食物アレルギー(読み)しょくもつアレルギー(英語表記)food allergy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

食物アレルギー
しょくもつアレルギー
food allergy

特定の食物摂取後に起こる病的な過剰反応(→アレルギー)。食中毒や毒性食物による反応,乳糖不耐症などの食物不耐症とは区別される。乳児や幼児に多くみられるが,加齢とともに耐性を獲得し症状を呈さなくなる場合もある。アトピー性皮膚炎じんま疹などの皮膚症状,下痢や嘔吐などの消化器症状,呼吸困難などの呼吸器症状のほか,全身性の激しいショック症状(→アナフィラキシー)を引き起こすなど生命にかかわる危険性もある。問診,血液検査皮膚反応を経て,食物除去試験,食物負荷試験を行ない原因食物を確定する。治療には原因食物の除去が最も効果的であるため,2001年,食品衛生法施行規則によって,重症度が高く症例数が多いとされるエビ,カニ,コムギ,そば,鶏卵,乳,ラッカセイ特定原材料と定め,加工食品食品添加物にこれらが含まれる場合はその旨を表示することが義務づけられた。国際食品規格委員会 Codex Alimentarius Commission(→国際食品規格)でも同様の合意がなされている。

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知恵蔵の解説

食物アレルギー

食物を摂取して発症するアレルギー。原因物質はアレルゲン(allergen=抗原)で、その大半がたんぱく質。食品衛生法に基づき、アレルギーを引き起こす可能性のある原材料名には表示義務がある(2002年7月実施)。その原材料は卵、乳、小麦ソバ落花生の5品目(発症率の70%)。また、発症率は低いがエビ、カニ、サバ、大豆、鶏肉などの19品目については、可能な限りの表示を推奨している。食品中のアレルゲンを除去、あるいは分解した低アレルゲン食品が開発されている。食材のつなぎとなる牛乳や卵を除去したアレルゲン除去食品(ハンバーグ、ソーセージ、マーガリン等)もあり、特別用途食品として認可されている。

(的場輝佳 関西福祉科学大学教授 / 2007年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

食物アレルギー

主な原因食品は卵、牛乳、小麦、甲殻類、ソバなど。じんましんやせき、目が腫れるなどの症状が現れる。血圧低下や意識消失を伴う重い症状「アナフィラキシーショック」の状態に陥ると命に関わることも。緊急時には自己注射薬「エピペン」を打つと和らぐとされる。 2012年12月、東京都調布市乳製品のアレルギーがあった小学5年の女児が給食時の誤食で亡くなる事故が起きた。

(2016-01-18 朝日新聞 朝刊 ちば首都圏・1地方)

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デジタル大辞泉の解説

しょくもつ‐アレルギー【食物アレルギー】

特定の食物を摂取した際に起こるアレルギー症状。
[補説]食品衛生法では、原材料にエビ、カニ、小麦、ソバ、卵、乳(牛乳・乳製品など)、落花生の7品目いずれかが含まれる場合は表示を義務づけている。さらに、アワビ、イカ、イクラオレンジキウイフルーツ、牛肉、クルミサケ、サバ、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マツタケ、モモ、ヤマイモリンゴゼラチンの18品目についても、表示を推奨するとしている。

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食の医学館の解説

しょくもつあれるぎー【食物アレルギー】

《どんな病気か?》


〈過剰な免疫反応が人体にマイナスに作用する〉
 人の体には、入ってくる異物を認識してこれを排除しようとする、免疫反応(めんえきはんのう)というしくみが備わっています。免疫反応は、細菌やウイルスなどから私たちの体をまもってくれるたいせつなしくみですが、なかには過剰に反応して不快な症状をもたらしたり、ときには生命をも脅(おびや)かすことがあります。このように、人にとってマイナスのかたちで作用するのがアレルギー反応です。
 アレルギー反応を起こす原因物質(アレルゲン)には、ダニやカビ、花粉やタバコの煙などがありますが、食べものがアレルゲンになっている場合を、とくに食物アレルギーといいます。
 私たちはふだん、いろいろなものを食べて栄養をとっています。こうした栄養分は、じつは体にとって異物になりますが、ふつうは免疫反応は起こりません。栄養分を吸収する腸管には独自の免疫調節機能が備わっていて、栄養となるものには免疫反応を起こさないよう、きちんと監視しているからです。
 食物アレルギーは、この免疫調節機能が乱れて起こります。
 アレルゲンとなるものには、たまごや牛乳、ダイズ、豚肉、そばなどがあり、食べると腹痛や下痢(げり)、嘔吐(おうと)などの症状を引き起こします。砂糖などの甘み成分やトウガラシの辛み成分もアレルギー反応を誘発します。
 アトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくのように、皮膚や呼吸器に症状がでる場合も少なくありません。
 ですから食物アレルギーの治療は、早めにアレルゲンとなる食物をつきとめて、献立から取り除くことが基本となります。

