藤原成親(読み)フジワラノナリチカ

デジタル大辞泉 「藤原成親」の意味・読み・例文・類語

ふじわら‐の‐なりちか〔ふぢはら‐〕【藤原成親】

[1138~1177]平安後期の公卿後白河上皇寵臣平治の乱に敗れたが、平重盛との姻戚関係に救われる。のち、僧西光俊寛らと鹿ヶ谷ししがたにで平家討伐を計画したが、事前に漏れ、備前配流途中で殺された。→鹿ヶ谷の議

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精選版 日本国語大辞典 「藤原成親」の意味・読み・例文・類語

ふじわら‐の‐なりちか【藤原成親】

  1. 平安末期の公卿。家成の三男。平治の乱に信頼に従って敗れたが、後白河上皇庇護で許された。後白河法皇の勅旨により西光(藤原師光)、俊寛らと京都東山鹿ケ谷平氏追討の密議を行ない、事前に漏れて備前に配流の途、殺された。保延四~治承元年(一一三八‐七七

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朝日日本歴史人物事典 「藤原成親」の解説

藤原成親

没年:治承1.7.9(1177.8.4)
生年:保延4(1138)
平安後期の公卿。藤原家成と藤原経忠の娘の子。父の中納言家成が富裕な受領であり,鳥羽院の寵臣であった関係から,成親もわずか4歳で叙爵。家成の知行国であった越後守,讃岐守を歴任。『愚管抄』に「フヤウノ若殿上人ニテ有ケル」と評される美貌を持ち,後白河院の寵愛を受けて昇進を重ね,頭中将を経て仁安1(1166)年公卿に列せられ,安元1(1175)年正二位権大納言に至る。しかし,その道は決して平坦ではなかった。平治の乱(1159)で藤原信頼に与同し解官されたが妹婿である平重盛のとりなしで許され,また応保1(1161)年には平時忠らが謀った憲仁親王(のちの高倉天皇)立太子事件にまきこまれ解官されたが,やがて復任。さらに嘉応1(1169)年成親の知行国尾張の目代藤原政友が山門(延暦寺)領美濃国平野荘の神人を凌轢するという事件を起こし,延暦寺の訴えにより解官,備中国に配流されたが,これも後白河院の強力な保護により復任された。このように常に平氏や院の庇護の下で思うままに行動してきた成親であるが,治承1(1177)年大将の地位を望んだところ平氏によって阻まれたことを恨み,院の近習である西光や法勝寺執行俊寛らを語らって平氏打倒を企て(鹿ケ谷の謀議),それが事前に露見したため,怒った清盛によって配流先の備前で殺された。<参考文献>五味文彦『院政期社会の研究』

(木村真美子)

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改訂新版 世界大百科事典 「藤原成親」の意味・わかりやすい解説

藤原成親 (ふじわらのなりちか)
生没年:1138-77(保延4-治承1)

平安後期の廷臣。藤原家成の三男。母は藤原経忠女。後白河上皇の寵臣。7歳で越後守となり,讃岐守,侍従,越後守,右近衛中将等を歴任し,平治の乱では藤原信頼に従って敗れ,死罪のところを平重盛の姻戚であるために許された。のち本官に復したが,後白河上皇と二条天皇との対立から1161年(応保1)再び一時解官され,さらに69年(嘉応1)尾張守のとき,領地問題で延暦寺衆徒と紛争を起こし備中国に流罪となるがすぐ赦免された。77年(治承1)右大将の官を望んだが平宗盛に占められ不満を抱いた。西光,俊寛らと平氏追討の謀議をはかり発覚,東山鹿ヶ谷(ししがたに)で逮捕され,重盛のとりなしで再び死罪を免れ,備前国に流罪となったが難波(一説有木別所)で清盛のために殺された。
鹿ヶ谷事件
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤原成親」の意味・わかりやすい解説

藤原成親
ふじわらのなりちか
(1138―1177)

平安後期の公卿(くぎょう)。中納言家成(ちゅうなごんいえなり)の三男。母は中納言経忠(つねただ)の女(むすめ)。後白河(ごしらかわ)上皇の寵臣(ちょうしん)。平治(へいじ)の乱(1159)では藤原信頼(のぶより)について敗れ解官されたが、平重盛(しげもり)と姻戚(いんせき)関係にあったため死罪を免れ、のち本官に復した。しかし、2年後に平時忠(ときただ)らと憲仁(のりひと)親王を東宮(とうぐう)にたてようと画策して失敗、ふたたび解官されたが翌年には許された。その後は参議を経て権(ごん)大納言に進んだ。1177年(治承1)に僧西光(さいこう)、俊寛(しゅんかん)らと東山の鹿(しし)ヶ谷(たに)において平氏討伐を企てたが、事前に漏れて捕らえられ、備前(びぜん)国(岡山県)に配流され途中で殺された。妻の1人に歌人藤原定家の姉がいる。

