関節炎(読み)かんせつえん(英語表記)arthritis

翻訳|arthritis

精選版 日本国語大辞典 「関節炎」の意味・読み・例文・類語

かんせつ‐えん クヮンセツ‥【関節炎】

〘名〙 関節の炎症。細菌性のものと非細菌性のものとがある。熱感、疼痛などの症状を伴う。
※黒雨集(1923)〈田中貢太郎〉水郷異聞「翌日から急に発熱して激烈な関節炎を起し左の膝が曲ってしまったために」

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デジタル大辞泉 「関節炎」の意味・読み・例文・類語

かんせつ‐えん〔クワンセツ‐〕【関節炎】

関節の炎症。関節のはれ・痛みがあり、急性の場合には発赤・熱感や全身の発熱がみられることも多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「関節炎」の意味・わかりやすい解説

関節炎 (かんせつえん)
arthritis

関節におこった炎症をいう。その原因により,化膿性,結核性,梅毒性など感染によるもの,リウマチおよびその類似疾患によるもの,外傷によるものなどに分けられる。以前は退行変性(なんらかの原因で,細胞や組織の代謝や機能が低下し,形態的にも変化すること)に基づくものも変形性関節炎といわれたが,近年,これは変形性関節症といわれ,関節炎とは区別されるようになった。

関節炎は感染によるものが最も多い。化膿性関節炎septic arthritisは,いわゆる黄色ブドウ球菌連鎖球菌のような一般化膿菌が起炎菌となるもので,まれに淋菌,チフス菌,インフルエンザ菌,肺炎菌などによっておこるものもある。関節液の性状により,漿液性関節炎,漿液繊維素性関節炎,膿性関節炎などに分けられる。発症は,近隣の骨髄炎からの波及や身体他所の化膿巣から二次的に血行を介して関節に菌が運ばれ,そこで繁殖する血行性感染が最も多いが,近年は関節リウマチ,変形性関節症などの場合に行われる副腎皮質ホルモン剤の関節腔内注入の際,菌が外部から侵入しておこる化膿性関節炎も多いといわれている。症状は,発熱などの全身症状を伴い,疼痛,発赤,熱感,腫張などの炎症による局所症状が著しく,そのため機能障害もつよい。治療は,関節を安静にしたうえで抗生物質の服用が行われるが,関節液を排除し抗生物質を関節内に注入することもある。化膿がはげしいときには,抗生物質を与えながら,関節切開をする必要があり,膝関節などの場合は,抗生物質で関節内を洗浄する閉鎖性局所持続洗浄法などが行われる。炎症の程度で予後がきまるが,重篤な場合は,しばしば関節の強直や病的脱臼が後遺症としておこる。なお,化膿性関節炎の起炎菌として近年,真菌によるものもときどきみられる。

 結核性関節炎tuberculous arthritisは結核菌によるもので,結核菌が最初関節内の滑膜に付着し結核性滑膜炎として初発する滑膜型と,直接関節を構成する骨に付着し骨を破壊する骨型の2型に分けられる。とくに股関節,膝関節などに多発し,年齢的には若年者に多い。関節の運動制限が著しいため股関節では屈曲外転・屈曲内転拘縮などがおこる。また,膿瘍が皮膚に破れて,治りにくい瘻孔(ろうこう)をつくることがある。治療法は,結核の一般的な治療のほかに,ギプス等を用いての患肢の安静固定,化学療法を行う。化学療法は,以前ストレプトマイシン,パス,アイナの3者併用が最も多く用いられたが,最近はリファンピシンエタンブトールなどさらに強力な抗結核化学療法剤が用いられる。病期が早期のもの(たとえば,骨型でも関節内に破れず限局しているようなもの)では,上記の治療法や手術的療法により,関節に良好な可動性を残して治癒させることができる。しかし,ある程度進行し関節の破壊がみられるものでは,関節固定術によって関節が強直した状態で根治させる。近年,これらの強直に陥った股関節などに人工関節置換術を行い可動性を与える手術が行われていることがあるが,その適用は厳重でなければならない(人工関節)。

