徳島県北東部にある市。東部は鳴門海峡、北部は播磨灘(はりまなだ)に臨み、大毛(おおげ)島、高島、島田島を含む。1947年(昭和22)撫養(むや)、鳴門、瀬戸の3町と里浦(さとうら)村が合併して市制施行、鳴南(めいなん)市となり、同年中に鳴門市に改称。1955年大津村、1956年北灘(きたなだ)村、1967年大麻(おおあさ)町を編入。JR高徳線、鳴門線、国道11号、28号が通じる。1985年に大鳴門橋が完成、1998年(平成10)には大鳴門橋の延長として神戸淡路鳴門自動車道、2002年には高松自動車道、2015年には徳島自動車道が開通した。
中心地区の撫養は撫養川河口にあり、古くは牟夜戸(むやのと)といい、畿内(きない)と阿波(あわ)(徳島県)を結ぶ交通の要地であった。1585年(天正13)蜂須賀(はちすか)氏入国後、阿波九城の一つ岡崎城が築かれ、1599年(慶長4)には桑島(くわじま)に塩田が開発され、塩業の町として、また塩、アイの積出し港として発展した。現在は医薬品を生産する。南東部の里浦地区は早掘りサツマイモとダイコンの産地。旧吉野川北岸の大津、大麻地区は蓮根(れんこん)を特産し、大津地区の山麓(さんろく)一帯はナシ栽培地。大毛島、高島からなる鳴門地区は、淡路島と結ぶ大鳴門橋架設などで観光開発が進み、鳴門公園に大鳴門橋架橋記念館エディ、大塚国際美術館(陶板名画美術館)などがつくられている。鳴門海峡では鳴門ワカメやサクラダイを特産するが、ワカメ、ハマチ養殖は赤潮の被害を受けている。大谷焼は大甕や睡蓮鉢で知られる陶器で、伝統的工芸品に指定されている。高島には国立鳴門教育大学が1981年設置された。播磨灘沿いの瀬戸地区は国道11号沿いに宅地開発が進み、島田島は鳴門スカイラインの開通で観光開発が進んでいる。大麻比古神社(おおあさひこじんじゃ)は阿波国一宮(いちのみや)で、現在は交通安全や厄除(やくよ)けの神として正月には多くの参拝客でにぎわう。霊山(りょうぜん)寺は四国八十八か所第1番札所、極楽寺は第2番札所である。面積135.66平方キロメートル、人口5万4622(2020)。
[高木秀樹]
『『鳴門市史』全5巻(1971~1999・鳴門市)』
徳島県北東端,鳴門海峡に臨む市。1947年撫養(むや),鳴門,瀬戸の各町と里浦村が合体,市制。55年大津村,56年北灘村,67年大麻町を編入。人口6万1513(2010)。市の中心は撫養で,岡崎城の城下町として発達した。1599年(慶長4)に塩田(撫養塩田)が開発され,また牟夜(むや)ノ戸(撫養港)は阿波の玄関口としてにぎわった。港からは藍玉,塩,サトウ,タバコなどが積み出された。製塩法の転換により1971年末で塩田は姿を消し,その跡地は総合グラウンド,公園,鳴門教育大学などに変貌している。製塩業と関連して明治半ばより医薬品,化学薬品などの製造業が盛んになっている。年間250万人の観潮客を迎える鳴門公園が鳴門海峡に臨む大毛島の北端近くにあり,ここから海峡を渡って淡路島と結ぶ大鳴門橋が85年に完成。2002年鳴門インターチェンジの開通によって,高松自動車道と大鳴門橋が接続した。鳴門スカイライン(1996年無料開放)は瀬戸内海の眺望にすぐれている。西部の大麻山の南麓には大麻比古神社があり,とくに正月は参拝客でにぎわう。付近には第1次大戦時にドイツ人捕虜収容所があったのを記念する市立ドイツ館,四国八十八ヵ所1番札所の霊山(りようぜん)寺,2番の極楽寺もある。なお,この収容所で日本で初めてベートーベンの《第九交響曲》の第4楽章が演奏された。岡崎城址は公園となっており,徳島出身の人類学・考古学者鳥居竜蔵を記念した県立鳥居記念博物館がある。JR鳴戸線が通じる。
執筆者:高木 秀樹
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…ちくわの名は,串を抜いて小口から切るとその断面が竹を輪切りにした形に見えるためで,この名称は1674年(延宝2)刊の《江戸料理集》あたりから見られる。《守貞漫稿》には〈今制ノ竹輪,右ノ図(略)ノ如クス,蓋シ外ヲ竹簀ヲ以テ巻包ミ蒸ス,故ニ小口下ノ如キナリ〉とあるが,この形は現在では〈鳴門(なると)〉と呼ばれるものや〈ちくわ麩(ぶ)〉がうけついでいる。現在のちくわはスケトウダラなどの冷凍すり身を用い,かまぼこの下級品といったイメージが強いが,トビウオを原料とする鳥取のアゴちくわなどは良品である。…
…この実説の〈阿波の大尽〉にヒントを得て,夕霧伊左衛門劇は,阿波のお家騒動や,放蕩して盗賊となり巡礼を殺したという阿波十郎兵衛の伝説などと結びつく。これらを総称して阿波鳴門物というが,広義には,夕霧伊左衛門物として扱うこともできる。阿波鳴門物は,主として構成の複雑さ,筋の錯綜した展開を眼目とする人形浄瑠璃において展開をみせた。…
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