風邪薬(読み)かぜぐすり

精選版 日本国語大辞典 「風邪薬」の意味・読み・例文・類語

かぜ‐ぐすり【風邪薬】

〘名〙
風邪治療に用いる薬。《季・冬》
浄瑠璃・源氏冷泉節(1710頃)上「敗毒散(はいどくさん)の風ぐすり、これぞあせかき、のりものかき」
② 酒の異称。風邪をひいたときに酒を熱くして飲むところから。
※雑俳・童の的(1754‐75)一「雑兵に汲つくされる風くすり」

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デジタル大辞泉 「風邪薬」の意味・読み・例文・類語

かぜ‐ぐすり【風邪薬/風薬】

風邪を治すために用いる薬。かざぐすり。 冬》
《熱くして飲むと風邪に効くとされるところから》酒のこと。
「まるで業を廃したら、―の小遣いどりができぬわえ」〈魯文安愚楽鍋

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改訂新版 世界大百科事典 「風邪薬」の意味・わかりやすい解説

風邪薬 (かぜぐすり)

風邪(感冒)に対する対症療法として用いる薬の通称。風邪の原因は未確定であるので,原則として原因療法は不可能である。そこで,風邪による呼吸器系の炎症主体とした諸種の症状緩和する目的で風邪薬が用いられる。風邪の症状としては,鼻みず,鼻づまり,のどの痛み,咳(せき),痰(たん),発熱,頭痛,関節や筋肉痛,下痢等がある。症状の多様性に対応して次のような各種の薬物が配合される。

ヒスタミン剤ともいう。各種の炎症やアレルギー性症状が生体内貯蔵部位から遊離されたヒスタミンによって生ずるという考えから,抗ヒスタミン薬を配合する。抗ヒスタミン薬のほとんどは中枢神経系に作用して眠気や倦怠感などの副作用を現すので,風邪薬服用時の乗物の運転などには注意を要する。

視床下部の体温調節中枢に作用して異常に上昇した体温を下げるほか鎮痛および抗炎症作用を示す。各種の解熱鎮痛薬が配合可能であるが,発疹その他の副作用を示すものが多い。とくにピリン系薬物と通称されるピラゾロン誘導体は,ショック様の症状を起こすことが社会問題となり,現在では市販薬には配合されない。ほとんどの解熱鎮痛薬は胃障害,消化性潰瘍の悪化を起こす。とくに空腹時には,他の配合薬の作用も強く現れるので,胃障害のない人でも風邪薬の服用は避けるべきである。

は本来生体の防衛反応であるから,みだりに抑制すべきではないが,過度の咳は心身を消耗させるので鎮咳ちんがい)薬を用いる。麻薬性鎮咳薬(コデインなど。含有量1/100以下の製剤は麻薬からはずされている)と非麻薬性鎮咳薬(デキストロメトールファンノスカピンなど)がある。呼吸中枢の一部としてまたはその近辺に存在するとされる咳中枢に作用するものと考えられている。

 以上の薬物以外に,中枢神経興奮により気分の上昇をはかったり,あるいは抗ヒスタミン薬による眠気を防止する目的でカフェイン等が配合されることが多い。気管支拡張により呼吸を楽にする目的で,気管支拡張薬のエフェドリンやメチルエフェドリンもよく配合される。これらは中枢興奮作用をも有する。ビタミン剤を配合したものもある。このように考えられるほとんどすべての症状に対処する総合的な風邪薬のほかに,特定の症状の緩和を主目的とし,たとえば鎮咳薬を主体としたものがあり,逆にたとえば鎮咳薬を除いたものなども市販されている。風邪薬の中にはかなり作用の強い薬物が配合されているので安易な服用は危険であり,とくに服用量は厳密に守るべきである。また小児の服用にも十分の注意を要する。二次的細菌感染による炎症等の症状の治療に医師は抗生物質を処方するが,これは普通の意味での風邪薬には含めない。
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百科事典マイペディア 「風邪薬」の意味・わかりやすい解説

風邪薬【かぜぐすり】

現在使用されている風邪薬は解熱と鎮痛の効果をねらったもので,アスピリン(アセトアミノフェン),エテンザミド,カフェインなどを主薬とし,これに抗ヒスタミン薬鎮咳(ちんがい)薬を加えたものである。葛根湯(かっこんとう)などの漢方処方も効果がある。いずれも初期に用いることが大切。一般用医薬品市場では〈総合感冒薬〉として種々の会社から販売されている。
→関連項目風邪

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世界大百科事典(旧版)内の風邪薬の言及

【風邪】より

…室内の温度,湿度に気をつけ,高カロリーで消化のよいものをとらせ,水分を十分に与えるとよい。発熱,頭痛,咳などの症状の軽減のために,いわゆる風邪薬が用いられるが,これらは,本来ウイルス感染には無効であり,病状を和らげるだけにすぎないので,過信して,過労になることは避けなければならない。 予防については,インフルエンザを除いて有効なワクチンはない。…

※「風邪薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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