改訂新版 世界大百科事典 「ハナドリ」の意味・わかりやすい解説
ハナドリ (花鳥)
flowerpecker
スズメ目ハナドリ科Dicaeidaeの鳥の総称。この科は,ホウセキドリ類も含めて,7属約58種に分類される。大部分の種は全長約10cm以下の小鳥で,雄はふつう頭,胸,背中,腰などに赤色,黄色,青色,黒色などの羽毛をもち,はでな色をしている。一般に雌雄は異色で,雌と少数の雌雄同色のものは,緑色やオリーブ褐色を主としたじみな色である。くちばしは比較的短く,じょうぶで,先がとがっている。脚もじょうぶである。尾は短い。
インドおよび中国南部からオーストラリアまで分布する。多くのものは開けた林やジャングルの樹冠部につがいか小群ですみ,活発に動き回りながら,花みつ,花に集まる昆虫類,果物,漿果(しようか),種子などを食べている。ほとんどの種が留鳥だが,花を求めて短距離の移動をする。ハナドリ類は花で採食することが多いので,花粉の媒介に役だっている。また,種によっては植物(とくにヤドリギ)の種子を媒介している。典型的なハナドリ類の舌は花みつ食に適応しているが,胃は筋肉質で,固い昆虫類を食べるのにも適応している。飛び方はまっすぐに直線的で,かなり速い。巣はわん形か枝からつり下がった袋状で,枯茎や植物の繊維でつくられている。しかし,ホウセキドリ類は樹洞や土手に掘ったトンネルの奥に営巣する。卵は,ハナドリ属では白地に斑点が散在し,1腹2卵。雌のみが抱卵し,雌雄とも雛を育てる。鳴声はチッ,チッと聞こえるような声で,とくに飛行中によく出す。種によってはさえずるものもあるが,さえずりは比較的じみである。
代表的な属はハナドリ属Dicaeumで,ハナドリ科の59種のうち39種を含んでいる。ヒマラヤおよび中国南部からオーストラリアまで分布しているが,フィリピンとニューギニアに特産種が多い。キムネハナドリ属Prionochilusはハナドリ属に似た鳥で,マレー半島からフィリピン,ボルネオにかけて6種が生息している。残りの5属は,4属がニューギニアとその周辺の島々に,1属ホウセキドリ属Pardalotusがオーストラリアとタスマニアに分布している。
執筆者:森岡 弘之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報