赤痢菌感染に基づく小児の特殊な症候群。1914年伊東祐彦により独立疾患とされ,22年法定伝染病として取り扱われるようになった。小児がどうして疫痢症状を示すのかという本態については,ヒスタミン中毒説,体質説,副腎皮質機能不全説,低カルシウム血症などの諸説が出された。しかし,これについては,未解決のまま推移しているうちに疫痢そのものが64年以降ほとんどみられなくなった。
疫痢は2~5歳,とくに3歳前後の幼児を襲う。幼児は突如無気力となり,39~40℃の高熱を発し,顔面蒼白,脈拍微弱,頻脈,四肢冷感などの循環障害があらわれ,意識が混濁し,痙攣(けいれん)が起こる。嘔吐を伴い,反復するときはコーヒー残渣様の吐物がみられる。腹部は陥没して綿をつかむように軟らかくなる。数回の緑色粘液下痢便があり,ときに粘血便をみる。菌検査により赤痢菌が分離される場合が多い。末梢循環障害,脳症状を伴う中毒症状,胃腸症状を主とする症候群で急激な経過をとる。発病10時間で死亡する例もあり,致命率は30%にも及んだ。
→赤痢
執筆者:橋本 博
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