《関連する食品》


〈免疫機能を正常にもどす乳酸菌、ビフィズス菌〉
○栄養成分としての働きから
 乳酸菌飲料やヨーグルトに含まれている乳酸菌やビフィズス菌には、免疫機能のバランスを正常にもどす働きがあります。
 食物アレルギーの多くは、IgE(免疫グロブリンE)という抗体(こうたい)が、肥満細胞(ヒスタミンなどさまざまな化学物質を抱えた細胞)と結合することで起こります。乳酸菌にはこのIgEが体内でつくられるのを抑える作用があるのです。
 逆に、腸の粘膜(ねんまく)を覆(おお)っているIgA(免疫グロブリンA)という抗体は、食品に含まれるアレルゲンが腸管から入るのを防いで、アレルギー反応が起こらないようにする役目を負っています。実際、アレルギーの人は、体内でつくられるIgAが少ないことがわかっています。ビフィズス菌はこのIgAをふやして免疫機能を修正してくれます。
 魚の脂肪に含まれるIPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)にも、免疫機能を調整する作用があり、加えて食物アレルギーの症状であるぜんそくやアトピー性皮膚炎の炎症を抑える効果もあります。
 ただし、魚介類はアレルギー反応を誘発する可能性が高いので、IPA、DHAをとるときは、サプリメントで代用するとよいでしょう。
 植物油に含まれているリノール酸は、コレステロールの値を下げ、動脈硬化を予防する働きがあるとして、一時期大変注目されました。しかし最近では、過剰に摂取するとアレルギー症状を悪化させることがわかっています。
 この過剰摂取を解消するものとして期待されているのが、シソ油やエゴマ油などに多く含まれているα(アルファ)―リノレン酸です。
 α―リノレン酸は必須脂肪酸の1つで、体内で合成することができないため、食品からとらなければなりません。
 摂取すると体内で代謝(たいしゃ)によってIPAやDHAにかわり、アレルギー症状の緩和に働きます。
 もう1つ、ビタミンCやナイアシンには、アレルギー症状を起こす原因物質であるヒスタミンの生成を抑える効果があります。ビタミンCはブロッコリー、コマツナ、カリフラワー、芽キャベツに多く含まれています。
 ナイアシンは、魚類や肉類に豊富に含まれていますが、それらがアレルゲンとなることも多いので注意が必要です。心配な場合は、サプリメントで補給しましょう。
〈食品添加物を含むスナック菓子などはひかえる〉
○注意すべきこと
 食物アレルギーの症状の現れ方は複雑で、あるものを食べたからといって症状がすぐにでるとはかぎりません。
 複数の食品の相互作用によって起こることもあります。それだけに原因となる食品を見つけるのは、たいへんむずかしいといえます。早めに専門医に相談するとともに、食べた食品を記録して、症状の出方をよく観察してみてください。
 アレルゲンがまだ特定できない場合は、アレルギー反応を起こしやすい生ものは避け、できるだけ加熱調理したものをとるようにします。
 甘味料や香辛料、食品添加物もアレルゲンになるので注意が必要です。添加物の多いコーラやスナック菓子、チョコレートなどの甘いお菓子はひかえましょう。
 またアレルゲンがわかっている場合は、それと同じ食品群からアレルゲンにならないものを探すなどして、栄養バランスを欠かないよう、くれぐれも注意してください。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

