身分法との対比で用いられる語であって,広い意味では,財産上の生活関係(財貨の生産,取引等)を規律する法(民法の物権法・債権法,商法)をいい,家族の生活関係(夫婦,親子等)を規律する身分法(親族,相続)と区別される。狭い意味では,民法全5編のうち,前3編(総則,物権,債権)に関する法をいい,これに対して後2編(親族,相続)を身分法という。狭い意味で用いられるのがふつうである。
財産法を身分法から区別する意味は,身分法の特殊性を主張する学者により,かつて強調された。それによれば,財産上の生活関係は,打算的,形成的,意思的であるのに対し,家族の生活関係は,超打算的,自主的,感情的であって(たとえば,利益を得るために取引に入る場合と親子関係とを対比せよ),両者はその性質を異にするというのである。ここから,財産法上の法律行為に対する身分行為という概念が定立されて,その特殊性が強調され,たとえば,総則の法律行為に関する規定(能力,無効・取消し,代理等)は身分行為に適用されないという解釈論が導き出される。このような考え方に立てば,財産法(したがって身分法)の概念を立てる法技術的な意味は明らかであり,これを足がかりとしていくつかの解釈論(たとえば内縁の保護)を導き出すことが容易になる。たしかに,戦後の民法大改正(1947)以前の親族・相続編には日本独特の制度(家制度,家督相続等)が存在したために,財産法と身分法との差異は強調されやすかったが,改正により家制度が廃止されるようになると,身分法の特殊性は目だつものでなくなり,とくに相続法は,財産法の論理で解釈できることが指摘され,財産法と身分法とを区別する法技術的意味に疑問が提起されるようになった。そしてたとえば,総則の規定が親族間の法律関係に適用されないのは,身分法の特殊性の反映ではなく,個々の規定の解釈の結果としてそうなる,と説かれるのである。したがって,現在では,財産法とは,法技術的意味なしに,民法前3編をただ一括して呼ぶためだけの意味で用いられる語だ,と考えてよいと思われる。
→家族法
執筆者:平井 宜雄
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人の市民としての生活を規律する法律関係、すなわち私法関係のうち、家族的生活関係に関するものを除いた、経済的生活関係に関する法。身分法に対することば。民法のうちの物権法・債権法と商法とが財産法の主要なもの。合理性が支配する点が身分法と大きく異なる。
[高橋康之]
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