光のかわりにイオンを用いて物を拡大して見る装置。種々の型が開発されたが、今では人類が初めて一つ一つの原子を観察した顕微鏡として有名な電界イオン顕微鏡Field Ion Microscope(FIM)をさすことが多い。この顕微鏡の像拡大は、(光学)顕微鏡や(透過)電子顕微鏡とは異なりレンズを用いず、球状の固体表面を放射状に拡大するという単純な原理による。開発者ミュラーErwin W. Müller(1911―1977)の名をとりミュラー型イオン顕微鏡ともいう(1951年発明)。この顕微鏡は、ほぼ球形の金属結晶の表面での原子の並びを輝点の並びとして映し出すので、金属中の原子配列の観察をはじめ、金属表面への気体や金属原子の吸着、合金中の析出物の原子配置の観察などにおもに利用されてきた。さらにミュラーは、この顕微鏡に質量分析装置をつけることにより、一つ一つの輝点として見えている原子の元素分析ができる装置「Atom-Probe FIM, AP-FIM(アトムプローブ電界イオン顕微鏡)」を開発した。それにより、合金の中の原子の分布状態まで観察可能となった。1990年代に入り、コンピュータの力も借りて、合金中の原子の分布をあたかも目で見るがごとく立体的に再現できるまでになった。ただ、1980年代の走査型トンネル顕微鏡Scanning Tunneling Microscope(STM)の発明・改良により、固体表面の原子の観察にはSTMの利用が多くなり、FIMはAP-FIMの形で分析装置としての利用が主となってきた。
[森川浩志]
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