 梅毒性関節炎は頻度は少ない。先天梅毒によるものと後天梅毒によるものがある。慢性のものが多く,その中でも水腫を形成するものが最も多い。

 リウマチ性関節炎rheumatoid arthritisは慢性関節リウマチの一部分現象である。リウマチの病因は不明であるが,免疫学的研究の進歩とともに自己免疫疾患としてとらえられている。リウマチ性関節炎は,初め滑膜にリウマチ性炎症がおこり,滑膜は肉芽となって骨と軟骨の境界部から軟骨下の骨内に侵入し,骨を破壊し,関節は動揺関節となったり,ときには関節が骨性に強直をおこし関節の変形を生ずる。おかされる関節としては左右の手指の関節が対称的におかされ,しだいに数多くの関節に及ぶ。また全身症状を伴うこともあり,心内膜炎などを合併することもある。治療は,関節に変形がおこらぬよう防止することが大切であるが,関節の疼痛,変形等に対しては滑膜切除術,股関節,膝関節においては人工関節置換術などの手術的療法が行われる。リウマチ性関節炎の類似疾患の一つと考えられているもので,脊椎の椎間関節,椎間板などが骨性強直をおこす強直性脊椎関節炎は,日本では比較的少ないが,男性に多い。脊椎のほかに仙腸関節や股関節などの大関節も強直をおこす。乾癬(かんせん),全身性エリテマトーデス,皮膚筋炎,強皮症,結節性動脈炎などの場合にも慢性関節リウマチと類似の関節炎をおこす(リウマチ)。

 外傷性関節炎traumatic arthritisは外傷によって生じた滑膜等の炎症を意味するが,近年は関節損傷およびその後遺症を一つにまとめて外傷性関節炎と呼称することがある。
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百科事典マイペディア 「関節炎」の意味・わかりやすい解説

関節炎【かんせつえん】

関節のはれと痛みを主症とし,時に化膿し,また運動障害を残すことがある。急性と慢性に大別される。急性関節炎のうち化膿性関節炎は,ブドウ球菌などの化膿菌が他の病巣から血行的に運ばれたり,外傷から直接に関節に侵入することにより起こる。また淋(りん)病などの伝染病の際に多発する。その他,ふつう外傷に続発する漿(しょう)液性関節炎や,リウマチによる漿液繊維素性関節炎がある。慢性関節炎には,結核梅毒などの慢性伝染病の経過中に起こるもの,痛風の際の尿酸沈着によるもの,リウマチによる多発性関節炎,老化または外傷による退行性病変とみられる変形性関節炎などがある。治療は原因によって異なるが,抗生物質やコーチゾン系薬剤を与え,必要に応じて穿刺(せんし)切開して排膿し,関節の安静,固定,温泉療法,理学療法を行う。
→関連項目脱臼副子リウマチ熱

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「関節炎」の意味・わかりやすい解説

関節炎
かんせつえん

関節の炎症で、原因によっていろいろに分類される。原因の明らかな感染性関節炎には、ブドウ球菌、連鎖球菌、淋(りん)菌などによる化膿(かのう)性関節炎がある。これは関節の腫脹(しゅちょう)、疼痛(とうつう)、熱感、発赤、機能障害などの関節炎症状が高度にみられ、急性関節炎の経過をとる。また結核や梅毒などによる関節炎は、慢性の経過をとる。淋菌、結核、梅毒によるものは、現在はきわめて少なくなっている。

 リウマチ性関節炎は多発性で、慢性進行性の経過をとり難治性である。関節の外傷後に漿液(しょうえき)性関節炎をおこすことがあり、外傷性関節炎といわれる。また関節の退行性変化を基盤としておこるものに変形性関節症(骨(こう)関節炎)があり、高年者に多く発生し膝(しつ)関節と股(こ)関節に多くみられる。痛風の関節炎は足の第1中足関節にくることが多く、夜間に疼痛が強い。そのほか、血友病性のものや神経病性のものなどもある。

[永井 隆]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「関節炎」の意味・わかりやすい解説

関節炎
かんせつえん

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栄養・生化学辞典 「関節炎」の解説

関節炎

 関節の炎症.

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世界大百科事典(旧版)内の関節炎の言及

【関節液】より

…赤血球は存在しない。 関節炎などの病的状態になると,まず液の量が増えて穿刺(せんし)採取が容易となる。透明さが失われ混濁するが,その度合は細胞数が多くなるにつれて著しくなる。…

※「関節炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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