改訂新版 世界大百科事典 「ハチクイ」の意味・わかりやすい解説
ハチクイ (蜂喰)
Australian bee-eater
Merops ornatus
ブッポウソウ目ハチクイ科の鳥。ハチクイは,rainbow-birdという英名もあるように美しい鳥である。全長約23cm。全体に青色を帯びた緑色で,のどと頭上から後頸(こうけい)部は黄褐色,過眼線と胸輪は黒い。尾羽は黒く,中央羽2枚は長く,とくに雄では長くのびている。オーストラリアのほぼ全域で繁殖し,その大部分はニューギニア,スンダ列島,ソロモン諸島などに渡り越冬する。日本では,1904年に沖縄県の宮古島でただ1羽採集された記録がある。
ハチクイ科Meropidaeの鳥は,細長いくちばしをもち,その名まえのように,飛行中のハチ類を好んでとって食べる。ハチクイ属Merops,チャムネハチクイ属Nyctyornis,セレベスハチクイ属Meropogonの3属24種からなり,旧世界の温帯から熱帯に分布する。とくに中東からアフリカにかけて種の数が多い。温帯で繁殖している種は,暖・熱帯に渡り越冬している。全長25~35cm。くちばしは細長く,少し下方に曲がっている。体は全体としてスマートで,尾羽は比較的長く,角尾か中央羽2枚がかなり長い。羽色は雌雄同色で,赤色,橙色,黄色,緑色,青色,紫色,黒色など鮮やかなものが多い。脚は短く,翼は長めである。飛行力にひいで,飛び回って各種の昆虫類を追っかけてくわえとったり,あるいは枝上に止まって獲物を見張り,さっと飛び立って近くに飛んでくる昆虫をとらえる。このため,主として灌木の多い草地や林縁部に生息している。ハチクイ類は群れで生活していることが多く,繁殖期には川岸の土手や崖地に数十~数百つがいが集まり,各つがいが地面にトンネルを掘って営巣する。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報