白癬(読み)ハクセン

デジタル大辞泉 「白癬」の意味・読み・例文・類語

はく‐せん【白×癬】

白癬菌などの一群糸状菌感染によって起こる皮膚病頭部白癬(しらくも)・体部白癬たむし)・頑癬がんせんいんきんたむし)・足白癬みずむし)・手白癬・爪白癬などがある。

しら‐くも【白×癬/白禿瘡】

小児の頭部に、大小円形の白色落屑らくせつ面ができる皮膚病。白癬はくせん菌が感染して起こる。かゆみがあり、毛髪が脱落する。頭部白癬。しらくぼ。

しら‐くぼ【白×癬】

しらくも(白癬)」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「白癬」の意味・読み・例文・類語

はく‐せん【白癬】

  1. 〘 名詞 〙 糸状菌によって起こる皮膚病。みずむし、しらくも、いんきんたむしなど。
    1. [初出の実例]「湿疹性の白癬は、全図を拡げて猛然と活動を開始した」(出典:ナポレオンと田虫(1926)〈横光利一〉二)
    2. [その他の文献]〔山海経‐中山経〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「白癬」の意味・わかりやすい解説

白癬
はくせん

皮膚糸状菌(一種のカビ)に感染しておこる皮膚病である。白癬の病原菌は皮膚糸状菌と総称され、分類上は真菌類の不完全菌類に属し、白癬菌、小胞子菌、表皮菌の3属からなっている。白癬は病変の深さによって浅在性白癬と深在性白癬に分けられ、前者は表皮、毛髪、爪(つめ)など皮膚の表面に病変を生ずるもの、後者は毛包(毛嚢(もうのう))などから菌が真皮内に侵入して病変を生ずるものをいう。浅在性白癬には、頭部白癬、斑(はん)状小水疱(すいほう)性白癬、頑癬(がんせん)、汗疱(かんぽう)状白癬、爪(そう)白癬があり、深在性白癬には、ケルスス禿瘡(とくそう)、白癬性(または寄生菌性)毛瘡、白癬性肉芽腫(にくがしゅ)がある。また白癬菌あるいはその毒素の作用によって、アレルギー性に全身の広い範囲にわたって丘疹(きゅうしん)、紅斑などの発疹を生ずるものを白癬疹という。白癬疹は深在性白癬と合併して生ずることが多いが、浅在性白癬でも症状の激しいときに現れることがある。(1)頭部白癬(しらくも) 小児に好発し、頭部に爪甲大の境界明瞭(めいりょう)な円い白く粉をふいたような病変が多発し、病変部の毛髪は色があせて短く折れたり抜けやすくなり、毛がまばらになる。かゆみはほとんどない。(2)斑状小水疱性白癬(ぜにたむし) 躯幹(くかん)や四肢に境界明瞭な円い紅斑を生じ、その縁に小水疱が並び、円く四方に広がるとともに、中心部は治って正常の皮膚となる。ときに同心円状の紅色輪が生ずることがあり、かゆみを伴う。(3)頑癬(いんきんたむし) 股(また)の付け根の部分や臀部(でんぶ)に好発し、境界明瞭な円弧状の紅斑を生じ、その縁には小水疱や丘疹が並び、その内側の皮膚は褐色に色がつき、鱗屑(りんせつ)や痂皮(かひ)(かさぶた)がみられ、かゆみが激しい。(4)汗疱状白癬水虫) 手のひら、足の裏、足の指の間に生じ、臨床上、小水疱型、角化型、趾間(しかん)型の三型に分けられる。小水疱型は小水疱と落屑(らくせつ)(皮がはがれ落ちる)を生ずるもの、角化型は皮膚が全体に厚く硬くなってわずかに皮のはがれるもの、趾間型は足の指の間の皮膚が白くふやけて皮がはがれたり、ただれたりするもので、いずれもかゆみがある。(5)爪白癬 汗疱状白癬に合併することが多く、爪甲が混濁、変形してもろくなる。(6)ケルスス禿瘡 小児の頭に軟らかく盛り上がった腫(は)れ物を生じ、毛が抜けやすく、圧迫すると軽い痛みがあり、毛孔から膿汁(のうじゅう)が排出される。頸部(けいぶ)のリンパ節がはれることが多い。(7)白癬性毛瘡 成人男子の口ひげやあごひげの部分に盛り上がった紅色の腫れを生じ、毛孔に一致して膿(うみ)をもち、毛は抜けやすくなる。(8)白癬性肉芽腫 きわめてまれで、全身の白癬に合併してエンドウ豆大くらいの紅色の結節を生じ、化膿が進むとぶよぶよする。

