一定の目的のために集合した人の集団(社団)であって、法人格(民法34条)を認められたもの。財団法人に対置される。社団法人には、一般社団法人、公益社団法人(公益認定されたもの)、営利社団法人(会社)の3種類があり、第一のものは一般法人法により、第二のものは公益法人認定法により、第三のものは会社法により、それぞれ規律される。
[淡路剛久]
2006年(平成18年)の民法改正(2008年12月1日施行)以前、社団法人はおもに公益を目的とするものとされ、民法の規定ももっぱら公益社団法人についてのものであった。改正前の民法では、公益法人を、祭祀、宗教、慈善、学術、技芸その他公益に関する社団または財団であって、営利を目的としないもので、主務官庁により法人となる許可を得たものと規定していた。しかし、このような公益法人制度は、法人の設立が容易でない反面、税制上の優遇策と結びついているために、公益性が主務官庁の裁量により拡大されて適用されることがあり、さらに、いったん設立されると、設立許可の取消し処分がなされることはめったにないために、休眠法人や公益事業を行っていない法人の存在、親族や特定の利害関係人によって運営される法人の存在、天下りの温床となっているなどの問題点が指摘されるようになった。そこで、2006年の民法改正に伴い、法人の設立と税制上の優遇措置とを切り離して、一般法人法を制定して法人の設立を容易にする一方で、公益法人認定法の制定により公益認定を厳格化するなどの改革が行われた。
[淡路剛久]
一般法人法によれば、一般社団法人を設立するには、その社員となろうとする者が共同して定款を作成し、その全員がこれに署名または記名・押印し(同法10条1項。電磁的記録による場合には、同法10条2項により、法務省令で定められる代わりの措置をとり)、その上で、公証人の認証を受け(同法13条)、主たる事務所の所在地で登記をすることによって成立する。定款には、目的、名称、主たる事務所の所在地、設立時社員の氏名等、社員の資格の得喪に関する規定、公告方法、事業年度が必要的記載事項として記載され(同法11条1項)、そのほか、定款の定めがなければ効力を生じない任意的記載事項を記載することができるものとされている(同法12条)。一般社団法人は、非営利法人であるから、利益の分配をすることはその性質に反する。したがって、社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、無効である(同法11条2項)。一般社団法人は社員によって構成されるが、社員は、定款で定めるところによって、法人に対して経費を支払う義務を負う(同法27条)。一般社団法人の機関としては、社員総会(同法35条以下)および理事(同法60条1項、76条以下)があり(必置の機関)、定款の定めによって、理事会、監事または会計監査人を置くことができるものとされ(同法60条2項)、一定の一般社団法人については、監事または会計監査人の設置は必置とされている(同法61条、62条)。
法人の業務を実際に執行するのは理事であり、一般法人法には、理事の業務執行権限、代表権、代表者の行為についての法人の損害賠償責任、などに関する定めが置かれている。
理事は、定款に別段の定めがある場合を除いて、一般社団法人の業務を執行する(一般法人法76条1項)が、理事が複数ある場合には理事の過半数をもって決せられる(同法76条2項)。対外的には、理事は一般社団法人を代表する(同法77条1項)。
代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に損害を与えた場合に関しては、2006年改正前の民法では第44条1項として規定が置かれていたが、一般法人法の制定に伴いそちらに規定が移され、民法の規定は削除された。規定の内容は同じであり、一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う、とするものである(一般法人法78条)。
[淡路剛久]
公益法人認定法によれば、一般法人は、行政庁の認定を受けて公益法人となることができる(同法4条)。公益法人となれば、法人税について優遇措置がある。
公益認定の基準は、公益目的事業を行うことを主たる目的とするとか、公益目的事業の事業費および管理費用の合計額に対して占める比率が50%以上であるとか、公益事業を行うのに必要な経理的基礎および技術的能力を有するものであることなど、詳細に定められている(同法5条)。
なお、改正前の民法の法人法によって設立された公益法人については、特例措置が定められており、一般法人法の施行(2008年12月1日)後5年間は、一般法人として存続するものとされているが、その間に、公益認定を受けて公益法人となるか、または一般法人として認可を受けるかしなければ、解散したものとみなされる。
[淡路剛久]
一定の目的をもった人の集合体を組織・運営するために設立される法人。社団法人は,公益を目的として設立することも,営利を目的として設立することもできる(民法34条,35条,商法52条)。営利を目的とする社団法人を会社といい,通常,社団法人という場合には,公益社団法人を指している。
公益社団法人を設立するためには,社団法人を設立しようとする2人以上の者が,設立の意思をもって法人の根本規則である定款を定めて書面にしなければならない。この定款の作成が実質的な設立行為となる。定款には,目的,名称,事務所,資産に関する規定,理事(会社では一般に取締役という)の任免に関する規定,社員たる資格の得喪に関する規定を,必ず記載しなければならない(民法37条)。この必要的記載事項の一つを欠いても,定款としては無効である。このほか,社団法人の組織・運営に関するものであれば,どのようなことを定款に記載してもよいが,いったん定款に記載すると,その変更は定款変更手続によらなければならないことになる(38条)。次に,主務官庁(当該法人の目的とする事業を主管する行政官庁)の設立許可を得なければならない(34条)。そして,設立登記を行うことによって成立し(45条2項では設立登記を対抗要件としているが,宗教法人法15条,私立学校法33条等と同様,成立要件と解すべきである),法律上の権利義務の主体となる。営利社団法人,つまり会社の場合には,主務官庁による設立許可を必要とせず,法律で定める要件をそなえた組織体を作り,設立登記をすれば当然に法人となることができる(商法52条,54条,57条)。要件を満たしているかどうかの審査は,設立登記の際に行われる(64条,149条,188条,有限会社法13条,商業登記法24条)。公益法人の許可主義に対し,これを準則主義という。
社員総会は,社団法人の最高の意思決定機関であり,そのもとに理事(取締役)が内部的事務を処理し,外部に対し法人を代表する。監事は,民法上,必要的機関とはされていないが,一般に法人の業務を監査するための機関として置かれている。
→会社 →財団法人
執筆者:鍛冶 良堅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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