渦潮(読み)ウズシオ

精選版 日本国語大辞典 「渦潮」の意味・読み・例文・類語

うず‐しおうづしほ【渦潮】

  1. 〘 名詞 〙 渦を巻きながら激しく流れる海水。
    1. [初出の実例]「これやこの名に負ふ鳴門の宇頭之保(ウヅシホ)玉藻刈るとふ海人少女ども」(出典万葉集(8C後)一五・三六三八)

渦潮の補助注記

現代の俳句では、特に阿波鳴門の渦潮をさし、「観潮」の傍題として春の季語とすることがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「渦潮」の意味・わかりやすい解説

渦潮
うずしお

海でおこる大きな渦巻に対するやや文学的な用語で、学術用語ではない。渦巻は、海水の流れの方向や速さが著しく異なるところがあると、その境界部に生じ、とくに比較的広い海面の湾や内海が狭い海峡外海と連なっているところで、潮位差が大きいと、大規模な渦巻が生じやすい。

 日本では淡路島と四国の間にある鳴門海峡(なるとかいきょう)の渦潮が有名である。淡路島を迂回(うかい)して明石(あかし)海峡から入る潮汐波(ちょうせきは)の影響で、鳴門海峡の北側の播磨灘(はりまなだ)と南側の紀伊水道との潮汐が逆位相となり、播磨灘が満潮のとき、紀伊水道側が干潮(またはこの逆)となり、その際の水位差は大きいときには2メートル前後となる。このため海峡の中央部に、秒速5メートルを超す激流が生じ、その激流の両側には、直径15メートル、中央部がおよそ1.5メートルもへこんだ渦潮が生じ、数十秒間も渦巻く。外国ではノルウェーのロフォーテン諸島付近のメール・ストローム、イタリア半島とシチリア島の間のメッシーナ海峡のカリフジスなどがよく知られている。

 こうしたところは航海の難所であるが、渦潮は1日に2回は潮流が小さくなって消えるので、そのときをねらって航行する。このために潮位の予測から特別の表を計算し、印刷、公刊したり、海峡に信号所を設けるなどして安全航行に供している。

[安井 正]


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