硫酸マグネシウム(読み)リュウサンマグネシウム(英語表記)magnesium sulfate

デジタル大辞泉 「硫酸マグネシウム」の意味・読み・例文・類語

りゅうさん‐マグネシウム〔リウサン‐〕【硫酸マグネシウム】

マグネシウム硫酸塩。無水和物白色粉末。ふつう七水和物をさし、白色結晶で、瀉利塩しゃりえんともいい、古くから下剤として利用。水によく溶ける。海水中に含まれ、苦汁にがり主成分媒染剤などに利用。化学式MgSO4 硫酸苦土くど

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精選版 日本国語大辞典 「硫酸マグネシウム」の意味・読み・例文・類語

りゅうさん‐マグネシウムリウサン‥【硫酸マグネシウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( マグネシウムは[英語] magnesium )[ 異表記 ]マグネシア マグネシウムの硫酸塩。化学式 MgSO4 無水塩は白色粉末。普通は七分子の結晶水をもった白色の結晶で瀉利塩(しゃりえん)という。にがりの主成分。古くから下剤に用いる。硫苦。エプソム塩硫酸苦土
    1. [初出の実例]「硫酸と純粋『マグネシア』とを合すれば、瀉利塩(硫酸マグネシア)となる」(出典:気海観瀾広義(1851‐58)二)

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改訂新版 世界大百科事典 「硫酸マグネシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸マグネシウム (りゅうさんマグネシウム)
magnesium sulfate

化学式MgSO4。天然には,1水和物(キーゼル石)と7水和物(エプソマイト)が知られ,そのほか岩塩(とくにカリ塩鉱)中に種々の組成の複塩をつくって含まれる。また海水中に0.18%ほど含まれる。工業的には,海水からとれる〈にがり〉から,またカリ工業の副産物として製造されるが,純粋なものは酸化マグネシウムを硫酸に溶かした溶液を濃縮して得られる。結晶が析出する温度が1.8℃以下だと12分子,1.8~48.3℃だと7分子,48.3~68℃だと6分子,68℃以上では1分子の結晶水をもつ水和物が得られ,そのほか条件によっては2,4,5分子の結晶水をもつ不安定な結晶が生ずることもある。これらの塩を加熱脱水すれば無水和物となる。水和物も無水和物もすべて無色の結晶で,無水和物は比重2.66,融点1185℃。融点付近で熱分解して酸化マグネシウムになる。水に易溶で,100gの水に0℃で26.9g,100℃では68.3g溶け,アルコールにもやや溶ける。1水和物は比重2.57,7水和物は1.68で,後者は[Mg(H2O)62⁺とSO42⁻の両イオンがイオン格子をつくり,残った水分子がその間に介在している。これは硫酸亜鉛や硫酸ニッケルの7水和物とも同形である。7水和物は,湿った空気中に保存すれば安定であるが,乾燥した空気中では徐々に風解し,また68℃以上では自分の結晶水に溶けて液化する。水溶液は苦い。製紙工業における充てん剤,染色の媒染剤に用い,また布の不燃加工にも利用する。また古くから緩下剤として用いられるが,これは腸壁からの水分の吸収を妨げる作用があるためで,このため7水和物には瀉利塩(しやりえん)という古名も残っている。
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化学辞典 第2版 「硫酸マグネシウム」の解説

硫酸マグネシウム
リュウサンマグネシウム
magnesium sulfate

MgSO4(120.37).無水物のほか,多くの水和物が存在する.一般に硫酸マグネシウムとよぶのは七水和物のことである.天然にはアルカリ金属塩との複塩の形でキーゼル石(MgSO4・H2O),カイナイト(KCl・MgSO4・3H2O),ラングバイナイト(K2SO4・2MgSO4),ブレード石(Na2SO4・MgSO4・4H2O),ファントホファイト(3Na2SO4・MgSO4)として産出する.酸化マグネシウムを硫酸に溶かし,加熱濾過した濾液から七水和物が得られる.赤熱すれば無水物となる.無水物は白色の結晶性粉末.密度2.66 g cm-3.融点1185 ℃.それ以上で分解し,酸素,二酸化硫黄,三酸化硫黄を発生して酸化マグネシウムを生じる.水に易溶.飽和水溶液からは-3.9~1.8 ℃ で十二水和物が,1.8~48.1 ℃ で七水和物が,48.1~67.5 ℃ で六水和物が,67.5 ℃ 以上では一水和物が析出する.七水和物は一般にシャリ塩,エプソム塩,硫マグなどとよばれる無色の斜方晶系結晶.乾燥した空気中で風解する.密度1.68 g cm-3.融点67.5 ℃.水に可溶,エタノールに難溶.豆腐凝固剤,脱水剤,紙の充填剤,媒染剤,医薬品(緩下剤),耐火綿布の製造,陶磁器,化粧品,苦土肥料人工海水,発酵助剤などに用いられる.[CAS 7487-88-9:MgSO4][CAS 14168-73-1:MgSO4・H2O][CAS 10034-99-8:MgSO4・7H2O]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫酸マグネシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸マグネシウム
りゅうさんマグネシウム
magnesium sulfate

