霍乱(読み)カクラン

デジタル大辞泉 「霍乱」の意味・読み・例文・類語

かく‐らん〔クワク‐〕【×霍乱】

漢方で、日射病をさした語。また、夏に起きやすい、激しい吐き気・下痢などを伴う急性病気をいった。「鬼の霍乱 夏》「―に町医ひた待つ草家かな/久女
「―と云いける虎列剌これらたおれ」〈蘆花不如帰

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精選版 日本国語大辞典 「霍乱」の意味・読み・例文・類語

かく‐らんクヮク‥【霍乱】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「きかくりょうらん(揮霍撩乱)」の略。もがいて手を激しく振り回す意から ) 暑気あたりによって起きる諸病総称。現在では普通、日射病をさすが、古くは、多く、吐いたりくだしたりする症状のものをいう。今日の急性腸カタルなどの類をいったか。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「以国守当月十四日霍乱、起居不得」(出典正倉院文書‐宝亀三年(772)五月・田部国守解)
    2. 「夏くくらんを患ひてせんかたなく、衣を壱匁八分の質に置けるが」(出典:浮世草子世間胸算用(1692)一)
    3. [その他の文献]〔漢書‐厳助伝〕

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改訂新版 世界大百科事典 「霍乱」の意味・わかりやすい解説

霍乱 (かくらん)

古くから知られていた,中国医学の病名の一つで,嘔吐と下痢を起こし,腹痛煩悶なども伴う病気の総称である。暑い時に冷たい飲食物をとりすぎるなど,冷熱の調和を乱すことによって起こると考えられていた。乾霍乱,熱霍乱,寒霍乱など種々の病名が記載されている。病状からみてコレラや細菌性食中毒などを含む急性消化器疾患と考えられる。現在の中国語では霍乱はコレラのこと。
執筆者:

日本では一般に日射病などの暑気あたりの諸病をさすが,古くは中国と同様激しい腹痛,下痢,嘔吐を伴う急性胃腸炎のことをいった。平安末期の絵巻物病草紙》に,〈霍乱の女〉という嘔吐と下痢で苦しんでいる描写がある。詞書に〈霍乱といふ病あり。はらのうち苦痛さすがごとし。口より水をはき,尻より痢をもらす。悶絶顚倒して,まことにたとへがたし〉と記されている。当時は〈しりよりくちよりこくやまひ〉とも呼ばれた。なお,平素ひじょうにじょうぶな人が珍しく病気になることのたとえを〈鬼の霍乱〉という。
執筆者:

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普及版 字通 「霍乱」の読み・字形・画数・意味

【霍乱】かく(くわく)らん

コレラなどの下痢症状。〔漢書、厳助伝〕夏時、歐泄(おうせつ)霍亂の、相ひ隨ひ屬す。

字通「霍」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「霍乱」の意味・わかりやすい解説

霍乱
かくらん

急に倒れる日射病、あるいは真夏に激しく吐き下しする病気の古称である。現代でいう急性胃腸炎、コレラ、疫痢(えきり)などの総称に該当するものと思われる。鬼でも霍乱には寝込んでしまうというところから「鬼の霍乱」と称し、普段はじょうぶな人が珍しく病気にかかることのたとえに使われる。

[井上義朗]

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