ビゼンクラゲ(読み)びぜんくらげ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビゼンクラゲ」の意味・わかりやすい解説

ビゼンクラゲ
びぜんくらげ / 備前水母
[学] Rhopilema esculentum

腔腸(こうちょう)動物門ハチクラゲ綱根口(ねくち)クラゲ目ビゼンクラゲ科に属する海産動物。傘は半球状あるいはそれより高く、直径25~30センチメートルほどであるが、ときにはさらに大形となる。寒天質はきわめて厚く堅い。全体は青藍(せいらん)色ないし淡青色触手乳白色を帯びることが多い。傘縁に8個の感覚器があり、また多数の縁弁に分かれている。下傘の口部は寒天質が厚く円柱状で、そこに8個の大形の肩板があり、それらの上部には多くひだがある。下傘から垂れ下がる口腕は8本で比較的短く、おのおの3翼に分かれ、それら翼は複雑なひだをつくっている。腕や肩板上のひだの間からは多数の小触手や棒状付属物がみられる。下傘の各間軸には円形生殖腺(せん)下腔があり、各1個の小さな寒天質の突起をもつ。また、下傘には環状筋が発達している。

 本種は、古来瀬戸内海児島(こじま)湾に多く産し、そのためビゼンクラゲの名を得たが、実際には本州中部より九州までの沿岸に広くみられるものであり、また中国沿岸からも知られている。このクラゲは古くから食用とされ、江戸時代には岡山藩から幕府へ毎年献上されていたという。新鮮なものを石灰とみょうばん水に浸(つ)け、それを乾燥あるいは塩漬けにして保存し、使用するときに水にもどして食用に供する。中国料理に広く用いられる。

[山田真弓]

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改訂新版 世界大百科事典 「ビゼンクラゲ」の意味・わかりやすい解説

ビゼンクラゲ
Rhopilema esculenta

ハチクラゲ綱ビゼンクラゲ科の腔腸動物(刺胞動物)。有明海,瀬戸内海,黄海,東・南シナ海に分布する。〈備前〉の名は明治年間に岡山県児島湾でこのクラゲの小規模な漁を行い,食用にしていたことによる。俗称アカクラゲ(有明海沿岸地方による)。傘は半球状で,直径30cmほどであるが,1mくらいになるものもある。寒天質は厚くて硬く,全体が濃褐色,紫紅色,淡青色や乳白色など変異がある。傘の縁には触手はないが,8個の感覚器がある。8本の口腕はそれぞれ三つの翼に分かれ,その間に多くの棒状の付属器と小触手がついている。傘の下面中央に口はなく,口腕の中を通っている細い管から水とともに入ってきたプランクトンを食物とする。食用クラゲ中,もっとも漁獲量が大きく重要な種類である。4~5月に中国沿岸,有明海の六角川河口付近で発生し,8月頃には直径30cmほどになる。ただし,まだこの種の有性生殖後のポリプ時代の形態や生殖場所は不明で,生活史は十分にわかっていない。傘を塩とミョウバンに漬けて加工し,食用にするほか,タイやカワハギ類の釣餌に用いる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビゼンクラゲ」の意味・わかりやすい解説

ビゼンクラゲ
Rhopilema esculenta

刺胞動物門鉢虫綱根口クラゲ目ビゼンクラゲ科。傘は半球状で,ゼラチン質は厚くて硬く,通常直径 30cmほどであるが,ときに 50cmに達するものもある。全体青藍色または淡青色で,触手は乳白色である。傘の縁は多数の弁に分かれ,感覚器が 8個ある。口腕は 8本で比較的短いが,それぞれ 3部に分かれ,多くのひだがある。小触手や棒状の付属物が多数ある。本州中部から瀬戸内海,九州などに分布し,中国沿岸からも知られている。傘を石灰とミョウバン水に漬け,塩蔵してから食用にする。(→クラゲ刺胞動物鉢虫類無脊椎動物

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百科事典マイペディア 「ビゼンクラゲ」の意味・わかりやすい解説

ビゼンクラゲ

ハチクラゲ類ビゼンクラゲ科の腔腸(こうちょう)動物。傘(かさ)は半球状で直径20〜30cm,ときに100cmに及ぶ。寒天質は厚くて堅い。8本の口腕には多くの付属器と触手がある。有明海,瀬戸内海,黄海,東・南シナ海に産する。かつて瀬戸内海でたくさんとれた。食用のほか,タイやカワハギ類の釣餌にする。
→関連項目クラゲ(水母)ハイチョー

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栄養・生化学辞典 「ビゼンクラゲ」の解説

ビゼンクラゲ

 [Rhopilema esculenta].ビゼンクラゲ目ビゼンクラゲ亜目ビゼンクラゲ属のクラゲ.食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のビゼンクラゲの言及

【クラゲ(水母)】より

… ヒドロ虫綱の中でバレンクラゲカツオノエボシ(イラスト)などのクダクラゲ(管水母)類は食物を消化する栄養ポリプ,刺胞をもった触手で餌をとらえる指状ポリプ,生殖を行う生殖ポリプなど,それぞれ役目の異なっているポリプが一つの気胞体の下に集合して浮遊生活をしている。ハチクラゲ類は一般に大型で,ビゼンクラゲでは直径が1m以上にもなる。傘の中には半透明な中膠が厚く充満しているが,タコクラゲなどでは中膠内に藻類が共生していて褐色になっている。…

※「ビゼンクラゲ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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