とくに厳密な定義があるわけではないが、一般的には、われわれの銀河系全体から出ている電波のことをいう。これは主としてシンクロトロン放射であり、銀河系内に存在する磁場に、高速の電子が巻き付くように運動する際に発生するものである。磁場の起源については、銀河回転によるダイナモ機構などが考えられているが、定説はない。高速の電子は超新星の爆発時や、プラズマ雲(超新星残骸(ざんがい)などにある電離したガス雲)どうしの衝突時に加速されて発生すると考えられている。
銀河電波は、アメリカのベル研究所の電気技師ジャンスキーにより、まったく偶然に1931年に発見された。これは銀河系の中心方向から到来する電波で、電波天文学史上、最初の観測であった。発見者にちなみ、電波の強度の単位をジャンスキー(1Jy=10-26ワット・単位ヘルツ・単位平方メートル)とよぶことになり、天文学の基本的な単位の一つになっている。電波強度は銀河面に沿って強く分布し、また銀河系中心方向で強くなる。強度は波長に依存し、波長が短くなるほど弱くなる。シンクロトロン放射は、磁場の方向に対応して直線偏波しており、直線偏波を観測することにより、逆に磁場の構造が解明できる。さらに強度分布などから、個々の超新星の残骸や、渦状腕(スパイラルアーム)の形状などを知ることができる。
銀河系からの電波は、このほか、電離水素領域からのものや、分子雲(星間空間にある、一酸化炭素、アンモニア、水などいろいろな分子が集まっているガス雲)から種々の分子が出すものがある。
[井上 允]
『赤羽賢司・海部宣男・田原博人著『宇宙電波天文学』(1988・共立出版)』▽『祖父江義明著『電波でみる銀河と宇宙』(1988・共立出版)』▽『小尾信彌著『銀河の科学』(1989・日本放送出版協会)』▽『ハインツ・R・パージェル著、黒星瑩一訳『星から銀河へ――ハーシェルの庭』(1993・地人書館)』▽『前田耕一郎著『電波の宇宙』(2002・コロナ社)』
われわれの銀河系内部で,いろいろな原因で放射される電波の総称。ただし,多くの場合,超新星残骸,太陽,惑星など個々の電波源に起因するものは除外し,また,水素21cm電波,分子スペクトル線などのスペクトルの電波も除外することが多い。そのような場合にはとくに区別して銀河バックグラウンド電波と呼ぶこともある。
地球から見ると銀河面(天の川)に沿って分布する〈円盤成分〉と,銀河を大きく取り巻くガスから放射されると考えられる〈ハロー成分〉および銀河中心を取り巻く成分とからなる。ただしハロー成分が実際に存在しているかどうかは多少疑問がある。円盤成分は,銀河系の円盤状の部分,すなわち渦巻の腕の部分から放射される電波で,波長数cm以上では高エネルギー電子が銀河磁場の中でらせん運動して発生するシンクロトロン放射,短い波長では熱電子の放射がおもである。前者のとくに顕著な特徴は,数ヵ所において銀河面から縦方向にのびる銀河スパーの存在である。近距離にある古い超新星の残骸などにより銀河面から離れたところにまで強い電波が広がっているものである。波長10m以上では,銀河面の熱電子による吸収によって銀河面から数度以内で電波強度は下がっている。銀河中心方向では多くの強い電波源が群がっており,これを包んで広がった電波が存在する。波長が長いほどこの電波は大きく広がり強度も高くなっている。波長数十cm以上では,天空からの電波は銀河中心および円盤成分がもっとも強く,偶然のチャンスからアメリカの物理学者ジャンスキーK.Janskyが発見(1939)したのもこの電波である。ハロー成分の存在は,電波強度の分布がやや非等方性をもち,銀河中心の方向で強いこと,アンドロメダ銀河もハローをもつことなどから受け入れられていたが,十分に確認されているとはいえない。
執筆者:森本 雅樹
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