レバノン、ベイルートの南南西約40キロメートル、地中海に面する港湾都市。旧称シドンSidon。人口14万9000(2003推計)。シドンの名は、紀元前三千年紀後半のバビロニアの史料にさかのぼり、ウガリト文書、アマルナ文書、『旧約聖書』にみえ、下って『新約聖書』には、イエスが同地を訪ねて説教したことや、使徒パウロがローマへ行く途中寄港したことと関連して言及されている。同地は古代のフェニキアの最古の都市の一つであった。ガラス、染色工芸などに優れ、前二千年紀後半には地中海、エーゲ海交易で繁栄し、しばしば姉妹都市ティルスと覇権を競った。ヘレニズム時代にはガラス工業の中心地の一つとして栄え、前1世紀ごろ同地で吹成法によるガラス器の製法が発明された。諸国に征服され服属しながらも、その交易の拠点としての重要性は十字軍時代まで続き、沿岸に城塞(じょうさい)も築かれた。17世紀以後はトルコの支配下にあって商業都市としての繁栄を取り戻した。地下墓室から発見されたアレクサンドロス大王の浮彫りのある石棺はとくに有名である。
1963年以降の発掘調査によってフェニキア・ローマ時代の遺構・遺物が発見されている。1950年からサウジアラビアのダーラン油田とパイプラインで結ばれ、ヨーロッパへの石油の積出し港として重要な役割を果たしている。柑橘(かんきつ)類、バナナなどの農産物の集散地でもある。
[高橋正男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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