改訂新版 世界大百科事典 「歳入歳出」の意味・わかりやすい解説
歳入・歳出 (さいにゅうさいしゅつ)
国の一会計年度における,いっさいの収入を歳入,そしていっさいの支出を歳出という。この場合における収入とは,国の各般の財政需要を満たすための支払の財源となるべき現金の収納をいい,支出とは,同様に,国の各般の財政需要を満たすための現金の支払をいう。すなわち,一会計年度における個々の収入および支出を,年度ごとにすべて取りまとめたものが歳入あるいは歳出である。
国の収入・支出は,国の財政需要を満たすための現金の収授という定義上,一般私企業等の場合とは若干その性質を異にしている。まず収入についていえば,国の財政需要を満たすためのものでない郵便貯金の預入れ,あるいは,現金の受入れでない国に対する土地や建物の寄付などは収入ということができない。また,私企業の場合には借金をしてもこれを収益に計上することはしないが,国の場合には,国債発行や借入金などにより,現金が入ってくれば,それが債務の増加を伴うものであってもこれらをみな収入として扱うこととしている。支出の場合も同様であり,郵便貯金の払戻しや国有財産の現物出資などは支出にはならず,反面,国有財産の形態が単に変化しただけの場合でも,それに現金の支払が伴う場合にはこれを支出として計上する。
歳入・歳出はともにすべて当該年度の予算に計上されなければならない。たとえ歳入と歳出のある項目が互いに関連するものであっても,これらを相殺して歳入・歳出いずれか差額の予算としてはならないこととされている。このことは,当該年度の歳入・歳出の全体像を明らかにし,国家の財政活動が予算を通じて把握されることを可能にし,これを通じて経理の適正化,予算執行の責任の明確化等を確保するために必要なことであり,これを総計予算主義といっている。
このようにして予算に計上された歳入・歳出の見積りを歳入歳出予算というが,これは予算総則,継続費,繰越明許費および国庫債務負担行為とともに予算の一部を構成するものである。しかし,この歳入歳出予算が予算のなかで最も重要な部分であり,予算の本体ともいうべきものである。事実,単に予算という場合には,歳入歳出予算を指すことが多い。また,地方公共団体におけるいっさいの収入,支出のことも歳入・歳出といい,政府関係機関についても同様に歳入・歳出の語が使われる。
執筆者:竹内 克伸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報