自主流通米(読み)ジシュリュウツウマイ

デジタル大辞泉 「自主流通米」の意味・読み・例文・類語

じしゅりゅうつう‐まい〔ジシユリウツウ‐〕【自主流通米】

生産者業者が自由な価格をつけて販売する米。食糧管理制度下での区分で、昭和44年(1969)開始。平成16年(2004)の食糧法改正により廃止された。→民間流通米

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「自主流通米」の意味・読み・例文・類語

じしゅりゅうつう‐まいジシュリウツウ‥【自主流通米】

  1. 〘 名詞 〙 農産物検査法にもとづく国の検査を受けた後、国の定めた米穀の流通制度の枠内で自由に売買できる米。政府米に対していう。昭和四四年(一九六九)から導入。平成七年(一九九五)の新食糧法施行後は、政府米と併せて計画流通米と称する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「自主流通米」の意味・わかりやすい解説

自主流通米
じしゅりゅうつうまい

2004年(平成16)の食糧法改正までの米流通ルートのうち、生産者が農業協同組合などの登録出荷取扱業者を通じて登録卸売業者等に売り渡していた米のこと。1995年施行された食糧法のもとで、当初は米流通の主役と位置づけられ、政府米とともに計画流通米を構成した。自主流通米が流通ルートに登場したのは旧食糧管理法下の1969年(昭和44)である。食糧管理特別会計赤字を軽減し、消費者の良食味指向に対応するため、米流通に市場原理の導入を図る方途として設けられた。良食味米を中心に主食用粳米(うるちまい)の大部分および酒米、糯米(もちごめ)の全部がこのルートで流通し、自主流通米の一部が自主流通米価格形成センター(現全国米穀取引・価格形成センター)に上場され、その価格を目安に出荷・卸業者間の取引が行われた。1998年産米では流通総量約824万トンに対し、計画流通米は552万トン、うち自主流通米が434万トンを占め、価格は1993年の大凶作時まで上昇を続けた後、在庫増加等により急激に低下し、稲作経営安定対策や生産調整対策など「新たな米政策」の導入を余儀なくさせた。また米消費の減退傾向が続くなかで、自主流通米制度は消費者には選択の幅を広げたものの、米の味質をめぐる産地間競争を激化させる一方、政府米の古米在庫化を促したり、格上げ混米や計画外流通米の増大などの事態を引き起こした。

[竹谷裕之]

 2004年の食糧法改正で計画流通制度が廃止されたことにより、計画流通米と計画外流通米の区別はなくなり、自主流通米と計画外流通米をあわせて民間流通米とよぶようになった。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自主流通米」の意味・わかりやすい解説

自主流通米
じしゅりゅうつうまい

農家から集荷業者(農業協同組合)を通じ,政府の手を通さないで直接卸業者に流通させた米。1969年に流通経路の合理化,食糧管理特別会計の赤字の縮小などを目的として実施された。自主流通といっても政府米とほぼ同じ経路で流通し,政府米との違いは,価格決定が政府ではなく政府に指定を受けた集荷業者と卸業者の交渉によって決定される点であった。最も多い時期には全流通米の 7割をも占めた。生産者に対して米の再生産を確保し,消費者には一定品質と価格の安定した供給をはかるという政府米の役割は,当時まだ重要とされていた。食糧庁は自主流通米市場においても入札の値幅を制限するというかたちで価格決定の指導管理を行なっていた。その後,政府は自主流通米を流通の中心に位置づけ,規制をいっそう緩和し,価格形成に市場原理導入をはかるため,1990年に自主流通米価格形成機構が設立され,入札取引が始まった。1995年に食糧管理法が廃止され,代わって施行された主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(食糧法)に基づき,入札を通じて米取引の適正な価格形成を担保するために自主流通米価格形成センターが設けられ,国による全量管理から民間主導へと大きく変わった。2004年の食糧法改正により,計画流通制度が廃止され,自主流通米の区分も廃止された。同センターの法律上の名称は米穀価格形成センターに変わった。一方,計画流通制度がなくなったことにより義務上場も廃止され,相対取引が主流になった。取引量の激減でセンターとしての機能が果たせなくなり,2011年に同センターは解散した。流通規制が原則として廃止されたことで,自主流通米は事実上なくなった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「自主流通米」の意味・わかりやすい解説

自主流通米 (じしゅりゅうつうまい)

米の流通はかつて食糧管理制度のもとで,国の直接管理下にある政府米と,政府の手を経ないで特定のルートで流通する米とがあり,後者が自主流通米である。自主流通米は生産者→集荷業者(ほとんどが農協)→卸売業者→小売業者→消費者と流通するが,価格決定には政府は直接関与せず,自主流通米価格形成センターでの入札取引により決まる。つまり市場経済的に決められる。新食糧法のもとでは米流通の主役は自主流通米であるが,自主流通米も政府が年々決める需給計画(計画流通制度)の枠のなかに位置づけられている。そもそも自主流通米制度は1969年産米から始まったが,その目的の一つは消費者のコシヒカリ,ササニシキなどの〈うまい米〉(銘柄品種の項参照)への需要にこたえ,生産者もより高く売って利益を得ることにあった。自主流通米は97米穀年度には465万tで,うち410万tは主食用うるち米,19万tが加工用米である。96年産生産量に占める比率は40%であった。なお計画流通米全体は580万tで,自主流通米が80%を占める。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「自主流通米」の意味・わかりやすい解説

自主流通米【じしゅりゅうつうまい】

1969年産米から実施された制度。米生産者は指定集荷業者に委託して米の指定卸業者などに直接売ることを認められた。価格決定には政府は直接関与せず,集荷業者の団体との間で年々決められる。自主流通米は1998年10月期では年間417万tで,主食米の約8割。農林水産省は,価格形成を業者協議による固定方式から市場メカニズム導入方式へ改めるべく,1990年に〈自主流通米価格形成センター〉を開設した。
→関連項目食糧管理制度米穀配給制度銘柄米

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の自主流通米の言及

【米】より

…1970年から減産政策が行われており(〈生産調整〉の項目を参照),米生産は現在きびしい作付制限下にある。過剰時代に入って〈配給ノ統制〉をしていた食糧管理制度も改正され,自主流通米が認められるようになった。自主流通米制度は,コシヒカリ,ササニシキなどの良質米作付けを条件のあわないところにまで拡大し,気象変動を受けやすくしている。…

【米価】より

…米価は米の品質によって差があり,玄米の場合は銘柄,等級別に多様な価格が各段階ごとに形成されるが,小売白米は小売業者がそれぞれ品質別の何種類かの商品を作り,価格をつけるのが普通である。
[制度の変更]
 食糧管理法の廃止(1995)までの食糧管理制度のもとでは,米は政府米と自主流通米(1969年産米から制度化)に分けられていた。政府米の場合は生産者価格は政府の買入価格であり,卸商へ政府が売る価格が売渡価格であって,いずれも毎年米価審議会の議を経て政府が決定する。…

※「自主流通米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android