一般的には,株券,社債券,国債券,手形,小切手,船荷証券などの有価証券をいう。証券取引や証券市場でいう証券は,証券取引法によって,有価証券のうち株券,社債券,国債券など一定のものに限定されている。証券は,広義では有価証券のほかに,借用証書,契約書などの証拠証券(証書,証文),さらに携帯品預り証,下足札,キャッシュカードなどの免責証券も含まれる。このほか,金券も広義の証券に含めることがある。なお,プラスチック製のカードに電磁的方法で権利内容が記録されたものは法律上,証票とよばれることもあるが,有価証券,免責証券など証券の一種であることが多い。これらの証券はいずれも,財産上の権利義務関係の発生,内容,変動を書面などに記録したものである。通常,権利義務関係は,無形でありその所在や内容がわかりにくい。そこで多数の権利関係の処理を迅速かつ安全に行う必要が高い場合に,権利関係の内容を書面などに記載し有形化(書面化,証券化)する方法が発展したのである。
これらの証券は,その目的によって,権利との結合の程度,たとえば証券上の権利の移転および証券を紛失した場合の権利行使の方法などに大きな違いがある。これによって,証券は,有価証券,証拠証券,免責証券,金券の種類に分けることができる。近年,証券はきわめて多種多様化しており,クレジットカードやゴルフ場の預託証券のように,その法的性質が必ずしも明確とはいえないものもある。
証券には,投資者や購入者の保護のための特別な法的な規制の行われているものがある。証券市場で対象とされる有価証券については,証券取引法,抵当証券については〈抵当証券業の規則等に関する法律〉(1987),プリペードカードや商品券については〈前払式証票の規制等に関する法律〉(1989)が制定されている。
ところで,コンピューターによる事務処理能力の向上や情報ネットワーク社会の発達は,証券の役割に大きな変化をもたらしている。すなわち証券を発行せずに大量の権利の移転や行使を簡易,迅速,安全にできるシステムが飛躍的に発展してきたことである。証券の振替決済,銀行の口座振替,一括支払いシステムなどである。証券が果たしてきた役割のかなりの部分は,これらによって取って代わられつつある。
執筆者:清水 巌
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…たとえば政府紙幣,中央銀行の発行する銀行券(たとえば日本銀行の発行する壱万円札など),郵便切手,収入印紙のように,法律によってそれ自体に一定の価値が認められている証券をいう。無記名式で大量に発行され,通貨またはその代用物としての機能を持っている。…
…金銭の貸借,信託あるいは出資の事実を証し,その事実に基づく貨幣的請求権を化体した紙券であって,流通性を付与されたものを証券といい,そのような証券が当事者間の合意に基づいて資金と交換される場を証券市場という。またその交換行為を証券取引という。…
※「証券」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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