日本大百科全書(ニッポニカ) 「スペンス」の意味・わかりやすい解説
スペンス
すぺんす
Andrew Michael Spence
(1943― )
アメリカの経済学者。ニュージャージー州モントクレア生まれ。プリンストン大学卒業後、1972年にハーバード大学で博士号を取得し、ハーバード大学を経て1990年からスタンフォード大学教授。1981年にジョン・ベーツ・クラーク賞を受賞し、2001年にはG・A・アカロフ、J・E・スティグリッツとともに、「伝統的な農産物市場から現代の金融市場に適用できる、情報の非対称性という概念を打ち立てた」としてノーベル経済学賞を受賞した。
1970年代に、情報の非対称性(偏り)によって、正確な情報を得られない経済主体は、その情報と関連の深い情報をシグナルとして活用するという「シグナリング仮説」を打ち立て、とくに労働市場に適用した。労働市場における情報機能としての教育に注目し、教育が労働者の能力を示すシグナルの役割を果たすことを強調する。能力と学歴に相関関係があるのならば、企業が教育水準の高い者に高給を支払うのも、学生が高学歴を得るために学校へ進学するのも合理的であるということを実証した。企業が証券市場などに対し、いかに有効に利益分配をすべきかという問題などにも応用された。
[金子邦彦]