[朧谷 寿]

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百科事典マイペディア 「藤原成親」の意味・わかりやすい解説

藤原成親【ふじわらのなりちか】

平安末期,後白河上皇の近臣。平治(へいじ)の乱で藤原信頼にくみして敗れたが,平重盛の姻威(いんせき)であるため助命。のち鹿ヶ谷(ししがたに)事件により,備前(びぜん)へ配流の途中平清盛のために殺された。
→関連項目俊寛

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「藤原成親」の解説

藤原成親
ふじわらのなりちか

1138~77.7.9

後白河上皇の近臣。鳥羽上皇の寵臣家成の三男。母は藤原経忠の女。「芙蓉の若殿上人」として後白河上皇に寵愛される。平治の乱で藤原信頼に連坐するが,平重盛との姻戚関係から死罪を免れる。1161年(応保元)に後白河上皇の皇子憲仁(のりひと)立太子事件に参画。66年(仁安元)参議正三位。のち権大納言正二位。所領をめぐる争いから延暦寺の訴えでたびたび解官・配流されるが,後白河上皇の保護により復任,しだいに平氏と対立。鹿ケ谷(ししがたに)の謀議にかかわり備前国に配流され,殺害された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「藤原成親」の意味・わかりやすい解説

藤原成親
ふじわらのなりちか

[生]保延4(1138).京都
[没]安元3(1177).7.9. 難波
平安時代末期の廷臣。中納言家成の子。後白河上皇の寵を得,越後守,侍従,右近衛中将などを歴任。平治の乱で藤原信頼についたが敗れ,平重盛との姻戚関係により許され復官。安元1 (1175) 年権大納言に就任したが,治承1 (77) 年平家打倒の鹿ヶ谷事件に参画して逮捕され,備前に流される途中処刑された。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「藤原成親」の解説

藤原成親 ふじわらの-なりちか

1138-1177 平安時代後期の公卿(くぎょう)。
保延(ほうえん)4年生まれ。藤原家成の3男。母は藤原経忠の娘。後白河上皇の寵臣(ちょうしん)。正二位にすすみ,安元元年権(ごんの)大納言。この間平治(へいじ)の乱で藤原信頼方についたこと,比叡山(ひえいざん)衆徒との紛争などで再三解任されている。安元3年鹿ケ谷(ししがたに)で平氏打倒を謀議。発覚して備前に流され,同年7月9日殺された。40歳。

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旺文社日本史事典 三訂版 「藤原成親」の解説

藤原成親
ふじわらのなりちか

1138〜77
平安末期の公卿。鹿ケ谷の陰謀の首唱者
権大納言。家成の3男。後白河法皇の近臣として昇進し,平治の乱(1159)には藤原信頼にくみして敗れた。復官して平家を倒そうとして僧俊寛 (しゆんかん) らと鹿ケ谷で謀議したが発覚し,配流先の備前で殺された。

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世界大百科事典(旧版)内の藤原成親の言及

【鹿ヶ谷事件】より

…1177年(治承1)後白河法皇の近臣が平氏打倒を企てた陰謀事件。権大納言藤原成親,僧西光(藤原師光)が中心となり,平康頼,僧俊寛,藤原成経(成親の子)らが加わった。俊寛の京都東山鹿ヶ谷の山荘で謀議をこらしたので,こう呼ばれる。…

【備中国】より

…【吉田 晶】
【中世】
 平氏が瀬戸内海の海賊的土豪を勢力下に収めて台頭したころ,備中の土豪の多くが平氏の忠実な家人となったのは備前と同様で,とくに《平家物語》にみえる瀬尾兼康(せのおかねやす)は,備中国都宇郡妹尾郷(現,岡山市妹尾)を本拠とした武士で,備前の難波二郎経遠・三郎経房兄弟らとともに平氏の有力な家人であった。鹿ヶ谷の陰謀の主謀者藤原成親(なりちか)が備前児島に流され,最後には備前・備中の境,有木(ありき)の別所(べつしよ)に移されてここで殺されたのも,この付近に平氏の有力な家人が多かった証拠である。 瀬尾兼康・宗康父子が源義仲軍と戦って討死したように,備中の平氏与党の武士たちの多くが平氏に殉じたあとには,大量の関東武士がこの地に地頭職を与えられて入部した。…

※「藤原成親」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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