翻訳|perennial
草本植物で2年以上生存し、常緑または越冬の際地上部の一部は枯死するが、地際に近い茎葉と根部は生き残り、翌春ふたたび萌芽(ほうが)して成長開花するものを多年草とよぶ。本来、多年草は宿根草ともいい同じ扱いをしている。花卉(かき)園芸面では、その生育永続期間よりみて、多年草(宿根草)とは、広義には球根類なども含むが、栽培上は区別している。また夏から秋にかけ種子を播(ま)き、冬から春にかけて開花する二年草は含まない。
[堀 保男]
多年草(宿根草)の栽培にあたっては、原産地を知ったうえで気候条件、土壌条件になじむように管理することがたいせつである。
[堀 保男]
日本でも冬季積雪地域と無積雪地域とでは差がある。とくに太平洋側のように冬季の低温乾燥地域では根張りの悪いものは霜で浮き上がりやすい。また梅雨期の過湿やその後の地温の異常な上昇で乾燥し、生育が阻害されやすいものもある。
[堀 保男]
一度植え付けるだけでよいものもあるが、種類によっては忌地(いやち)性の強いものがあり、鉢物ではつねに新しい用土で植え替えてやらないと育ちの悪いものもある。一方、株が殖えて大株になりすぎて生育が衰えたり、根腐れをおこしやすいものもあるので、特性にあった植え替え管理が必要である。
[堀 保男]
多年生草本ともいい,一年草,二年草に対する語。2年以上生存を続ける草本植物のことを指し,地上部が冬になると枯死してしまうものでも,地下部などが越冬すれば多年生の性質をもつ。多年生であるが,地上部が夏季だけ繁茂するものを夏緑生といって常緑の草本と区別することがある。熱帯などで,乾季と雨季がはっきりしているところでは,雨季にだけ地上部が展開する生活形をもつものもある。個体(胞子体の世代)としては多年生であっても,同じ株から出た部分が順次枯死して新しいものと交代することも多い。地上部が枯死して,次の春に根茎や冬芽から新しい部分が伸長してくる場合も,個体にとっての部分の更新に相当する。木本植物の常緑樹の葉でも,いずれは落ちて新しいものと置き代わっており,葉的な部分の生存期間はいずれにせよ限定されている。そういう意味で草本では地上部分が葉的な部分であるともいえる。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…草本というのは,形態学的な定義に基づくものではなく,生育している形状を指したものである。 草本には,種子が発芽してから植物体が枯死するまでが1年以内のもの(一年草,暦年の2年にまたがるものを越年草といって区別することもある)と,たとえ地上部が枯死しても根茎などでなん年も生き続けるもの(多年草)がある。多年草のうちには常緑性の草本も含まれる。…
…草本植物のうちで,長年にわたり生存する性質のあるものを一般には多年草と呼んでいるが,花卉園芸界ではそれを宿根草といいならわしている。宿根草はキク,キキョウなどのように,総じて冬には地上部が枯れても地下部は生き残っていて,春には根株が発育してくる。…
※「多年草」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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