広義には,他人の行為による死をいい,狭義には,他人の故意による行為によってひき起こされる死をいう。すなわち,広義の他殺は,殺人やそそのかして自殺させたり,自殺するのを手伝って死亡させたり,依頼されるか承諾を得てその人を殺したり,他人を傷害して死亡させたり,過失によって他人を死亡させたり,業務上の必要な注意を怠って他人を死亡させたり,保護をしなければならない人を遺棄して死亡させたりすることである。狭義の他殺は,これらのうち過失によって他人を死亡させたものが除外されている。一般に,死亡統計などでは狭義に使用されている。1980年の警察庁の調査によると,他殺は1544件で,自殺の7%であり,その死因は鋭器による損傷死が373件(24%),鈍器による損傷死が316件(20%),絞頸や扼頸(やくけい)による窒息死が313件(20%),劇毒物やガスなどによる毒殺は58件(4%)となっている。また,この他殺には新産児殺(嬰児殺し)192件(12%)が含まれている。なお,英語のmurder(謀殺)は,あらかじめ思慮をめぐらして殺人の意思を遂行して人を殺すこと,manslaughter(故殺)は一時的な感情激発によって人を殺すことをさし,一般に他殺はhomicideという。
執筆者:小嶋 亨
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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