オオハム(その他表記)Gavia arctica; black-throated loon

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオハム」の意味・わかりやすい解説

オオハム
Gavia arctica; black-throated loon

アビアビ科全長 58~77cm。体形アビに似て,がまっすぐで鋭く,脚が長い胴の後方についている。水中で推進力を得やすいが,歩くのは苦手である。夏羽(→羽衣)では頭上から後頸部が灰色,喉が緑の光沢のある黒で,胸と側頸が白黒の縦縞模様になる。背,肩には黒地に四角形の白い斑を連ねたような横縞模様がある。嘴は黒い。冬羽は頭上から背面暗褐色で,前頸部から胸腹部が白い。繁殖地は広くユーラシア大陸のおよそ北緯 50°以北の高緯度地域からアラスカ半島西部に及ぶ。繁殖期以外は南の地中海黒海カスピ海のほか,カムチャツカ半島から日本や中国南部までの沿岸海域か広い湖に渡る(→渡り鳥)。日本では冬季沿岸に少数が渡来する。主食は魚で,貝や昆虫,カエルなども食べる。近縁種のシロエリオオハム G. pacifica は,オオハムに羽色がよく似ているが,嘴が短くて細く,全長約 65cm。

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改訂新版 世界大百科事典 「オオハム」の意味・わかりやすい解説

オオハム (大波武)
black-throated diver[イギリス]
Arctic loon[アメリカ]
Gavia arctica

アビ目アビ科の鳥。全長72cm。中型の水鳥でユーラシア高緯度地方およびベーリング海峡沿いのアラスカで繁殖し,冬季は日本列島沿岸に渡る。北アメリカ高緯度地方からユーラシア最北東部にはシロエリオオハムG.pacificaが繁殖する。この二つは同種にする人と異種にする人とがある。シロエリオオハムのほうが全長65cmと少し小型である。繁殖羽は2種でいくらか異なるが,冬羽はほとんど同じで,野外では識別できない。このため,冬季の2種の分布や関係はまだよくわかっていない。近縁のアビは内湾に多く,オオハムは外海沿岸によく見られる傾向があるようである。アビは極北ツンドラ地帯で繁殖するが,オオハムはそれより南のツンドラあるいはタイガでも繁殖し,広く深めの湖沼を選好する。繁殖期にはつがいでいるが,冬季には大きな群れをもつくることがある。
アビ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオハム」の意味・わかりやすい解説

オオハム
おおはむ / 大波武
diver
loon

広義には鳥綱アビ目アビ科に属するオオハム類の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この類は北半球北部に4種があり、潜水の巧みな魚貝食の水鳥で、陸上歩行はできない。ヨーロッパ、シベリアの北極圏沿岸にある淡水湖岸の草中に営巣する。冬季は温帯に南下し、日本沿岸にも海鳥として渡来するが、太平洋岸ではアラスカ方面からのシロエリオオハムGavia pacificaが多い。種としてのオオハムG. arcticaは全長約72センチメートルで、後頸(こうけい)が灰色、前頸の黒色は緑光沢がある。シロエリオオハムは全長約65センチメートルと小形で、後頸が灰白色、前頸には紫光沢がある。瀬戸内海の鳥持網代(とりもちあじろ)漁法ではこのシロエリオオハムが主体である。

[黒田長久]

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百科事典マイペディア 「オオハム」の意味・わかりやすい解説

オオハム

アビ科の鳥。翼長31cm。アビに似るが大きい。夏羽は背面中央は黒色,両側に幅広い黒白の横帯がある。のども黒い。冬羽は背面は暗褐色,のどは白くなる。ユーラシア〜北米の中部以北で繁殖。日本には冬鳥として全国の海に渡来する。水中にもぐって,巧みに魚をとる。

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世界大百科事典(旧版)内のオオハムの言及

【アビ(阿比)】より

…【長谷川 博】。。…

【アビ(阿比)】より

…空中に浮いてからはくびをのばし,脚を後方につき出し,翼を強くはばたかせ直線状に飛翔(ひしよう)する。 アビ科の鳥は世界に1属5種いて,日本近海ではアビGavia stellata(イラスト),オオハムG.arctica,シロエリオオハムG.pacifica,ハシジロアビG.adamsiiの4種が記録されている。他の1種はハシグロアビG.immerで,北アメリカに分布する。…

※「オオハム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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