8月23,24日に行われる地蔵をまつる行事のこと。京都を中心とする近畿地方で子どもによって行われている。地蔵が子どもと関係が深い仏だからという。福井県小浜ではどの堂にも賽銭箱が用意されていて,おとなが近づいて行くと〈参ってんのう,参ってんのう〉と参拝をせがまれるという。ことに日本海側では地蔵を絵具などできれいに化粧するところが多い。
毎月の24日が地蔵の縁日であるということは,平安時代中期以来みられる。室町時代半ばころ,旧暦7月24日に京都への入口にある六地蔵めぐりが廻地蔵といわれて盛んになってきた。江戸時代末期の随筆《雲錦随筆》に〈御菩薩が池は幡枝(はたえだ)村の南にあり,平相国清盛の代,西光法師が建営なりとぞ,山城六地蔵の其一也,7月23,24日地蔵巡りの老若群参して賑はし,六斎念仏ことごとく来りて,手向を勤む〉と見えている。ここに見える幡枝の廻地蔵の風習から旧暦7月24日が地蔵盆になったのである。曲亭馬琴は《羇旅漫録》享和2年(1802)7月22日の項に地蔵盆の盛んなさまを書きのこしている。〈京の町々地蔵祭あり,一町一組年寄の家幕を張り,地蔵尊を安置し,いろいろ備へ物をかざり,前には灯明挑灯を出し,家の前には手すりをつけ,仏壇の前に通夜して酒もりあそべり,伏見辺,大坂にいたりて,またこれに同じ〉。
また,地蔵盆は愛宕(あたご)の祭りでもあった。愛宕の本地が地蔵であるためである。兵庫県出石郡では旧暦7月24日に村の辻辻のお地蔵さんにだんご,花をもって参る。一方,この日を愛宕地蔵の日といい,念仏があげられる。家々では竹の先に麦わらをつけ,それに火をつけてお供えしたり,肥松を割って燃やしてまつったりして,愛宕火があげられるのである。
執筆者:田中 久夫
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