エジリン輝石(読み)えじりんきせき(英語表記)aegirine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エジリン輝石」の意味・わかりやすい解説

エジリン輝石
えじりんきせき
aegirine
acmite

アルカリ輝石一種。単にエジリンともいう。英名アクマイトacmiteも同義。しばしば結晶は長柱状で、先端が錐(きり)のようにとがっていることがあるので錐輝石(すいきせき)ともいう。エジリン普通輝石と化学組成は連続している。このような外観をもつものはアルカリ火成岩中にみられ、緑色系である。とくに霞石閃長岩(かすみいしせんちょうがん)およびそのペグマタイト中から多量に、かつ巨大な結晶が産する。しかし日本にはこの産状のものはなく、わずかに閃長岩粗面岩、アルカリ玄武岩中に細かいものを産するにすぎない。ほかに、変成層状マンガン鉱床中、ある種の石英片岩中に産する。これらの多くは塊状あるいは粒状結晶で、褐色系である。この産状のものは日本でよくみられる。日本では、静岡県焼津(やいづ)市高草山(たかくさやま)、愛媛県越智(おち)郡岩城島(いわぎしま)、福島県いわき市御斎所(ございしょ)鉱山閉山)などで産出する。ノルウェーから最初にこの鉱物が報告されたため、スカンジナビアの海神エジル(アエギル)Aegirにちなんで命名された。

松原 聰]



エジリン輝石(データノート)
えじりんきせきでーたのーと

エジリン輝石
 英名    aegirine,acmite
 化学式   NaFe3+Si2O6
 少量成分  Ca,Mg,Mn,Al,V
 結晶系   単斜
 硬度    6.5
 比重    3.4
 色     暗緑,褐
 光沢    ガラス
 条痕    灰緑,淡褐
 劈開    二方向に完全
       (「劈開」の項目参照

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エジリン輝石」の意味・わかりやすい解説

エジリン輝石
エジリンきせき
aegirine

アルカリ輝石の一種。 NaFe3+(Si2O6) 。緑ないし黒色の柱状結晶。単斜晶系,比重 3.55~3.60 ,硬度6。ナトリウム,鉄の位置にカルシウム,マグネシウム,アルミニウムなどの置換が進み,(Na,Ca)(Fe3+,Fe2+,Mg,Al)(Si2O6) で表わされるものをエジリン・オージャイト (エジリン輝石質普通輝石) という。エジリン輝石とエジリン輝石質普通輝石の間の組成は連続的である。最初の記載地ノルウェーの海神 Aegirにちなんで命名された。

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