コケ植物の1綱で,ミズゴケ,スギゴケ,ヒョウタンゴケなどを含む。配偶体は茎と葉が分化し,葉状のものはない。仮根は1列に並んだ多数の細胞からなり分枝する。葉は一般に茎にらせん状につき放射状に広がるが,3列または2列につくものもある。葉は中央脈をもつものが多く,一般に中央脈の部分を除いて1層の細胞からなる。胞子体はふつう比較的かたい組織からなり長期間にわたって胞子を放出し続ける。蒴(さく)(胞子囊)は蘚帽calyptraをかぶる。蘚帽は造卵器の腹部が受精後に発達し,胞子体の伸長とともに切断して持ち上げられたもので,配偶体の組織の一部である。蒴は一般に構造が複雑で,中央に軸柱という支持組織があり,上端にはふた(蘚蓋)が分化し,口縁部には蒴歯(縁歯)という歯状の構造が発達している。蒴歯は乾湿運動によって胞子の放出を調節する。蒴の中には胞子のみあり,弾糸はない。世界に約1万4000種,日本に千数百種ある。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
苔(たい)類、ツノゴケ類と並ぶコケ植物の一群。植物体はすべて茎、葉の分化がみられ、茎は直立または横にはい、仮根は多細胞からなっていて、分枝する。茎には中心束が分化するものが多い。葉には中肋(ちゅうろく)をもつものが多く、中肋部以外では、ほとんどが一層の細胞からなる。雌雄異株または同株。造卵器は主茎の頂端につく場合と、枝の先につく場合がある。胞子体の若い蒴(さく)には帽(ぼう)(蘚帽)があり、口部には蒴歯が分化する。スギゴケ科、ミズゴケ科、クロゴケ科など約80科1万5000種が知られている。海水中を除く世界各地のあらゆる環境下で生育がみられるが、熱帯圏にもっとも多くの種類がみられ、南極大陸や北極圏にも数十種が分布している。
[井上 浩]
…最古の化石は上部デボン紀にさかのぼるが,その後の化石はわずかで古生物学的に進化の跡づけを行うことは困難である。蘚類,苔類,ツノゴケ類に三大別され,世界に約2万種,日本に約2000種ある(図1)。
[生活史]
明瞭な世代交代を行う。…
※「蘚類」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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