(五味文彦)
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平安後期の武将。清盛(きよもり)の長子。母は高階基章(たかしなもとあき)の女(むすめ)。1150年(久安6)蔵人(くろうど)となる。保元(ほうげん)の乱(1156)では父清盛に従い後白河(ごしらかわ)天皇側として勝利を得た。また平治(へいじ)の乱(1159)には六波羅(ろくはら)を守って活躍した。65年(永万1)参議となる。父が太政大臣(だいじょうだいじん)となった67年(仁安2)権大納言(ごんのだいなごん)に昇り、77年(治承1)左大将、内大臣となった。小松第(こまつだい)(京都市東山(ひがしやま)区)にいたので世に「小松内府(ないふ)」といわれる。同年、後白河法皇の近臣による鹿(しし)ヶ谷(たに)における清盛追討の陰謀が発覚、腹をたてた清盛は法皇を幽閉しようとしたが、重盛がこれを諫止(かんし)した。この事件の主謀者藤原成親(なりちか)の女は、重盛の子惟盛(これもり)の嫁であった。病がちの重盛は、79年(治承3)職を辞し出家、静蓮(じょうれん)(一説に証空)と号した。小松第に法皇の見舞いを受けた1か月余りのちの同年7月29日に没した。『平家物語』は、重盛を道理をわきまえた人物として描いている。父清盛をいさめて、後白河院との表面的対立を抑えてきたが、重盛没後、清盛は法皇を鳥羽(とば)殿に幽閉して院政を停止させた。ここに清盛の軍事的独裁政治が始まり、やがて大衆が離反してゆくのである。
[田辺久子]
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平安末期の武将。通称小松内府,灯籠大臣。清盛の長男。保元・平治の乱で功をあげ,平氏の隆盛とともに累進し,1167年(仁安2)権大納言,以後,左大将,大納言などを歴任して77年(治承1)従二位内大臣となる。《平家物語》では,鹿ヶ谷事件のさい清盛が後白河法皇を幽閉しようとするのを諫止するなど,性温厚で沈着な人物として描かれる。病弱のため父に先立って死去した。
執筆者:田中 文英
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1138~79.7.29
平安末期の武将。清盛の嫡男。母は高階基章の女。宗盛・知盛らは異母弟。小松内府(小松内大臣)・灯籠大臣と称する。1151年(仁平元)従五位下。保元・平治の乱に活躍して伊予守に任じられた。以後順調に昇進し,67年(仁安2)権大納言。同年,賊徒追討の宣旨をうけて以来,平氏軍政の中心的役割をはたした。77年(治承元)正二位内大臣。「平家物語」には,仏教に深く帰依し,文武にすぐれた温和な人物として描かれる。
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…《太平記》に登場する楠木正成はその代表として名高い。しかし,親子に発して家を支える孝が,忠と対立することも避けがたく,《平家物語》にあらわれる平重盛が,君に忠ならんとすれば孝ならず,親に孝ならんとすれば忠ならずと嘆いて父清盛を諫めた話は,広く知られている。近世の社会では,忠は将軍と大名,大名と家臣にはじまり,すべての主従関係の根幹をなすものとされ,さまざまな道学的な説明のほかに,忠義の美談や,忠言が受け容れられずに苦悩する人間の姿を描いた読物や劇がつぎつぎにあらわれた。…
…中世では本鳥切とも書いた。《古事談》に,在原業平が二条后を盗み去ろうとして奪い返されたうえに,髻を切られたことが見え,《源平盛衰記》に,平重盛が息子が辱められた意趣返しに,兵をもって摂政藤原基房の車を襲い,基房随従の数人の髻を切ったことが見えるなど,中世の犯罪史にもしばしば現れる特異な犯罪である。烏帽子(えぼし)をもって社会的身分を表す最も有力な外的表徴とした時代にあって,結髪および烏帽子の装着に必須な髻を切断することは,被害者の社会生活を麻痺させるばかりでなく,その人の体面を失わせる凌辱的行為とみなされ,その意味で,女性の髪を切り落とす暴行に比すべき犯罪であったが,これに加えて次の2点が,この犯罪をより特異かつ重大なものとしたと考えられる。…
※「平重盛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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