サンスクリット語のア・フームa-hūの音写。密教では、「阿」は口を開いて発音する最初の音声で、すべての字音は阿を本源とし、「吽」は口を閉じて発音する音声で、字音の終末とする。また、阿は呼気、吽は吸気であるとともに、それらは万有の始源と究極とを象徴する。さらに阿字には不生(ふしょう)、吽字には摧破(さいは)の意があるなどとする。この2字の密教的な解釈については、空海の『吽字義(うんじぎ)』と『秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)』に詳しい。寺院の山門に安置する仁王(におう)や向拝(ごはい)の左右の柱頭にある獅子(しし)、神社の狛犬(こまいぬ)(高麗犬の意)などで、向かって右が口を開き、左が口を閉じているのは、阿吽を表す。相撲の仕切りなどで、呼吸があうのを「阿吽の呼吸」という。
[宮坂宥勝]
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サンスクリットのア・フーンの音訳。梵字では阿は口を開いて発する最初の音声,吽は口を閉じて発する最後の音声であり,それぞれ万物の始原・終極を示す。密教では阿を万法発生の理体(胎蔵界),吽を万法帰着の智徳(金剛界)とする。一方が口を開き,他方が閉じた寺院の仁王像,神社の狛犬(こまいぬ)像はそれを表したもの。「阿吽の呼吸」というように,呼気・吸気にもあてられる。密教では,呼吸そのものが菩提心・涅槃(ねはん)につながるとも説かれた。
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