日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメコダイ」の意味・わかりやすい解説
ヒメコダイ
ひめこだい / 姫小鯛
princess perch
[学] Chelidoperca hirundinacea
硬骨魚綱スズキ目ハタ科ヒメコダイ亜科に属する海水魚。南西諸島を除き、太平洋側では相模(さがみ)湾から、日本海側では若狭(わかさ)湾から九州の南岸、朝鮮半島南岸、台湾南部、南シナ海南部に分布する。体は延長し、体高は低くわずかに側扁(そくへん)するが、前部の横断面はほぼ円筒形に近い。目は大きく、眼径は吻長(ふんちょう)よりも長い。上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)下に達する。下顎は上顎よりも長く突出する。上下両顎、鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)、口蓋骨に絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の縁辺には30本ほどの鋸歯(きょし)がある。側線は鰓孔上端から背側面を尾びれ基底まで直走する。両眼間隔域の鱗(うろこ)は目の前縁を結ぶ線まで達する。尾びれの後縁は半月状に湾入し、上部の軟条は成長に伴って伸長する。体色は鮮紅色で、中央部に幅の広い黄色縦帯がある。胸びれの後半部の上方に楕円(だえん)形の濃赤色の斑紋(はんもん)があり、ほかに体の背側面にも小さい白色斑がある。尾びれの上葉は黄色で、下葉は紅色。水深80~200メートルの沿岸、大陸棚縁辺や斜面の砂泥底にすみ、おもに甲殻類や魚類を捕食する。産卵期は夏季と推定されている。最大体長は20センチメートルほどになるが、10~15センチメートルのものが多い。冬季、底引網によってかなり漁獲され、総菜用、または練り製品の材料にされる。
本種はヒメコダイ属に属するが、日本のヒメコダイ属は本種以外にホシヒメコダイとミナミヒメコダイC. margaritiferaの2種が知られている。本種はミナミヒメコダイに似るが、ミナミヒメコダイは両眼間隔域の鱗が中央部までしか覆われないことなどで区別できる。
[片山正夫・尼岡邦夫 2020年6月23日]