皮膚糸状菌(一種のカビ)に感染しておこる皮膚病である。白癬の病原菌は皮膚糸状菌と総称され、分類上は真菌類の不完全菌類に属し、白癬菌、小胞子菌、表皮菌の3属からなっている。白癬は病変の深さによって浅在性白癬と深在性白癬に分けられ、前者は表皮、毛髪、爪(つめ)など皮膚の表面に病変を生ずるもの、後者は毛包(毛嚢(もうのう))などから菌が真皮内に侵入して病変を生ずるものをいう。浅在性白癬には、頭部白癬、斑(はん)状小水疱(すいほう)性白癬、頑癬(がんせん)、汗疱(かんぽう)状白癬、爪(そう)白癬があり、深在性白癬には、ケルスス禿瘡(とくそう)、白癬性(または寄生菌性)毛瘡、白癬性肉芽腫(にくがしゅ)がある。また白癬菌あるいはその毒素の作用によって、アレルギー性に全身の広い範囲にわたって丘疹(きゅうしん)、紅斑などの発疹を生ずるものを白癬疹という。白癬疹は深在性白癬と合併して生ずることが多いが、浅在性白癬でも症状の激しいときに現れることがある。(1)頭部白癬(しらくも) 小児に好発し、頭部に爪甲大の境界明瞭(めいりょう)な円い白く粉をふいたような病変が多発し、病変部の毛髪は色があせて短く折れたり抜けやすくなり、毛がまばらになる。かゆみはほとんどない。(2)斑状小水疱性白癬(ぜにたむし) 躯幹(くかん)や四肢に境界明瞭な円い紅斑を生じ、その縁に小水疱が並び、円く四方に広がるとともに、中心部は治って正常の皮膚となる。ときに同心円状の紅色輪が生ずることがあり、かゆみを伴う。(3)頑癬(いんきんたむし) 股(また)の付け根の部分や臀部(でんぶ)に好発し、境界明瞭な円弧状の紅斑を生じ、その縁には小水疱や丘疹が並び、その内側の皮膚は褐色に色がつき、鱗屑(りんせつ)や痂皮(かひ)(かさぶた)がみられ、かゆみが激しい。(4)汗疱状白癬(水虫) 手のひら、足の裏、足の指の間に生じ、臨床上、小水疱型、角化型、趾間(しかん)型の三型に分けられる。小水疱型は小水疱と落屑(らくせつ)(皮がはがれ落ちる)を生ずるもの、角化型は皮膚が全体に厚く硬くなってわずかに皮のはがれるもの、趾間型は足の指の間の皮膚が白くふやけて皮がはがれたり、ただれたりするもので、いずれもかゆみがある。(5)爪白癬 汗疱状白癬に合併することが多く、爪甲が混濁、変形してもろくなる。(6)ケルスス禿瘡 小児の頭に軟らかく盛り上がった腫(は)れ物を生じ、毛が抜けやすく、圧迫すると軽い痛みがあり、毛孔から膿汁(のうじゅう)が排出される。頸部(けいぶ)のリンパ節がはれることが多い。(7)白癬性毛瘡 成人男子の口ひげやあごひげの部分に盛り上がった紅色の腫れを生じ、毛孔に一致して膿(うみ)をもち、毛は抜けやすくなる。(8)白癬性肉芽腫 きわめてまれで、全身の白癬に合併してエンドウ豆大くらいの紅色の結節を生じ、化膿が進むとぶよぶよする。
白癬の診断上重要なことは、病変部に糸状菌を証明することで、水疱膜、鱗屑、毛、爪などの顕微鏡検査や培養による検査を行う。白癬に似た皮膚病は多いので、その鑑別には菌の検査が必要である。白癬以外の疾患に白癬の薬を使うとかえって症状を悪化させる。また白癬に副腎(ふくじん)皮質ホルモン外用剤を使うと、典型的な症状が隠されて広がることが多い。白癬の治療にはグリセオフルビンの内服と抗真菌剤の外用が行われる。グリセオフルビンの内服は爪白癬、角化型汗疱状白癬および深在性白癬に用いられるが、その他の浅在性白癬には外用抗真菌剤のみの治療で十分である。外用抗真菌剤には昔から多くのものが使用されているが、それぞれ一長一短があるので、薬剤の選択は皮膚科専門医の指示によることが望ましい。予防としては、皮膚の衛生、とくに清潔と乾燥に留意し、肌着や靴下は乾燥した清潔なものを使用し、靴下、スリッパ、サンダル、足ふきなどは患者と共用しないよう注意する。
[野波英一郎]
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…後者にはスポロトリコーシス,クロモミコーシス,皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症などがある。皮膚糸状菌症はおもに白癬(はくせん)菌の感染により発症し,頭部白癬(しらくも),体部白癬(たむし),股部白癬(いんきんたむし),足白癬(水虫),手白癬,爪白癬や黄癬などの疾患がある。日本では紅色白癬菌Trichophyton rubrumと毛瘡白癬菌T.mentagrophytesが皮膚糸状菌症の二大原因菌である。…
※「白癬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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