楯状火山(読み)タテジョウカザン(英語表記)shield volcano

デジタル大辞泉 「楯状火山」の意味・読み・例文・類語

たてじょう‐かざん〔たてジヤウクワザン〕【×楯状火山】

火山形態の一。粘性のきわめて小さい玄武岩質の溶岩からなる、楯を伏せたような形の傾斜の緩やかな火山。ハワイマウナロア火山など。アスピーテ

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精選版 日本国語大辞典 「楯状火山」の意味・読み・例文・類語

たてじょう‐かざんたてジャウクヮザン【楯状火山】

  1. 〘 名詞 〙 流動性に富む溶岩が静かに流れ出してできた傾斜のゆるやかな火山。火山体の断面は、楯を伏せたように扁平霧ケ峰、東吾妻山など。アスピーテ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「楯状火山」の意味・わかりやすい解説

楯状火山
たてじょうかざん
shield volcano

火山噴火に伴い,粘性の小さい玄武岩質の溶岩が広範囲に流れ,かつ多層に重なってできた火山地形。かつての戦士や騎士が使用した楯(盾)を伏せたような形をしていることから,この名がついた。山体は裾野が大きく広がり,標高は比較的低いものが多く,傾斜はなだらかで 6°を上回ることはほとんどない。頂上付近は大きな山体に比して小さめの火口カルデラ凹地になっているのが一般的である。楯状火山は一つの活動期(一輪廻)の連続的な噴火で短期間に形成されることもあるが,大規模なものになると,約 100万年間に及ぶ数十万回の噴火を経てつくられる。典型例として,ハワイ島マウナロアマウナケアアイスランドの火山がある。マウナロアは細長い形をしているため山頂火口だけでなく,2ヵ所の割れ目(→割れ目噴火)からも溶岩が流れ出ている。またマウナケアとともに海抜が 4100m以上あり,海底からの標高(9000m以上)や体積の両面において世界最大の山塊である。一方,アイスランドの火山は一輪廻の単成火山が多く,規模はハワイ島の諸火山に比べ小さい。

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改訂新版 世界大百科事典 「楯状火山」の意味・わかりやすい解説

楯状火山 (たてじょうかざん)
shield volcano

粘性のきわめて小さい玄武岩質の薄い(30cm内外)溶岩流が何回も噴出して生じた火山で,西洋の楯を伏せたような形態をもつ。火山砕屑物は1%以下と少ない。次の3型がある。アイスランド型は1輪廻の中心噴火で生じ,比高1km以下と小型で,3~5度の緩傾斜な山腹をもつ。ハワイ型は中心火口と放射状割れ目からの多輪廻噴火で生じ,比高4km内外と大型で,傾斜は10度以下。ガラパゴス型は中心火口とそれに同心円的ならびに放射状の割れ目からの多輪廻噴火で生じ,比高1.5km内外,山腹傾斜20度内外で,亀背状の形態をもつ。後2者はしばしばカルデラをもつ。
火山
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岩石学辞典 「楯状火山」の解説

楯状火山

aspite: シュナイダーの分類で,火山の断面形などの形態,構成物質の割合などに基づく命名である[Schneider : 1911].現在はあまり使われないが,アスピーテに相当する火山体の名称は楯状火山(shield volcano)として引き継がれている.熔岩火山(lava volcano)も同じ.ギリシャ語のaspisは楯の意味.
shield volcano: 流動性が著しい熔岩が静かに流出した大型の火山体で,底面が大きく山体の傾斜が10度以下程度の緩傾斜の火山体を作り,通常は頂上に火口がある.連続した熔岩流と小規模な火山砕屑物の堆積によって構成されている[Daly : 1933].巨視的にみると昔の楯の形に似ている.中央火口から放射状にできた割れ目から多量の熔岩が流出して山体ができたハワイ型と,中心火口から熔岩が流出してできたアイスランド型に区別される.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「楯状火山」の意味・わかりやすい解説

楯状火山(たてじょうかざん)
たてじょうかざん

おもに流動性に富む溶岩(玄武岩~安山岩)の流出の繰返しによって形成された火山で、ごく緩傾斜(10度以下)の火山。西洋の古代戦士が使用した楯を伏せたような形をしているので楯状火山とよばれる。盾状とも書く。ハワイには玄武岩質の壮大なものが多く、中心火口のほか、そこから放射状に伸びた割れ目からも溶岩を流出する。日本に規模の大きな楯状火山は存在しない。

[諏訪 彰・中田節也]



楯状火山(じゅんじょうかざん)
じゅんじょうかざん

楯状火山

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百科事典マイペディア 「楯状火山」の意味・わかりやすい解説

楯状火山【たてじょうかざん】

アスピーテとも。火山を形によって分類した場合の一つ。非爆発性の中心性噴出によりできる火山体で,粘度の小さい玄武岩質溶岩が遠くまで流出し底面積が広く傾斜のゆるい(山頂近くでも10°以下,裾野(すその)は2°〜3°)楯を伏せたような形をとる。ハワイの諸火山が好例。
→関連項目火山

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世界大百科事典(旧版)内の楯状火山の言及

【火山】より

…傾斜は10度以下で,山頂に火口のある場合とない場合があり,陥没によって生じた陥没火口の見られる場合もある。これを楯状火山shield volcanoという。これには中心噴火による場合と,長大な割れ目から噴出する割れ目噴火による場合がある。…

【火山】より

…ふつう,比高0.5km以下,体積0.5km3以下である。ただしアイスランド型楯状火山は体積15km3にも達するものがある。複成火山は,休止期をはさんで数万年ないし数千万年をかけて,数百回ときには数千回の噴火を行ってできる火山で,一般に大型である。…

※「楯状火山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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