クラッチ(読み)くらっち(英語表記)clutch

翻訳|clutch

デジタル大辞泉 「クラッチ」の意味・読み・例文・類語

クラッチ(clutch)

原動軸から従動軸に、動力を伝達あるいは遮断する装置。かみ合いクラッチ摩擦クラッチなどがある。連軸器。
クラッチペダル」の略。
クラッチバッグ」の略。
起重機の、つめ。

クラッチ(crutch)

松葉杖。また、歩行を補助する杖状の器具。
ボートげんに取り付けた、U字形のオール受けの金具。

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精選版 日本国語大辞典 「クラッチ」の意味・読み・例文・類語

クラッチ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] clutch )
  2. 駆動軸の継手の一つ。原動軸と従動軸を、必要に応じて連結あるいは遮断する装置。特に自動車のエンジンの動力を車輪に連結したり遮断したりするペダル。クラッチペダル。連軸器。連動器。〔外来語辞典(1914)〕
    1. [初出の実例]「とっさに彼はクラッチを切り、ブレーキをかけた」(出典:風(1946)〈山本有三〉二つの事件)
  3. 起重機のつめ。

クラッチ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] crutch ) ボートの両舷側についている、オールを支えるふたまたの金具。
    1. [初出の実例]「櫂(かひ)も何も入れて、クラッチ(鐶(くゎん))も付けてある」(出典:暑中休暇(1892)〈巖谷小波〉三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラッチ」の意味・わかりやすい解説

クラッチ
くらっち
clutch

2軸を連結する継手の一種。軸と軸を接続したり、接続を断ったりするのに使われる。原動機の軸と従動軸との間にクラッチを入れておくと、原動機を停止させることなく従動軸を静止させることができるので、速度を変えるために歯車を入れ替えたり、ベルトを掛け替えたりすることが可能である。どの形式のクラッチでも、軸が静止していても動いていても、軸と軸との連結を断つことができる。しかし、軸と軸とを接続する場合には静止状態か、あるいはごく低速度のときだけ可能なものと、動いているままで接続できるものとがある。前者の例はかみ合いクラッチ、後者の例は摩擦クラッチである。

[中山秀太郎]

かみ合いクラッチ

互いにかみ合うつめをもったフランジを軸の端に取り付け、一方は軸に固定し、他方はフェザーキーで軸にはめ、軸上を軸方向に移動できるようにしたクラッチ。静止状態で移動できるつめを動かして他方のつめをかみ合わせ、軸を回転する。角形のつめならばどちらの方向にも回転を伝えることができるが、三角形状のつめをもっているものでは一方向の回転だけが伝えられ、逆方向に回すことはできない。

[中山秀太郎]

摩擦クラッチ

原動軸と従動軸とにフランジを取り付け、そのフランジを互いに押し付けて接触面の摩擦により回転を伝えるクラッチ。押し付ける板が平板のものを板クラッチ、円錐(えんすい)形のものを円錐クラッチ、リムからなるリムクラッチなどがある。押し付けるときの力を加減することによって任意の速度で従動軸に回転を伝えることができる。従動軸に著しく大きな負荷がかかったときは、摩擦面が滑り従動軸は停止するので、事故防止にも役だつ。いずれも回転を断続するときに衝撃を少なくできる長所がある。摩擦面には摩擦を増すために石綿織物などを張り付ける。

[中山秀太郎]

流体クラッチ

流体(通常は油)を介して回転を2軸間に伝えるクラッチ。密閉した容器内に油を満たし、2軸の先端に羽根車を取り付けて、密閉容器内に羽根車を相対して入れる。一方の軸を回転させると、羽根車の回転により油も回転する。油の回転により他方の羽根車が回転するので、一方の軸から他方の軸へ回転を伝えることができる。このクラッチは騒音や振動がなく、運動の開始・停止が比較的早くかつ確実にできる長所があり、自動車などに使用されている。

[中山秀太郎]

自動車のクラッチ

自動車の場合は、エンジンを常時回転させておき、走り出すときにエンジンのクランク軸を、車輪を回転させる軸に接続して自動車を動かす。クラッチはつねに接触しており、クラッチペダルを踏むと油圧の作用でクラッチが離れる。クラッチの踏みぐあいでクラッチ板の摩擦力が加減される。自動車を止めるときには、この2軸内の関係を遮断する。走行中は車の速度をいろいろ変えるが、それにはクランクシャフトと車輪とのかみ合わせ歯車を変える。このような動力伝達には普通、摩擦クラッチの一種の単板乾式円板クラッチが用いられる。このほかには、電磁力を利用した電磁クラッチ流体クラッチなども使用されている。

[中山秀太郎]


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改訂新版 世界大百科事典 「クラッチ」の意味・わかりやすい解説