食物アレルギー
しょくもつあれるぎー
food allergy

特定の食物を摂取するとアレルギー症状をおこす場合をいう。その特定食物には魚類(とくに青身の魚)や肉類(とくに豚肉)のほか、牛乳、鶏卵、貝類、エビ、カニ、大豆、穀類、そば、チョコレートなどがある。近年の調査で食物アレルギーを引き起こすことが明らかになった食品のうち、とくに発症数が多いものとして、エビ、カニ、小麦、卵、乳の5品目と、症状が重篤で生命にかかわるためとくに留意が必要なものとして、ソバ、ラッカセイの2品目、合計7品目が、食品衛生法施行規則で「特定原材料」として定められた。これらを含む加工食品については、2002年(平成14)4月からその表示が義務化されている。また通知で表示を奨励する品目(特定原材料に準ずるもの)として、アワビ、イカ、イクラ、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、クルミ、サケ、サバ、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マツタケ、モモ、ヤマイモ、リンゴ、ゼラチンの18品目があげられ、先にあげた7品目とあわせた25品目(2013年9月時点)が「原材料表示すべき特定原材料等」とされている。
 原因となる食物は多種類にわたることもあり、また食べるたびに症状が現れるとは限らない。一般に、おもな症状として腹痛、下痢、湿疹(しっしん)、じんま疹、くしゃみ、咳(せき)、鼻汁、喘息(ぜんそく)発作などがある。
 診断法としては、詳細な食事日誌(みそ汁のだし、食用油の種類まで)を1~2か月間つけて、特定の食物と症状との因果関係を調べたうえで、疑わしい食物を1~2週間避け、症状がよくなったか不変だったかを観察したり、疑わしい食物を試験的に食べたとき症状が現れ、その食物を除去すると症状が消失することを確かめる方法がある。近年は食物抗原検索用の試験管内テストも行われ、ラジオアレルゴソルベントテストradioallergosorbent test(RAST)という。放射性同位体ヨウ素125(125I)で標識した抗免疫グロブリンE(IgE)を作用させて特異的IgE抗体を半定量する。食物抗原注射による減感作(かんさ)療法は行わない。治療は原因食物を食べないこと。[高橋昭三]
『西間三馨著『子どもの食物アレルギー』(1993・学習研究社) ▽上田伸男編著『食物アレルギーがわかる本』(1999・日本評論社) ▽松延正之著『ひろがる食物アレルギーの不思議――複雑化する中での対応』(2000・芽ばえ社) ▽上田伸男・坂井堅太郎『食物アレルギーと食育』(2001・少年写真新聞社) ▽中村晋・飯倉洋治編著『最新 食物アレルギー』(2002・永井書店) ▽角田和彦著『食物アレルギーとアナフィラキシー』(2003・芽ばえ社) ▽馬場実著『やさしい食物アレルギーの自己管理』(2003・医薬ジャーナル社) ▽馬場実・中川武正編『食物アレルギーの手びき――正しい知識と治療、食生活指導』改訂第2版(2003・南江堂) ▽小林陽之助著『食物アレルギーの治療と管理』(2004・診断と治療社)』

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内科学 第10版の解説

食物アレルギー(アレルギー性疾患)