 白癬の診断上重要なことは、病変部に糸状菌を証明することで、水疱膜、鱗屑、毛、爪などの顕微鏡検査や培養による検査を行う。白癬に似た皮膚病は多いので、その鑑別には菌の検査が必要である。白癬以外の疾患に白癬の薬を使うとかえって症状を悪化させる。また白癬に副腎(ふくじん)皮質ホルモン外用剤を使うと、典型的な症状が隠されて広がることが多い。白癬の治療にはグリセオフルビンの内服と抗真菌剤の外用が行われる。グリセオフルビンの内服は爪白癬、角化型汗疱状白癬および深在性白癬に用いられるが、その他の浅在性白癬には外用抗真菌剤のみの治療で十分である。外用抗真菌剤には昔から多くのものが使用されているが、それぞれ一長一短があるので、薬剤の選択は皮膚科専門医の指示によることが望ましい。予防としては、皮膚の衛生、とくに清潔と乾燥に留意し、肌着や靴下は乾燥した清潔なものを使用し、靴下、スリッパ、サンダル、足ふきなどは患者と共用しないよう注意する。

[野波英一郎]

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内科学 第10版 「白癬」の解説

白癬(真菌症)

(1)白癬(Tinea)
定義・概念
 皮膚糸状菌の白癬菌が表皮角層,毛や爪の角質内に寄生して生ずる.免疫抑制状態時などに真皮に寄生して白癬性肉芽腫を形成することがごくまれにある.足白癬が多い.
病原菌
 白癬菌でありTrichophyton rubrumとT. mentagrophytesが白癬の90%以上を占める.ほかにMicrosporum canis(ペット感染に多い),M. gypseum,T. violaceum, T. tonsurans(近年格闘技競技者に感染例が多い),Epidermophyton floccosumなどがある.
病型・臨床症状(図4-14-4)
 足白癬には,小水疱鱗屑型(汗疱状白癬),趾間型(趾間白癬),角質増殖型がある.体部では辺縁が堤防状に隆起する輪状,連圏状を呈する(体部白癬).股部白癬(頑癬)は中心治癒傾向のある湿疹様局面で,辺縁は連圏状を示す.学齢期男児の頭部が侵されると,境界明瞭な円形鱗屑局面を生じ,毛は折れやすくまた抜けやすい.さらに白癬菌が毛囊深く侵入すると化膿性炎症を伴って脱毛局面を形成する(ケルスス禿瘡,kerion celsi).須毛部(口囲や顎の髭)に侵入すると扁平化膿性局面,毛包性膿瘍を形成し,毛は抜けやすく,脱落する(白癬菌性毛瘡).爪では白,黄褐色混濁・肥厚・脆弱化をきたす(爪白癬).なお,副腎皮質ステロイド外用薬の誤用などによって顔面・体部の白癬の炎症性変化が抑制され,環状病変や中心治癒傾向がはっきりしない非定型的白癬がしばしばみられる(異型白癬).
診断・治療(図4-14-5)
 病変部の角質,毛などを水酸化カリウムで溶解し直接鏡検して菌要素を確認すれば,診断できる.菌種の同定をするために培養することもある.
 治療は抗真菌薬を外用する場合が多い.角質増殖の強い例,爪白癬,毛囊への侵入例ではテルビナフィン・イトラコナゾールの内服.皮膚の乾燥,清潔保持を心がける.[大塚藤男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白癬」の意味・わかりやすい解説

白癬
はくせん
tinea; ringworm

真菌の一種である白癬菌感染による皮膚疾患。感染部位により浅在性白癬と深在性白癬に大別される。浅在性白癬は,有毛部を侵した場合,境界鮮明でしばしば円形の病変が生じて遠心性に拡大し,中心部は治癒傾向がある。無毛部を侵した場合の病態は多様で,頭部浅在性白癬 (しらくも) ,股部白癬 (いんきんたむし) ,足白癬 (水虫) ,小水疱性斑状白癬 (ぜにたむし) ,爪白癬などがこれに属す。深在性白癬は病変が真皮にまで及んで腫瘤を形成するものであるが,まれである。

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世界大百科事典(旧版)内の白癬の言及

【皮膚真菌症】より

…後者にはスポロトリコーシス,クロモミコーシス,皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症などがある。皮膚糸状菌症はおもに白癬(はくせん)菌の感染により発症し,頭部白癬(しらくも),体部白癬(たむし),股部白癬(いんきんたむし),足白癬(水虫),手白癬,爪白癬や黄癬などの疾患がある。日本では紅色白癬菌Trichophyton rubrumと毛瘡白癬菌T.mentagrophytesが皮膚糸状菌症の二大原因菌である。…

※「白癬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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