クラッチ
clutch

例えば自動車の運転におけるように,一般に機械システムにおいて,原動側(エンジン,電動機など)より従動側(車輪など)に回転運動を回転軸を通して伝達している場合,この動力伝達を必要に応じて断続したいことがしばしば起こる。この目的で用いられる機械要素をクラッチという。クラッチの利点は,原動機の運転をいちいち止めることなく,原動軸が回転したままの状態で従動軸の回転を止めたり,速度を切りかえるための歯車の入れかえなどが容易にできることにある。クラッチの着脱は外部から操作できるのが通例であるが,一方向クラッチのように回転軸の回転方向によりクラッチが着脱されるもの,遠心クラッチのように回転軸の回転速度が一定の限度を越えるか越えないかによって着脱されるものもある。

 クラッチの種類は多いが,そのうち主要なものはかみ合いクラッチおよび摩擦クラッチである。かみ合いクラッチは,原動軸,従動軸のそれぞれに,いくつかつめをもったブロックを取りつけたもので,外部からの操作により両ブロックを軸方向に接近させ,つめをかみ合わせて2軸を連結する。構造は非常に簡単であるが,軸と軸との連結は静止時か回転速度が十分に低いときのみに限られる。摩擦クラッチは,外部からの操作により原動軸および従動軸に取りつけた摩擦面を接触させて,摩擦力により2軸を連結するクラッチで,静止時,回転時を問わず連結できることから,現在,もっとも広く使用されている。摩擦クラッチのうち代表的なものは,円板を摩擦面とする円板クラッチdisc clutchで,1組の摩擦板を用いる単板式と多数組の摩擦板をもつ多板式とがある。着脱の操作には,摩擦面がばね力により常時押しつけられていて連結状態にあり,必要に応じて外部からレバー,油圧,電磁力などにより切断する方式(自動車用)と,逆に摩擦面が常時離れていて,必要なときにのみ,てこ,油圧などによって押しつけられて連結する方式とがある。

 このほか特殊なものとして,わずかなすきまで対向させた1対の円板などの間に磁性体粉を入れておき,磁力を作用させて回転を伝える電磁粉体クラッチ,同じく1対の円板などの間に渦電流を作用させて回転を伝える渦電流クラッチのように原動軸と従動軸が固体接触しない方式のものもあり,流体を利用したトルクコンバーター流体継手も一種のクラッチといえる。
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百科事典マイペディア 「クラッチ」の意味・わかりやすい解説

クラッチ

回転している原動軸から必要に応じて従動軸にトルクを伝達して従動軸を回転させるための機械要素。かみ合いクラッチは金属のつめとつめとをかみ合わせてトルクを伝達する。着脱時の衝撃が大きいのが欠点。摩擦クラッチは原動軸とともに回転する摩擦板を従動軸側の摩擦板に押しつけ,摩擦力によりトルクを伝達する。操作力は人力,電磁力,油圧,空気圧など。構造が比較的簡単で,着脱時の衝撃が少ない利点があり,自動車,工作機械などに広く利用されている。渦(うず)電流クラッチは原動軸とともに回転する電磁石につれて,従動軸側の金属板が回転する。伝達トルクの制御は電磁石のコイルに流す電流の制御による。また流体継手によるものは流体クラッチと呼ばれる。
→関連項目オートクラッチ軸継手自動変速装置ボートレース摩擦伝動

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラッチ」の意味・わかりやすい解説

クラッチ
clutch

軸と軸を接続し,原動機の回転を伝達する継手の一種で,駆動中に回転を断続できるものをいう。断続できないものは軸継手という。次の4形式に大別される。 (1) かみあいクラッチ 軸端部にそれぞれ爪または歯の部分を設け,両者を噛み合せて伝動するもの。 (2) 摩擦クラッチ 各軸端に円板や円錐部品を取付けて接触させ,接触面の摩擦力で伝達する。自動車用クラッチはこの形式である。 (3) 電磁クラッチ 電磁力を利用するもの。 (4) 流体クラッチ 各軸にポンプタービンを設けて組合せ,流体を介して動力を伝達する (→流体継手 ) 。これらのなかで,摩擦クラッチが最も一般的で,摩擦面が乾燥状態で作動する乾式,摩擦面が給油,強制潤滑状態などで作動する湿式とがある。

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デジタル大辞泉プラス 「クラッチ」の解説

クラッチ〔メンフィス・グリズリーズマスコット〕

《Clutch》北米、NBA加盟のプロ・バスケットボール・チーム「メンフィス・グリズリーズ」のマスコット・キャラクター。灰色のクマがモチーフ。1995年登場。

クラッチ〔東北楽天マスコット〕

日本プロ野球チーム、東北楽天ゴールデンイーグルスの公式マスコット。背番号10。ワシがモチーフ。

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世界大百科事典(旧版)内のクラッチの言及

【軸継手】より

…これらの機械と機械とを組み合わせて使用する場合には,軸と軸とを連結する必要があるが,この軸どうしの連結のために使用される機械要素を総称して軸継手という。軸継手は,軸と軸とをひとたび結合すると,分解,修理などの理由による場合のほかは結合を解かない永久軸継手と,必要に応じて軸と軸との間の連結を断続するクラッチとに分類される。狭い意味の軸継手は,永久軸継手のことを意味する。…

※「クラッチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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