鳴海(読み)なるみ

精選版 日本国語大辞典 「鳴海」の意味・読み・例文・類語

なる‐み【鳴海】

[1] 〘名〙
① 海のどよめき。〔改正増補和英語林集成(1886)〕
真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉八四「鳴海(ナルミ)単衣に黒襦子の帯をひっかけに締め」
[2] 愛知県名古屋市緑区の地名江戸時代東海道五十三次池鯉鮒(ちりふ)と宮の間にあった宿駅鳴海絞りの特産地。〔二十巻本和名抄(934頃)〕

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デジタル大辞泉 「鳴海」の意味・読み・例文・類語

なるみ【鳴海】

名古屋市緑区の地名。もと東海道宿場町鳴海絞を特産。古代には海岸で、鳴海潟とよばれた。[歌枕]
「いざ知らず―の浦にひく潮のはやくぞ人は遠ざかりにし」〈新撰六帖・三〉
鳴海絞」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「鳴海」の意味・わかりやすい解説

鳴海 (なるみ)

尾張国愛知郡の地名。743年(天平15)の東大寺正倉院丹裏古文書に〈成海郷〉とあるのが初見。鎌倉時代になると,熱田から二村(ふたむら)山(現,豊明市)へ通ずる鎌倉街道沿いの地としてさかえ,また古代・中世の紀行文などに〈鳴海潟〉〈鳴海浦〉などと記されており,歌枕でもあった承久の乱後に清和源氏の流れをくむ小笠原清時とその子が鳴海余一を称しており,この一族が鳴海に勢力をもっていたと思われる。南北朝初期までには東西2荘よりなる鳴海荘が内裏料所として成立していた。同荘は1357年(正平12・延文2)に御祈料所として北朝より京都醍醐寺三宝院門跡光済に知行が認められ,同門跡領として相承されていたが,1426年(応永33)朝廷に取り上げられ,京都相国寺塔頭大徳院荘主に与えられた。しかし28年(正長1)三宝院門跡に返付され,以後68年(応仁2)まで同門跡領として目録に見えている。
執筆者: 近世の鳴海は尾張藩地方行政の拠点となった。鳴海村は東西8km,南北5kmの広さをもち,概高5000石余,1671年(寛文11)には戸数535,人口3195の大村であった。1782年(天明2)森下に代官陣屋が創設され,愛知郡南東部,知多郡東部,三河国の藩領計102ヵ村を管轄した。出頭する領民の宿泊施設である郷宿も周囲に並んだ。陣屋は1860年(万延1)丹下に移転した。1601年(慶長6)扇川沿いの作町,根古屋町,本町を中心に東海道の鳴海宿が成立した。本陣は本町に置かれたが,33年(寛永10)根古屋町へ移った。浅岡西尾,千代倉下郷家が順次つとめた。脇本陣は本町筋の銭屋,大和屋であった。本町と花井町の問屋場のうち1811年(文化8)前者が廃止された。継立の馬は規定の100頭を下回る60頭であったが,助郷は周辺25村に及ぶ。本町には高札場もあった。一時期68軒の旅籠屋が営業したという。俳諧もさかんで,芭蕉が数度訪れ,知足ら地元俳人と交遊した。近隣の有松(ありまつ)とともに絞の生産でも名高い。1886年東海道線が大高を通り,89年町制を施行したが,1963年名古屋市に合併し,緑区となった。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳴海」の意味・わかりやすい解説

鳴海
なるみ

愛知県名古屋市緑区の一地区。旧鳴海町。東海道旧宿駅。寛文(かんぶん)年間(1661~1673)には戸数533、本陣1、脇(わき)本陣2、常備馬60頭であった。景勝地鳴海潟に近く、松尾芭蕉(ばしょう)は「星崎の闇(やみ)を見よとや鳴く千鳥」と詠み、「千鳥塚」の句碑も建てられている。鳴海潟は、宿場西端から笠寺(かさでら)への道程に広がり、『万葉集』にみえる年魚市潟(あゆちがた)に続いていた。丘陵上の二村(ふたむら)山は鎌倉街道のルートで東海道筋よりやや北側にある。式内社成海(なるみ)神社は日本武尊(やまとたけるのみこと)、宮簀媛(みやずひめ)が祭神。慶長(けいちょう)(1596~1615)以来の特産には「有松・鳴海絞り」がある。名古屋鉄道本線鳴海駅がある。

[伊藤郷平]


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百科事典マイペディア 「鳴海」の意味・わかりやすい解説

鳴海【なるみ】

愛知県名古屋市区の一地区。江戸時代,東海道五十三次の宿場町として発達,名鉄名古屋本線が通じ,住宅地・工業地化が著しい。鳴海絞(有松絞)で有名。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鳴海」の意味・わかりやすい解説

鳴海
なるみ

愛知県名古屋市緑区の一地区。 1889年町制。 1963年緑区に編入。江戸時代から東海道の宿場町としてにぎわい,現在も街村状の町並みを残す。第2次世界大戦前に有名であった鳴海球場は,58年閉鎖されて自動車学校となった。伝統ある鳴海絞りはいまも特産品。名古屋鉄道が通り,名古屋市の郊外住宅地を形成。

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事典・日本の観光資源 「鳴海」の解説

鳴海

(愛知県名古屋市緑区)
東海道五十三次」指定の観光名所。

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