ハチクマ(読み)はちくま(英語表記)honey buzzard

翻訳|honey buzzard

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハチクマ」の意味・わかりやすい解説

ハチクマ
Pernis ptilorhynchus; honey buzzard

タカタカ科全長は雄 56cm,雌 62cm。背面は暗褐色,顔は灰褐色で,黒い顎線がある。下面は個体によって違いがあるが,淡褐色の鳥が多く,胸に縦斑がある。尾には黒い横帯がある。南北に別の集団があり,北部はシベリア南部から東アジアカムチャツカ半島,日本に,南部はインドから東南アジア繁殖分布する。北部集団は南の繁殖域に渡って越冬する。日本には夏鳥(→渡り鳥)として 5月頃北海道本州中部以北,佐渡島に渡来し,山地森林で繁殖する。スズメバチやアシナガバチの幼虫や蛹(さなぎ)を特に好み,地中ハチの巣を見つけると掘り出して食べる。そのほか昆虫の幼虫類やカタツムリを常食とし,まれに小型の哺乳類やカエルなどもとる。「ぴょー」と鳴く。9月下旬からの秋の渡りでは,鹿児島県佐多岬を通って南下するか,長崎県五島列島を経て大陸へ渡り南下する二つの経路があることが知られている。春の渡りでは朝鮮半島から南下してくる。(→タカ猛禽類

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改訂新版 世界大百科事典 「ハチクマ」の意味・わかりやすい解説

ハチクマ (蜂角鷹)
honey buzzard
Pernis apivorus

タカ目タカ科の鳥。ハチ類を食べるクマタカ(熊鷹)に似た鳥の意。ユーラシア大陸の亜寒帯以南とマレー諸島,フィリピンなどで繁殖し,高緯度地方で繁殖するものは冬季南方に渡る。全長約58cmの大型のタカで,地中に巣をつくるスズメバチ類の幼虫やさなぎをおもに食べる。このためくちばしはタカ類としては小さく,顔の羽毛はハチに刺されぬようにかたいうろこ状になっている。背面は黒褐色だが,下面は黒褐色のものから淡色のものまで個体変異が大きい。顔は灰色である。上昇気流にのって,トビのように帆翔(はんしよう)することが多く,羽ばたきもゆったりとしている。飛翔中に,よく〈ピョー,ピョー〉と鳴く。平地から亜高山にかけての森林にすみ,秋には愛知県伊良湖岬や九州南端で,サシバにまじって南下するものが多く見られる。木の枝に小枝で大きな巣をつくり,1腹2個の卵を産む。雛は初めハチの子で養われ,しだいにカエルなども与えられる。ハチクマの仲間は世界に2属5種があり,ヨーロッパからニューギニアまで分布している。どの種もハチの子を好んで食べる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハチクマ」の意味・わかりやすい解説

ハチクマ
はちくま / 蜂熊
honey buzzard
[学] Pernis apivorus

鳥綱タカ目タカ科の鳥。ユーラシア中部に分布する。日本には夏鳥として渡来し、四国以北で繁殖する。全長約57センチメートルでトビよりやや小さい。体の下面の色彩には変化が多いが、上面は褐色で、尾に太い横帯があるだけである。低山から山地の林にすみ、とくにハチの幼虫を好むが、カエルやヘビもとらえる。大木枝上に営巣する。秋になると群れをつくって、同じタカ科のサシバとともに渡りをする。

高野伸二


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百科事典マイペディア 「ハチクマ」の意味・わかりやすい解説

ハチクマ

タカ科の鳥。翼長40cm。全身褐色だが,個体によって羽色に変異が大きい。東アジア北部で繁殖し,東南アジアで越冬する。日本では北海道と本州で繁殖。丘陵地から低山の森林にすみ,高木に巣を作る。ハチの巣を襲って卵,幼虫,成虫,蛹(さなぎ)などを食べる特異な習性があり,ほかにカエルやトカゲ,ネズミなども食べる。愛知県伊良湖岬,鹿児島県佐田岬など渡りのコースでは,秋に群れで渡っていくのが観察される。準絶滅危惧(環境省第4次レッドリスト)。
→関連項目タカ(鷹)

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世界大百科事典(旧版)内のハチクマの言及

【タカ(鷹)】より

…この鳥をミサゴ科として独立させる説もある。トビ類には17属約30種があり,ハチクマとトビが日本に分布している。ハチクマはおもにクロスズメバチ(ジバチ)の幼虫やさなぎを食べ,トビは腐肉食性が強い。…

※「ハチクマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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