日本古代の律令制八省の一つ。和訓は〈おさむるつかさ〉,唐名は礼部という。氏姓・系譜にかかわる訴訟,五位以上の官人の相続・婚姻,祥瑞,喪葬,外交,寺院・僧尼に関することなどをつかさどり,雅楽寮(ががくりよう),玄蕃寮(げんばりよう)と諸陵司(のち諸陵寮),喪儀司の2寮2司を管したが,喪儀司は9世紀初めに廃止された。職員は卿1人に大少の輔・丞・録の四等官,史生・省掌・使部などの下級職員のほか,氏姓・系譜の訴訟を担当する大少の解部(ときべ)がおかれている。《日本書紀》天武10年(681)9月の条に諸氏におのおの氏上を定めて理官(おさむるつかさ)に申告することを命じた記事がある。この理官が治部省の前身である。もともと日本には氏(うじ)の掌握を任務とする原初的な官司が存在していたようで,令制の治部省はそれを核とし,それにいくつかの新しい職務を付け加えて成立したと考えられる。令制下では官人制度が整備され,氏姓の重要性は相対的に低下したので,治部省の性格も変化し,奈良時代以降は仏事に関することがその職務の中心となった。
執筆者:熊谷 公男
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令制官司(りょうせいかんし)の八省の一つ。「おさむるつかさ」とも読む。この省の前身は理官(おさむるつかさ)で、681年(天武天皇10)に初見する。令制では太政官(だいじょうかん)の左弁官局(さべんかんきょく)に属し、五位以上の官人の本姓、継嗣(けいし)、婚姻などの氏族問題を取り扱うほか、祥瑞(しょうずい)、喪葬(そうそう)、贈賻(ぞうふ)(香典(こうでん))、国忌(こき)、諱(いみな)、外客の朝聘(ちょうへい)のことなどを監督する。この省は雅楽(うた)、玄蕃(げんば)の2寮と、諸陵、喪儀の2司を管轄し、その職員には卿(かみ)1人、大輔(だいすけ)1人、少輔1人、大丞(だいじょう)1人、少丞2人、大録(だいさかん)1人、少録3人の四等官(しとうかん)のほか、その下に史生10人があり、別に大解部(おおいときべ)4人、少(すない)解部6人、省掌2人、使部(つかいべ)60人、直丁(じきちょう)4人が所属する。このうち大少の解部は1司であり、とくに氏族内の譜第(ふだい)に関する訴訟を取り扱う。
[渡辺直彦]
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大宝・養老令制の官司。八省の一つ。姓氏・継嗣・婚姻など,身分の認定に関する事務を行い,所属する品官(ほんかん)の大少解部(ときべ)を指揮して姓氏についての訴訟の審理にあたった。君主の徳に応じて出現するとされた祥瑞も管理した。雅楽寮・玄蕃(げんば)寮・諸陵(しょりょう)司・喪儀(そうぎ)司などを被管にもち,これらを指揮して,喪葬儀礼や外交上の事務,仏教寺院・僧尼の管理統制にもあたった。前身官司は理官で,天武朝に儀式の進行・統制を行い,大学における官人の養成にもかかわった。
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…《日本書紀》天武10年(681)9月の条に諸氏におのおの氏上を定めて理官(おさむるつかさ)に申告することを命じた記事がある。この理官が治部省の前身である。もともと日本には氏(うじ)の掌握を任務とする原初的な官司が存在していたようで,令制の治部省はそれを核とし,それにいくつかの新しい職務を付け加えて成立したと考えられる。…
…日本古代の律令制の官庁組織をいう語。狭義には太政官(だいじようかん),神祇官(じんぎかん)の二官と中務(なかつかさ)省,式部(しきぶ)省,治部(じぶ)省,民部(みんぶ)省,兵部(ひようぶ)省,刑部(ぎようぶ)省,大蔵(おおくら)省,宮内(くない)省の八省を指すが,広義には,この二官・八省に統轄される八省被管の職・寮・司や弾正台(だんじようだい),衛府(えふ)などの中央官庁および大宰府(だざいふ)や諸国などの地方官庁を含む律令制の全官庁組織の総体をいい,ふつうは後者の意味で用いる。このような官庁組織は,7世紀後半から8世紀初めにかけて形成された。…
※「治部省」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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