膀胱炎(読み)ボウコウエン(その他表記)cystitis

翻訳|cystitis

デジタル大辞泉 「膀胱炎」の意味・読み・例文・類語

ぼうこう‐えん〔バウクワウ‐〕【××胱炎】

膀胱の粘膜の炎症。主に細菌の感染によって起こり、女性に多い。尿が近くなり、排尿時に痛みがある。

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精選版 日本国語大辞典 「膀胱炎」の意味・読み・例文・類語

ぼうこう‐えんバウクヮウ‥【膀胱炎】

  1. 〘 名詞 〙 膀胱におきた炎症。頻尿、尿混濁、排尿後の疼痛を主症状とする。膀胱カタル。〔医語類聚(1872)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「膀胱炎」の意味・わかりやすい解説

膀胱炎 (ぼうこうえん)
cystitis

尿路感染症の一つで,膀胱の炎症をいう。細菌やウイルスの感染によって起こるが,放射線やアレルギーなどによることもある。その経過によって急性膀胱炎と慢性膀胱炎に大別され,これとは別に放射線療法によって起こる放射線性膀胱炎がある。

20~30歳代の女性に多い。原因となる細菌はほとんどが大腸菌で,外陰部から尿道を逆行して膀胱に侵入すると考えられている。女性は男性にくらべて尿道が短く,解剖学的にこのような逆行性の細菌感染を起こしやすい。排尿をがまんしすぎたり,下痢や便秘,性交など局所の充血が誘因となることが多い。頻尿,排尿時の疼痛,尿の混濁を膀胱炎の三大症状と呼び,本症の診断にも重要である。このほかに下腹部痛,血尿などを伴うことがあるが,発熱はないのが普通である。発熱がある場合は,他の病気,たとえば腎盂腎炎(じんうじんえん)などの合併が考えられる。診断には膀胱鏡検査や尿の顕微鏡検査あるいは培養検査が行われる。治療は抗生物質の投与によって数日で治癒するのが普通であるが,再発をくり返したり,症状がなかなか改善しない場合は,単純な急性膀胱炎ではなく,慢性膀胱炎や尿路結核腎結核)の疑いが強くなる。急性膀胱炎で血尿がとくに強い場合を急性出血性膀胱炎と呼ぶことがある。本症では膀胱粘膜からの高度の出血がみられる以外は,急性膀胱炎と同様な症状を示す。原因は細菌感染以外にアレルギーやウイルスあるいはシクロホスホアミドなどの薬物が関与しているとされている。この型の膀胱炎は20~30歳代の女性以外に小児にも多くみられる。

神経因性膀胱機能障害前立腺肥大症前立腺癌のように尿の流れを妨げる疾患や,膀胱結石膀胱腫瘍,前立腺炎,尿道炎などの膀胱炎を慢性化させる基礎疾患が存在することが多い。本症の好発年齢はこのような病気が多くみられる高齢者で,原因となる菌は大腸菌,変形菌,緑膿菌などグラム陰性杆菌が多い。症状は,急性膀胱炎と同様に頻尿,排尿痛,尿混濁を三大症状とするが,一般に急性にくらべて軽く,排尿時の不快感,下腹部や会陰部の不快感,排尿終了後にも尿が残る感じ(残尿感)などを訴えることが多い。また症状のないこともあるが,尿の検査で細菌と膿球(白血球)を認める。診断には膀胱鏡検査などで慢性化の原因となる基礎疾患の発見に努めなければならない。治療は,基礎疾患に対する適切な治療,たとえば膀胱結石に対しては結石の除去,前立腺肥大症に対しては前立腺摘出手術などを第一とし,次いで抗生物質の投与を行う。いたずらに抗生物質を長期に投与しても,原因が除去されないかぎり膀胱炎の根治は困難で,再発をくり返すからである。

子宮癌や直腸癌などの骨盤内悪性腫瘍に対し放射線療法を行ったため起こる膀胱炎を放射線性膀胱炎と呼んで区別する。本症の原因は膀胱の放射線障害で,放射線照射後数週間の早期に発症するものは急性膀胱炎の症状を示すが,照射後数ヵ月から数年を経て発症するものは血尿を主要症状とし,慢性症状となる。
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食の医学館 「膀胱炎」の解説

ぼうこうえん【膀胱炎】

《どんな病気か?》


〈細菌の侵入ではげしい痛みや血尿を引き起こす〉
 膀胱炎(ぼうこうえん)では、排尿時に痛みを感じたり、残尿感(ざんにょうかん)があったり、また頻繁に尿意を催したり(頻尿(ひんにょう))というのがおもな症状です。痛みはとくに排尿の最後に感じることが多く、それも刺すようなはげしい痛みで、ひどい場合は気を失ってしまうほどです。ほかに、尿がにごる、血尿(けつにょう)がでるなどの症状もあります。
 膀胱炎の多くは急性がほとんどで、大腸菌(だいちょうきん)ブドウ球菌などの細菌が尿道から侵入し、膀胱まで達して粘膜(ねんまく)に炎症を起こさせてしまうのが原因です。
 健康なら多少の細菌が侵入しても、細菌に対する抵抗力や、排尿時の自浄作用によって、炎症を起こすにはいたりませんが、排尿をがまんしたり、疲労や睡眠不足、冷えや便秘、性交などが誘因となると、膀胱炎を引き起こしてしまいます。
 膀胱炎が女性に多くみられるのは、尿道口周辺の外陰部に分泌物(ぶんぴつぶつ)が多く、細菌が繁殖しやすい状態にあるうえ、尿道が短く、尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)の働きも弱いので、細菌が膀胱まで容易に達してしまうからです。
 外陰部を清潔にして、体、とくに下腹部をあたためるなど、誘因となるような条件を排除して予防しましょう。

