高安流(読み)たかやすりゅう

精選版 日本国語大辞典 「高安流」の意味・読み・例文・類語

たかやす‐りゅう ‥リウ【高安流】

〘名〙
① 能のワキ方一派。河内高安の人、高安長助一説には、長助の子で金剛流ワキ方一〇世金剛又兵衛康季の養子となった高安与八郎)を祖とする。
② 能の囃子(はやし)方の大鼓(おおつづみ)の一派。室町末期、観世小次郎信光の子、観世彌三郎元供に大鼓を学んだと伝えられる、高安与右衛門道善を祖とする。

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デジタル大辞泉 「高安流」の意味・読み・例文・類語

たかやす‐りゅう〔‐リウ〕【高安流】

能の大鼓おおつづみ流派の一。室町末期、高安与右衛門道善を流祖とする。
能のワキ方の流派の一。高安与右衛門の子孫与八郎が、金剛座のワキ方金剛又兵衛のツレ伊右衛門から伝書を譲られて創始したという。

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改訂新版 世界大百科事典 「高安流」の意味・わかりやすい解説

高安流 (たかやすりゅう)

(1)能のワキ方の流派名。流祖については諸説あって定めがたいが,家伝によると,高安長助(河内高安の人,もと横田姓)を流祖とし,2世を長助の子与八郎(安土桃山時代の人。金剛座ワキ方でのち金剛大夫を継いだ10世金剛又兵衛康季の養子となる),3世を与八郎の子太郎左衛門重政とする。太郎左衛門はワキ方春藤(しゆんどう)六右衛門友尊の女婿で寿閑と号し,寿閑を芸祖とする伝承もあり,事実上の流儀の確立者らしい。寿閑の弟三右衛門は大鼓(おおつづみ)方高安流を継いだので,大鼓方とは同祖の間柄である。4世が太郎左衛門重良(はじめ彦太郎,号不休。?-1661),5世太郎左衛門重賢は首長(くびなが)とあだ名され《豊高日記》に逸話が見える。江戸時代は主として金剛座の座付であった。そのため現在も謡は金剛流とほとんど変わらない。1870年(明治3)13世彦太郎(1847-70)が没し高安家は絶えたが,名古屋の門人の大友信安が上京して孤塁を守り,没後は同じく名古屋の西村弘敬ら門流が芸統を維持し,1929年弘敬の子滋郎(1917-78)が高安家を再興して14世を継ぎ,現在,滋郎の弟欽也(1923- )が宗家預りとなって名古屋を中心に活躍している。京都には岡次郎右衛門家が流統を支えている。1983年現在,能楽協会に登録の同流の役者は約20名。

(2)能の大鼓方の流派名。流祖は高安与右衛門道善(1499-1557)。観世弥三郎元供(大鼓の名人でもあった観世信光の子)の門人と伝えられる無双の名手で,大男のうえに美男子で〈高安エビス〉と呼ばれたという(《四座役者目録》)。江戸時代は主として金剛座の座付であった。10世三太郎忠栄(1679-1746)は徳川吉宗から紫調緒(むらさきしらべお)を許された名人。維新前後の家元は14世三太郎英勝(喜叟。1812-73)で,大鼓の石井流家元で名人の石井一斎や葛野(かどの)流の名手津村又喜らと腕を競った。喜叟の没後,長老の清水然知(江戸時代から続く大鼓の家。1827-85)や15世三右衛門英粲(1824-86)が相次いで没したが,然知の子清水正徳や英粲の弟泰三(亀叟,金春泰三。1840-1903)が幼少の鬼三(のちの16世道喜。1879-1946)を助けた。しかし道喜の子は家芸を継がず,1925年清水正徳は少年時代から俊秀の聞こえが高かった門人の安福(やすふく)春雄(1907-83)に芸事を譲り引退,のち安福春雄が宗家預りとなった。1983年現在,能楽協会に登録の同流の役者は約10名。重厚な技法を完成した人間国宝(重要無形文化財保持者各個指定)安福の薫陶を受けた有望な役者がそろっており,流勢は盛ん。気合,気迫を尊ぶ風がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「高安流」の意味・わかりやすい解説

高安流
たかやすりゅう

能楽大鼓方の流派名。天文 (1532~55) 頃,観世弥三郎元供の門弟であった高安道善 (?~1557) を流祖とする。現宗家預りは安福建雄 (1938~ ) 。

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世界大百科事典(旧版)内の高安流の言及

【ワキ方】より

シテ方囃子方狂言方に対しての呼称。現在,宝生流福王流高安(たかやす)流の3流がある。廃絶した流派に進藤流(明治期に廃絶),春藤流(大正期に廃絶)の2流があった。…

※「高安流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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