2004年(平成16)の食糧法改正までの米流通ルートのうち、生産者が農業協同組合などの登録出荷取扱業者を通じて登録卸売業者等に売り渡していた米のこと。1995年施行された食糧法のもとで、当初は米流通の主役と位置づけられ、政府米とともに計画流通米を構成した。自主流通米が流通ルートに登場したのは旧食糧管理法下の1969年(昭和44)である。食糧管理特別会計の赤字を軽減し、消費者の良食味指向に対応するため、米流通に市場原理の導入を図る方途として設けられた。良食味米を中心に主食用粳米(うるちまい)の大部分および酒米、糯米(もちごめ)の全部がこのルートで流通し、自主流通米の一部が自主流通米価格形成センター(現全国米穀取引・価格形成センター)に上場され、その価格を目安に出荷・卸業者間の取引が行われた。1998年産米では流通総量約824万トンに対し、計画流通米は552万トン、うち自主流通米が434万トンを占め、価格は1993年の大凶作時まで上昇を続けた後、在庫増加等により急激に低下し、稲作経営安定対策や生産調整対策など「新たな米政策」の導入を余儀なくさせた。また米消費の減退傾向が続くなかで、自主流通米制度は消費者には選択の幅を広げたものの、米の味質をめぐる産地間競争を激化させる一方、政府米の古米在庫化を促したり、格上げ混米や計画外流通米の増大などの事態を引き起こした。
[竹谷裕之]
2004年の食糧法改正で計画流通制度が廃止されたことにより、計画流通米と計画外流通米の区別はなくなり、自主流通米と計画外流通米をあわせて民間流通米とよぶようになった。
[編集部]
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米の流通はかつて食糧管理制度のもとで,国の直接管理下にある政府米と,政府の手を経ないで特定のルートで流通する米とがあり,後者が自主流通米である。自主流通米は生産者→集荷業者(ほとんどが農協)→卸売業者→小売業者→消費者と流通するが,価格決定には政府は直接関与せず,自主流通米価格形成センターでの入札取引により決まる。つまり市場経済的に決められる。新食糧法のもとでは米流通の主役は自主流通米であるが,自主流通米も政府が年々決める需給計画(計画流通制度)の枠のなかに位置づけられている。そもそも自主流通米制度は1969年産米から始まったが,その目的の一つは消費者のコシヒカリ,ササニシキなどの〈うまい米〉(銘柄品種の項参照)への需要にこたえ,生産者もより高く売って利益を得ることにあった。自主流通米は97米穀年度には465万tで,うち410万tは主食用うるち米,19万tが加工用米である。96年産生産量に占める比率は40%であった。なお計画流通米全体は580万tで,自主流通米が80%を占める。
執筆者:持田 恵三
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…1970年から減産政策が行われており(〈生産調整〉の項目を参照),米生産は現在きびしい作付制限下にある。過剰時代に入って〈配給ノ統制〉をしていた食糧管理制度も改正され,自主流通米が認められるようになった。自主流通米制度は,コシヒカリ,ササニシキなどの良質米作付けを条件のあわないところにまで拡大し,気象変動を受けやすくしている。…
…米価は米の品質によって差があり,玄米の場合は銘柄,等級別に多様な価格が各段階ごとに形成されるが,小売白米は小売業者がそれぞれ品質別の何種類かの商品を作り,価格をつけるのが普通である。
[制度の変更]
食糧管理法の廃止(1995)までの食糧管理制度のもとでは,米は政府米と自主流通米(1969年産米から制度化)に分けられていた。政府米の場合は生産者価格は政府の買入価格であり,卸商へ政府が売る価格が売渡価格であって,いずれも毎年米価審議会の議を経て政府が決定する。…
※「自主流通米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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