は、県1135に対し鎮1815と整理したものの、すでに地方社会の生活空間の核となっていた鎮が政府から公認されたことで、地方民衆の組織は自律の場を広げる結果となった。たいていの鎮は500~1000戸ぐらいで、内地税や専売の出張所、監鎮官が駐在し、商工業者、市場、郷紳(きょうしん)、寺廟(じびょう)がみられ、住民は都市民とされ、都市化の末端で重要な機能を果たした。行政ランクでは清(しん)末まで県が最末端であったから、鎮は政府からみて半公認の都市的存在といってもよい。
[斯波義信]
『斯波義信著『社会と経済の環境』(橋本万太郎編『民族の世界史5 民族と中国社会』所収・1983・山川出版社)』