化学式 MgSO4 。無水塩のほかに,1,2,3,4,5,6,7および 12水和物がある。普通は7水和物で存在する。シャリ塩,エプソム塩ともいう。天然にはドイツのシュタスフルトの岩塩層中に1水和物が硫酸苦土石 (キーゼル石) として発見され,また KCl ・ MgSO4 ・ 3H2O (カイナイト) ,K2SO4 ・ 2MgSO4 (ラングバイン石) ,Na2SO4 ・ MgSO4 ・ 4H2O (ブレード石) などとして産する。工業的には海水から,またはカリ工業の副産物として製造する。無色結晶で,味は苦く,清涼みおよび辛みがある。 1gは水 1.5mlまたは熱湯 0.2mlに溶け,グリセリン 1mlに徐々に溶け,エチルアルコールに溶けにくい。無水塩の融点 1185℃,7水塩は 68℃以上で結晶水に溶ける。紙の充填剤,絹の増量剤,耐火綿布の製造,媒染剤として使用。医薬としては主要な塩類下剤であり,さらにバリウムやバルビタール中毒の解毒剤,胆汁採取時の胆嚢収縮剤,破傷風時の抗けいれん薬などとしても用いられる。腎臓からすみやかに排泄されるが,腎不全の場合にはマグネシウム中毒を起す。特に非経口的に多量投与した場合,全身の熱感,血圧下降,心機能抑制,中枢神経抑制などが生じることがある。治療には 10%グルコン酸カルシウムの静脈注射をする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫酸マグネシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸マグネシウム
りゅうさんまぐねしうむ
magnesium sulfate

マグネシウムの硫酸塩。無水和物のほか、一、二、四、五、六、七および12水和物がある。通常は七水和物をさし、シャリ塩、エプソム塩などの名がある。天然にはキーゼライトとして一水和物の形で産出する。工業的にはキーゼライトの熱水による再結晶、苦汁(にがり)、天然鹹水(かんすい)、カリ工業廃液などからの分別結晶で得られる。飽和水溶液からの晶出温度によって水和状態が異なってくる。1.8℃から48.1℃の間で七水和物が得られる。無色の四角柱状結晶。風解性。エタノール(エチルアルコール)に可溶。水和物を赤熱脱水すると無水和物(白色結晶状粉末)が得られる。紙の充填(じゅうてん)剤、媒染剤のほか医薬品としても用いられる。

[鳥居泰男]


硫酸マグネシウム(データノート)
りゅうさんまぐねしうむでーたのーと

硫酸マグネシウム
硫酸マグネシウム七水和物
MgSO4・7H2O
式量246.5
融点67.5℃
沸点
比重1.68
結晶系斜方
屈折率(n) 1.4554
溶解度178g/100g(水40℃)

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百科事典マイペディア 「硫酸マグネシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸マグネシウム【りゅうさんマグネシウム】

化学式はMgSO4。比重2.66,融点1185℃。無色の結晶。水に溶け,水溶液からは1,6,7,12水和物などが得られる。7水和物が普通で,これは瀉利(しゃり)塩またはエプソム塩ともいい,比重1.68の無色の結晶。乾燥した空気中では風解し,水溶液は苦味がある。紙の充填(じゅうてん)剤,媒染剤,下剤として使用。天然には1水和物がキーゼリットとして岩塩鉱床から得られる。また海水中に存在し,苦汁(にがり)の成分。工業的には苦汁の濃縮,酸化マグネシウムや炭酸マグネシウムの硫酸処理によってつくる。
→関連項目瀉利塩マグネシウム肥料

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栄養・生化学辞典 「硫酸マグネシウム」の解説

硫酸マグネシウム

 MgSO4・7H2O (mw246.48).

 微生物培養に栄養成分として利用するほか,苦り(にがり)として豆腐の製造に用いる.また,下剤にもなる.

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