雲脚(読み)クモアシ

デジタル大辞泉 「雲脚」の意味・読み・例文・類語

くも‐あし【雲脚/雲足】

雲の流れ動くさま。また、その速さ。「―が速い」
低く垂れ下がった雨雲
窓硝子をあげようとする間もなく、すぐもう低い―が切れていた」〈里見弴・安城家の兄弟
雲形に曲がったり、雲形の装飾のある机や台の脚。
[類語]雲行き空模様雲海雲形雲量

うん‐きゃく【雲脚】

雲が流れ動くこと。また、その速さ。くもあし
垂れ下がったように見える雲。くもあし。
粗悪な抹茶点茶の際に泡沫浮き雲のように早く消えてしまうところからいう。
香煎こうせん」に同じ。
[類語]雲行き雲海雲形雲量

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精選版 日本国語大辞典 「雲脚」の意味・読み・例文・類語

うん‐きゃく【雲脚】

  1. 〘 名詞 〙
  2. たれ下がったように見える雲。
    1. [初出の実例]「勢巻潮頭水鼠、光衝雲脚金蛇」(出典:詩聖堂詩集‐初編(1810)五・烟花戯)
    2. [その他の文献]〔陸游‐風雲交作戯題詩〕
  3. 雲の流れ。くもあし。
    1. [初出の実例]「雲脚随風雨脚升、禅庭秋景晩天澄」(出典:寛斎先生遺稿(1821)二・雨後僧院)
    2. [その他の文献]〔李賀‐崇義里滞雨詩〕
  4. 品質の悪い抹茶。茶せんを使うとしっとりする上等の抹茶に対し、雲が流れるようにお湯の中にさっと散ってしまう下等な抹茶。
    1. [初出の実例]「自大光寺新茶十包、雲脚大袋五、笋一束、贈之」(出典:蔭凉軒日録‐延徳二年(1490)四月一三日)
  5. こうせん(香煎)
    1. [初出の実例]「別寛承りて、頓て雲脚をたてて参らせ上ぐる」(出典:室町殿物語(1706)八)
  6. 三脚の、写真機をとりつける部分。

くも‐あし【雲脚・雲足】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 雲の流れ動く様子。また、その速さ。くものあし。うんきゃく。
    1. [初出の実例]「雲足早き雨空も、思ひがけなく吹晴れて」(出典:歌舞伎・小袖曾我薊色縫(十六夜清心)(1859)四立)
  3. 低くたれ下がった雨雲。うんきゃく。
    1. [初出の実例]「泥に塗(まみ)るる雨後の場(には)、雲脚(クモアシ)近くまだはれぬ」(出典:読本椿説弓張月(1807‐11)残)
  4. 机や台の脚の、雲形にかたどってつくったもの。
    1. [初出の実例]「花の時節は杉折の雲足(クモアシ)」(出典:浄瑠璃傾城酒呑童子(1718)四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雲脚」の意味・わかりやすい解説

雲脚
うんきゃく

『下学集(かがくしゅう)』(1444年成立)に「雲脚」として「悪茶名也、茶ノ泡早く滅(キ)ヘ浮雲ノ脚ノ早ク過ギ去ルガ如シ」と記すこともあって、雲脚すなわち粗悪な抹茶(まっちゃ)とされてきた。しかし、最近では、「茶少ク湯多クバ即チ雲ノ脚散ズ、湯少ク茶多クバ即チ雲ノ脚聚マル」のように、もともと「雲脚」は茶を立てる際の茶と湯のバランスに関する用語で、茶の質を意味するものではないこと、中世の日記類でも、雲脚茶は、しばしば「所望(しょもう)」や「贈答」の対象となっており、また雲脚茶を用いた「順事茶会」が催されていること、などから、むしろ上級茶の一種と考えるべきではないかといわれている。しかし、ただ「上級茶の一種」というだけでは「雲脚茶」の説明としては不十分で、その位置づけは今後の課題。雲脚茶会が「地下(じげ)の男共済々(せいせい)相い交」って催されている(『看聞日記』応永24年閏5月14日)のは注目される。

[丹生谷哲一]

『亀井孝校『下学集』(1944・岩波文庫)』『張建立著『茶道と茶の湯』(2004・淡交社)』

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