《関連する食品》


〈ダイズ、アズキ、レンコンに利尿・消炎効果が〉
○栄養成分としての働きから
 大量の排尿が効果のある膀胱炎は、利尿効果のある食べもので排尿回数をふやすことがいちばんです。
 利尿作用をうながすには、サポニンルチンタンニンなどの成分が有効です。
 サポニンはアズキの皮に多く含まれ、利尿効果をうながすと同時に炎症も鎮めてくれます。
 ルチンを含む食品としてはそばがあります。そば湯も飲むようにすると、より効果的です。
 タンニンを含む食品にレンコンがあげられますが、レンコンは止血作用や消炎作用にすぐれています。
 痛みがひどいときや血尿があるときに、レンコンのしぼり汁を飲むと効果があります。
 ポリフェノールの多いクランベリーなどもおすすめです。
○漢方的な働きから
 漢方でも、アズキがゆを、解毒・利尿効果を目的として食べます。ただし、赤アズキは利尿作用の妙薬ですが、最初に煮(に)だした汁に利尿作用があり、その部分を捨ててつくったあんには、利尿作用はありません。
 また、ダイズにも尿がでやすくなる作用があるので、豆乳やとうふなどのダイズ製品も効果的です。
 尿量をふやし、利尿をうながす食品として、成分の90%が水分であるトウガンやスイカなどを摂取することでも効果が期待できます。
〈アズキは皮ごと摂取し、モチ米とは組み合わせない〉
○注意すべきこと
 おはぎやお汁粉など、アズキとモチ米はセットになりがちです。ところが、モチ米には排尿をさまたげる作用があるため、逆効果。いくらアズキが入っているとはいえ、おこわやおはぎなどは食べないように注意しましょう。

ぼうこうえん【膀胱炎】

《どんな病気か?》


 膀胱炎(ぼうこうえん)は膀胱の粘膜(ねんまく)に炎症が起こる病気で、多くは細菌感染が原因になります。
 女性に多い病気ですが、乳児期にも比較的多くみられます。
 症状が軽い場合は、水分を大量にとって、尿量をふやせば自然に治ります。
 ぜんそく治療薬などの抗アレルギー薬を服用していると、膀胱炎のような症状や尿の異常が現れることがありますが、薬の服用を中止すると症状も消失します。

《関連する食品》


〈IPAが炎症を抑え、ビタミンAで粘膜強化〉
○栄養成分としての働きから
 膀胱炎に効果があるのはIPA、ビタミンA、C、Eなどです。
 まずIPAは、膀胱の粘膜の炎症を抑えるのに有効で、マグロやブリなどに多く含まれています。
 ビタミンAは、粘膜を丈夫にして細菌の侵入を防ぐ働きがあります。ビタミンAにはレバーなどに含まれているレチノールと、ニンジン、カボチャなどに含まれている植物性のカロテンとがあり、カロテンは免疫細胞を活性化する働きが認められています。油といっしょにとると吸収率が上がるので、野菜炒(いた)めなどにしてとると効果的です。
 ビタミンCは、白血球の働きを強化して免疫力を高めます。また、ビタミンEにも免疫反応を高める働きがあります。
○漢方的な働きから
 漢方的には赤アズキがよく用いられます。利尿作用が強く、残尿感をすっきりさせます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「膀胱炎」の意味・わかりやすい解説

膀胱炎
ぼうこうえん
cystitis

膀胱の炎症で、尿路疾患のうちで頻度がもっとも高い。原因によって細菌性と非細菌性に大別され、細菌性膀胱炎はさらに結核菌などによる特異性膀胱炎と、大腸菌などによる非特異性膀胱炎に分けられる。しかし、通常、単に膀胱炎といえば非特異性細菌性膀胱炎をさしており、その経過によって急性膀胱炎と慢性膀胱炎に分けられる。

 急性膀胱炎の原因菌はおもに大腸菌とブドウ球菌であり、尿道より上行して膀胱に達する場合が多い。20~30歳代のとくに女性に多く、排尿をがまんしたり、冷えや性交などが誘因となる場合が多い。症状としては排尿痛、頻尿、残尿感などが多く、また排尿の最後に少量の出血を認めることもある。尿検査では膿(のう)尿と細菌尿を認める。水分を多めに摂取し、排尿をがまんせず、保温に気をつけ、またアルコールや刺激物を避けるように心がける。化学療法を行えば短期間に快復するが、ときに再発することがある。