定義・概念
 食物アレルギーは,食物を摂取することにより引き起こされるが,食物摂取による生体への傷害性の反応(adverse reactions to food)は,毒性反応と非毒性反応に大きく分けられ,食物アレルギーは非毒性反応に含まれる.非毒性反応には,食物アレルギーのほかに食物不耐症(food intolerance)があり,食物アレルギーが免疫学的機序により惹起されるのに対し,食物不耐症は先天性代謝異常(ラクターゼ欠損症など)をはじめとした非免疫学的機序に起因する多様な疾患よりなる.
 わが国の食物アレルギーの原因食品として,鶏卵,牛乳,大豆が3大アレルゲンといわれてきた.しかし,最近の調査によると,大豆よりも小麦の頻度が高く,7歳以後はそば,エビ,魚介類による食物アレルギーが増加する(図10-30-1,表10-30-1).
病因・病態
 消化管は,必要な栄養を吸収する組織であり,また細菌やウイルスなどの有害物質の侵入から生体を防御する最前線でもある.すなわち,腸管は多様な機能をもち,栄養となる食物蛋白質には排除的な免疫応答を誘導せず,病原微生物などの有害物質には免疫応答することにより生体への侵入を阻止する.そこで,経口的に摂取された食物に対しては,経口免疫寛容とよばれる抗原特異的な全身性の免疫不応答が誘導され,消化管の免疫応答をコントロールするシステムが働いている.このような消化管に特徴的な免疫応答制御機構の異常が食物アレルギーの原因と考えられる.
疫学
 食物アレルギーの有症率については,欧米では3歳以下の小児の6%,成人では約1.5%との報告がある.わが国では1997年に3歳児,小学生,中学生,成人を対象に全国規模のアンケート調査が行われたが,6.2~9.3%に即時型食物アレルギーを示す回答がみられた.現在のところ乳幼児期の有症率は5~10%であるのに対し,学童期では,学校給食における食物アレルギーの申請率は1.3%であり,2004年文部科学省の調査では2.3~2.6%となっている.
臨床症状
 食物アレルギーは多彩な臨床症状を示すが(表10-30-2),全身性の即時型反応であるアナフィラキシーは最も重篤な食物アレルギーの症状であり,通常食物摂取後15分から30分以内に発症し,じんま疹,血管性浮腫,喉頭浮腫,気管支攣縮,血圧低下,不整脈,腹疝痛などを呈する.消化器症状のなかでも口腔粘膜の症状が主体で,ほかのアレルギー症状を伴わない食物アレルギーを口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome)とよび,接触性じんま疹と考えられている.野菜,果実が原因であることが多い.このほかに食物アレルギー関連疾患として,精神神経症状をはじめとした多彩な症状を示すアレルギー性緊張・弛緩症候群や,特定の食物を摂取して運動をすると全身にアレルギー症状が引き起こされる食物依存性運動誘発アナフィラキシー【⇨10-27】などがある.
検査成績
 アレルゲン特異的IgE抗体値,総IgE値や末梢血好酸球数の測定,好塩基球ヒスタミン遊離試験またアレルゲン液を用いた皮膚テスト(プリックテスト,スクラッチテスト,パッチテスト)などが行われる.しかし,これら検査結果は必ずしも食物負荷試験の結果と一致せず,食物アレルギーの診断に直接結びつくものでないことに注意する必要がある.
診断・鑑別診断
 臨床症状の発現と食物摂取の関係についての詳細な問診が大切である.問診からの情報と検査所見をもとに疑わしい食物を除去し症状の改善を確かめる食物除去試験と,疑わしい食物を負荷して症状発現の再現性を確認する負荷試験を行う.この食物負荷試験は,医師の管理のもとに症状の発現を確認するものであり,最も重要な診断的意義を有する.しかし,負荷試験はアナフィラキシーを引き起こす可能性があることより,インフォームドコンセントの取得に十分配慮し慎重に行う必要がある. 鑑別診断は,食物アレルギーと同様の症状の発現にかかわる種々の原因を慎重に除外することによるが,原因食品の同定において食品に含まれるセロトニンやヒスタミンなどの薬理活性物質や食品添加物に注意する必要がある.
経過・予後
 予後については,乳児の食物アレルギーは寛解しやすく,特に牛乳と卵に対しては耐性を獲得しやすい.しかし,ピーナッツ,そば,魚類,エビ・カニなどの甲殻類などに対する食物アレルギーは,長期間除去食療法を行っても耐性の獲得が困難なことが多い.
治療・予防
 原因となる食物を摂取しない除去食療法が,治療の基本である.しかし,厳格な除去食療法は栄養障害や摂食障害を引き起こすことから,適切な栄養指導のもとで行う.また,特異的IgE抗体値の推移を参考に除去食後,12~18カ月で食物負荷試験を行い,耐性が獲得されれば除去食療法を解除する.薬物療法としては,経口クロモグリク酸ナトリウムなどの抗アレルギー薬が使われる.また,アナフィラキシーへの医療機関外での対処法としてアドレナリン自己注射薬(エピペン)の使用が認められている.最近はまだ研究段階だが,学童期になっても食物アレルギーが改善しない症例に,原因食物を計画的に摂取させることにより耐性を誘導する経口免疫療法も試みられている.[河野陽一]
■文献
Metcalfe DD, Sampson HA, et al: Food allergy. In: Adverse Reactions to Foods and Food Additives, 4th ed, Blackwell Publishing, Massachusetts, 2008.
日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:食物アレルギー診療ガイドライン2012(宇理須厚雄,近藤直実監修),協和企画,東京,2011.

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