三酸化硫黄(読み)サンサンカイオウ(英語表記)sulfur trioxide

デジタル大辞泉 「三酸化硫黄」の意味・読み・例文・類語

さんさんか‐いおう〔サンサンクワいわう〕【三酸化硫黄】

硫黄の三酸化物無色の結晶性固体で、水と激しく反応して硫酸になる。工業的には二酸化硫黄酸素と化合させて作る。化学式SO3 無水硫酸

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精選版 日本国語大辞典 「三酸化硫黄」の意味・読み・例文・類語

さんさんか‐いおう サンサンクヮいわう【三酸化硫黄】

〘名〙 硫黄の酸化物。化学式 SO3 無色の結晶性固体。アルファベータガンマ三種変態がある。水に溶けると硫酸となり、強い酸化作用をもつ。反応性に富み、金属酸化物と化合して硫酸塩をつくる。発煙剤発煙硫酸製造などに用いられる。無水硫酸。

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改訂新版 世界大百科事典 「三酸化硫黄」の意味・わかりやすい解説

三酸化硫黄 (さんさんかいおう)
sulfur trioxide

化学式SO3。二酸化硫黄と酸素を白金アスベスト触媒として燃焼させて得る。濃硫酸を五酸化二リンとともに蒸留するか,発煙硫酸,硫酸水素ナトリウム,ピロ硫酸ナトリウムなどを加熱しても得られる。気体の分子構造は,図に示すように,硫黄を中心とする平面正三角形である。固化させるときの条件によって3種の変態が知られている。すなわち,気体を-80℃以下で冷却すると発煙性,無色の氷状のγ型が得られ,25℃以下で放置すると絹糸状光沢のあるアスベスト状のβ型となり,これを封管中32.5℃以上に長くおくとコロイド状のα型となる。融点16.8℃(γ),32.5℃(β),62.4℃(α),沸点44.5℃(液体),比重1.926(20℃,液体)。各変態ともに化学作用はほぼ同じである。水と激しく反応して硫酸となる。強い酸化剤で,金属酸化物とは熱を発して反応して硫酸塩をつくる。液体三酸化硫黄は単量体と三量体の混合物で,無色油状,強い刺激性の蒸気を発生する。濃硫酸,液体二酸化硫黄,塩化スルホニルによく溶ける。ジクロロジフルオロメタンCF2Cl2も低温でよい溶剤である。濃硫酸に吸収させたものを発煙硫酸という。硫黄を含む石油類を燃焼させたとき発生する二酸化硫黄は,大気中において微細な浮遊粒子状物質表面をおおっている水の膜に溶け,さらに紫外線による光化学反応によって三酸化硫黄に酸化される。これが大気汚染をもたらす硫酸ミスト発生の原因である。
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化学辞典 第2版 「三酸化硫黄」の解説

三酸化硫黄
サンサンカイオウ
sulfur trioxide

SO3(80.06).二酸化硫黄白金海綿,V2O5,NOなどを触媒として直接酸素と反応させてつくる.気体ではSO3分子が存在し,Sを中心とする平面三角形型構造.原子間距離S-O0.143 nm.∠O-S-O120°.腐食性気体で,水とはげしく反応して硫酸となる.金属酸化物とは熱を発して反応し硫酸塩となる.固体には三つの変態が知られている.(1)斜方晶系三酸化硫黄(γ-SO3).-80 ℃ 以下で気体を凝縮させると得られる.発煙性があり,無色の氷状の固体.融点16.8 ℃,沸点44.8 ℃.密度1.995 g cm-3(13 ℃),1.97 g cm-3(20 ℃).環状の三量体でS3O9分子からなる分子結晶.(2)絹糸光沢のアスベスト状三酸化硫黄(β-SO3).25 ℃ 以下で痕跡の水の存在で斜方晶系SO3または液体SO3を放置すると得られる.融点32.5 ℃.四面体型のSO4のOでつながった無限らせん構造である.(3)もっとも安定なアスベスト状三酸化硫黄(α-SO3).β-SO3を封管中で32.5 ℃ 以上に長くおくと得られる.融点62.2 ℃.液体のSO3は単量体と三量体の混合物で,ホウ酸を添加すると安定化し,純粋な状態では痕跡の水でたやすく重合する.強酸化剤,スルホン化剤,イオン交換樹脂の製造,硫酸製造などに用いられる.猛毒.[CAS 7446-11-9]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三酸化硫黄」の意味・わかりやすい解説

三酸化硫黄
さんさんかいおう
sulfur trioxide

硫黄の酸化物の一つで、硫酸の無水物。俗称無水硫酸。接触法による硫酸製造に際し大量につくられるが、工業的には普通、発煙硫酸を蒸留する。実験室では二硫酸ナトリウムNa2S2O7または硫酸鉄(Ⅲ)Fe2(SO4)3を熱してつくる。気体分子は三角形の平面型単量体分子であるが、液体空気を用いて凝縮させるとα(アルファ)型が得られる。0℃で凝縮させるとβ(ベータ)とγ(ガンマ)の混合物が得られ、これを20℃に温めて液体として、減圧蒸留によってγを除くとβが得られる。完全に脱水した気体を27℃以上で凝縮させるとγ型が得られる。いずれも無色で、α型とβ型はアスベスト状針状晶。γ型は氷状結晶。通常はこれらの混合物で、沸点44.6℃。比重1.903(25℃)。市販の安定化液体SO3は重合防止剤が加えられている。水と激しく反応して硫酸となり、金属酸化物を硫酸塩に変える。有機化合物と反応してスルホン基を導入する。合成洗剤用のアルキルベンゼンなどのスルホン化に用いられるほか、スルホンアミド、流動パラフィン、染料中間体などの製造に用いられる。水と激しく反応するので皮膚に触れるとやけどする。

[守永健一・中原勝儼]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三酸化硫黄」の意味・わかりやすい解説

三酸化硫黄
さんさんかいおう

酸化硫黄」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の三酸化硫黄の言及

【硫黄酸化物】より

…硫黄の酸化物の総称であるが,おもに,硫黄Sを含んだ化石燃料の燃焼により二酸化硫黄SO2(亜硫酸ガス)や三酸化硫黄SO3の形で発生し,エーロゾルに吸着したり硫酸などの酸化物となって大気中に存在する。SO2は300~500ppmの濃度で短時間のうちに胸痛,意識混濁などの中毒症状を生じさせ,1.6ppmで健康人の上気道粘膜を刺激して可逆的な気管支収縮を発生させる。…

※「三酸化硫黄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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