 慢性膀胱炎は、慢性化の要因として尿の流れを悪くするような基礎疾患を合併していることが多い。したがって、前立腺(ぜんりつせん)肥大症や膀胱腫瘍(しゅよう)のおきやすい比較的高齢者に多くみられ、また若干男性に多い。症状は急性膀胱炎と同様であるが、はっきりした症状を呈さない場合も多く、また基礎疾患自体の症状のみを呈するものも多い。治療としては、化学療法と同時に基礎疾患の治療が重要で、基礎疾患を除去しない限り感染を根絶することは一般に困難である。

 なお、非細菌性膀胱炎としては、子宮や直腸に対する放射線治療の際にみられる放射線性膀胱炎、膀胱内の異物や結石などの機械的刺激による膀胱炎、ある種の薬剤の尿中代謝産物の化学的刺激による膀胱炎などがある。また、幼小児に比較的多いアレルギー性膀胱炎、特殊なものとしては中年女性にみられる間質性膀胱炎などもある。

[河田幸道]

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内科学 第10版 「膀胱炎」の解説

膀胱炎(尿路感染症)

(2)膀胱炎(cystitis)
概念・病態
 膀胱炎は,急性単純性と複雑性に分類される.多くは細菌性の炎症であるが結核,ウイルス,放射線,薬剤も原因となる.急性単純性は性的活動期の若年女性や閉経後の萎縮性膣炎を有する高齢女性に多く,性行為との関連による発症もある.寒冷,疲労などストレスも誘因となる.起因菌は大腸菌が多く70~95%を占める.前立腺肥大症や神経因性膀胱などの下部尿路疾患がある高齢者や糖尿病などの基礎疾患がある複雑性膀胱炎では緑膿菌や腸球菌などの分離頻度が高くなってくる.
診断
 頻尿,排尿時痛,尿混濁が3大主徴である.通常発熱は伴わない.排尿終末時に排尿時痛が強いことが特徴である.尿は肉眼的に混濁があり,ときに肉眼的血尿も認める.尿沈査では膿尿,細菌尿を認める.膿尿は白血球5個/HPF以上,細菌尿は細菌104 CFU/mL以上と定義される.中間尿にて尿細菌培養を行い起因菌の同定を行い,薬剤に対する感受性試験を行う.
治療
 急性期には保温,安静,水分摂取を基本とする.急性膀胱炎はニューキノロン系抗菌薬を3日間かセフェム系抗菌薬7日間の投与が推奨されている.[久末伸一・堀江重郎]

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家庭医学館 「膀胱炎」の解説

ぼうこうえん【膀胱炎 Cystitis】

◎とくに女性に多い病気
 膀胱の粘膜(ねんまく)に炎症がおこるもので、多くは細菌の感染が原因です。
 原因となる病気がとりたててない場合を単純性膀胱炎(たんじゅんせいぼうこうえん)といい、急性膀胱炎として発症しますが、治りやすいものです。
 尿路になんらかの原因となる病気がある場合は複雑性膀胱炎(ふくざつせいぼうこうえん)といい、治りにくく、慢性膀胱炎になりやすいものです。
 急性膀胱炎は、とくに女性に多い病気で、幼児期にも比較的多いのですが、性活動のさかんな時期と閉経期(へいけいき)に発症のピークがあります。
 慢性膀胱炎は、さまざまな尿路の病気にともなうもので、高齢者に多く、また、尿の通過障害をおこしやすい男性に多くみられます。

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百科事典マイペディア 「膀胱炎」の意味・わかりやすい解説

膀胱炎【ぼうこうえん】

膀胱の急性または慢性の炎症。多くは細菌感染。腎盂(じんう)炎や他の尿路系の炎症に続発することが多い。悪寒(おかん),発熱,頻尿(ひんにょう),排尿時灼熱(しゃくねつ)感,血尿などがあり,検尿で膿尿がみられる。原因菌に対して有効な抗生物質を投与し,安静にして下腹部を暖める。同時に合併症なども治療する。なおりにくい慢性膀胱炎には結核性のものや真菌性のものがよくある。
→関連項目腎結核

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「膀胱炎」の意味・わかりやすい解説

膀胱炎
ぼうこうえん
cystitis

頻尿,排尿痛,尿混濁を主症状とする膀胱の炎症。原因も病変も多岐にわたるが,大部分は細菌感染に起因するもので,大腸菌などが尿道に入り,膀胱に逆行して炎症を起す (→細菌尿 ) 。この細菌性膀胱炎は,かかりやすいがなおりやすいので,単純性膀胱炎ともいう。ほとんどが女性に起る。ほかにアレルギー性,薬物性,出血性,放射線性,間質性などがあるが,まれである。

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世界大百科事典(旧版)内の膀胱炎の言及

【膀胱】より

尿【藤田 尚男】 膀胱の病気には奇形,炎症,腫瘍,神経因性膀胱,膀胱尿管逆流,外傷,結石,異物などがある。最もよくみられるのは膀胱炎である。急性膀胱炎は細菌などの感染により起こり,抗生物質によって治るが,慢性膀胱炎は治りにくい。…

※「膀胱炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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