初めて戦場に臨むこと。武門に生をうけた者の正念場でもあり,それだけに初陣での高名は武勇の誉れとされた。《保元物語》に滋目結(しげめゆい)の直垂(ひたたれ)に伏目縄の鎧に身をかため〈太刀ヲ抜テ真向ニアテ,武蔵国住人金子十郎家忠十九歳,軍ハ今日ゾ始ナル,御曹司ノ御内ニ我ト思ハン兵ハ,出アヘヤトゾ名乗タル〉と見える金子家忠は初陣で源為朝麾下(きか)の豪勇高間兄弟を討ち取り,武名をはせたという。また《平治物語》には13歳で父義朝に従った頼朝の初陣の模様が語られているが,頼朝着用の鎧,太刀はいずれも父祖相伝のものであったという。多くの軍記物に語られているように初陣は若武者の試練の場であり,〈初陣ニハ闇夜ノ如クニテ,一歩ノ先モ見エヌ也〉(《明良洪範続編》)ともいわれた。一般に初陣の年齢は時々の状況にもよるが,《甲陽軍鑑》には〈大方武田の家の侍衆は,大小ともに十六歳を初陣と定められる〉と見えている。
執筆者:関 幸彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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