百科事典マイペディア 「鹿子木荘」の意味・わかりやすい解説
鹿子木荘【かのこぎのしょう】
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肥後(ひご)国飽田(あきた)郡にあった荘園。熊本市北部と、合志(ごうし)市の一部を荘域とする。1086年(応徳3)根本(こんぽん)領主である沙弥(しゃみ)寿妙(じゅみょう)の孫高方(たかかた)が、大宰大弐(だざいのだいに)藤原実政(さねつね)にその所領を寄進したことに始まる。1139年(保延5)立券荘号(りっけんしょうごう)。春宮大夫(とうぐうだいぶ)藤原公実(きんざね)、婿の大納言(だいなごん)藤原経実(つねざね)と伝領したが、その子隆通(たかみち)の代に至り国司(こくし)からたびたび干渉されたため、まず領家年貢(りょうけねんぐ)400石中200石余を割いて高陽院(かやのいん)内親王に寄進し庇護(ひご)を求め、その権利はのちに本家として高陽院の菩提(ぼだい)所勝功徳院(しょうこうとくいん)さらに仁和寺(にんなじ)に受け継がれた。続いて1171年(承安1)平清盛(きよもり)の娘建春門院(けんしゅんもんいん)を介し後白河院(ごしらかわいん)から再立券を受けた。その後地頭預所職(じとうあずかりどころしき)を伝領していた高方の系統も含め数度係争の対象となるが、鎌倉期は、建春門院―後白河院の系統の権利を受け継いだ有力貴族堀川(ほりかわ)源氏が、実質的に荘務権を握っていたらしい。鎌倉期には東・西荘に分かれ、内部に名(みょう)・村などの小単位があり、大友(おおとも)氏の一族詫間(たくま)氏ほか、複数の地頭(じとう)・御家人(ごけにん)が蟠踞(ばんきょ)していた。15世紀中葉以降の荘園としての実態は不明。
[山田 渉]
肥後国飽田郡にあった荘園。現在の熊本市北部にあたる。鎌倉初期には坪井川流域の東荘(120町以上)と井芹川流域の西荘に分かれていた。早くから寄進地系荘園の代表例とされてきた。開発領主は沙弥寿妙で,孫の高方が1086年(応徳3)国衙の圧迫をさけるため現地管理権を保留し,400石の上納を条件に大宰大弐藤原実政に寄進,1139年(保延5)には実政の外孫隆通(願西)が,さらに200石の上納を条件に鳥羽院皇后高陽院(かやいん)に寄進し(同院死後は菩提寺勝功徳院さらに御室が管領),本家・領家職をもつ荘園として立券された。しかしその後も安定せず,願西は1171年(承安1)再度建春門院(平清盛の妻時子の妹)を頼って再度立券した。この2度の立券に起因し,願西の子の通子系(堀川家)と寛杲系(東寺)で長く荘務権が争われることになった(現実には堀川家の荘務)。現地では大友一族の詫磨氏が東荘の地頭,西荘下村は三池氏が地頭であった。上村地頭は三池氏同族の鹿子木氏であったろう。荘名は中世後期にも残るが,荘としての実態は南北朝期に失われたものと思われる。
執筆者:工藤 敬一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「かなこぎのしょう」とも。肥後国飽田郡にあった仁和寺領荘園。荘域は熊本市北部にあたる。鹿子木高方(たかかた)が祖父沙弥寿妙(しゃみじゅみょう)の開発した私領に対する国衙(こくが)の圧迫からのがれるため,1086年(応徳3)所領を大宰大弐藤原実政に寄進。実政の外孫の藤原隆通(願西(がんさい))は国衙の圧迫を排除できなかったので,実政以来相伝してきた得分の半分を,1139年(保延5)高陽院(かやのいん)内親王に寄進。この頃正式に立荘され,高陽院内親王を本家,願西を領家とする皇室領荘園鹿子木荘が成立。その後本家職は美福門院により仁和寺に寄進された。鎌倉時代には地頭の大友庶家詫摩(たくま)氏の勢力が伸長し,室町時代に荘園の実態は失われた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…まず在京預所と在荘預所がある。肥後国鹿子木(かのこぎ)荘は,根本領主寿妙の孫藤原高方が1086年(応徳3)私領を大宰大弐藤原実政に寄進し〈地頭預所職〉は高方の子孫相伝の職となった。一方実政の権限は,彼がまもなく失脚したため春宮大夫公実の系統に継承され〈領家職〉といわれているが,公実の孫の刑部大輔隆通(願西)は,娘の通子に〈預所職〉を与えている。…
※「鹿子木荘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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