ファラデー効果(読み)ふぁらでーこうか(英語表記)Faraday effect

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファラデー効果」の意味・わかりやすい解説

ファラデー効果
ふぁらでーこうか
Faraday effect

磁場中に置かれた透明な物質(強磁性体を含む)に、磁場(または磁化)の方向に直線偏光を透過させたとき、偏光面が回転する効果。1845年イギリスのファラデー鉛ガラス(=フリントガラス)について発見した。種々の磁気光学効果一種であるとともに、旋光性の一種でもある。しかし自然旋光性の場合と異なり光の逆行性がない。試料を透過した直線偏光が、(進行方向に対して)偏光面を右回りにθだけ回転したとすれば、その透過光を鏡で反射させて逆向させると、戻って来た光は偏光面が同じ方向に2θだけ回転している。つまり、磁場方向を逆転させると透過光の偏光面の回転方向も逆になるのである。偏光面の回転角θは、試料の厚みlと磁場の強さHに比例しθ=VlHと表される。比例定数Vベルデ定数とよばれ、回転方向により符号をつける。ベルデ定数物質定数であるが、光の波長、温度にも依存する。実は、この関係が成立するのは、鉛ガラスや水晶などの反磁性体と磁場が弱いときの常磁性体に対してである。水晶では、ナトリウムD線に対して1テスラ(記号T。1テスラ=1万エルステッド(Oe))の磁場のもとで1センチメートル当り偏光面は2度46分回転する。強磁性体では大きなファラデー効果を示すが、この場合には強磁性体の磁化が寄与している。鉄の薄膜(厚さ30ナノメートル、数百原子層)で回転角は約1度にも達する。

 旋光性の現れる原因は、右回りと左回りの円偏光光速屈折率)が物質内で異なるからである。現象論的には物質の磁場中での誘電率性質に帰着される。その誘電率を求めるためには、量子力学的な扱いが必要になるが、直感的なイメージとしては次のように考えてよいであろう。物質内の電子が磁場から受ける影響(力)は、電子運動の回転方向によって異なる。その差が左右の円偏光の光速の差として現れる。磁場を逆転すれば、電子運動が磁場から受ける影響が逆になるので、ファラデー効果における逆行性がないことに対応する。

 ファラデー効果を利用した光アイソレータや光サーキュレータなども実用化されている。ファラデー効果は(当然であるが)マイクロ波にも現れるので、マイクロ波回路のアイソレータやサーキュレータにも応用されている。

[宮台朝直]

『佐藤勝昭著『光と磁気』(2001・朝倉書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ファラデー効果」の意味・わかりやすい解説

ファラデー効果
ファラデーこうか
Faraday effect

磁気旋光の1種でファラデー回転ともいう。磁場内に置かれた等方性物質が旋光性を示す現象。 1845年 M.ファラデーが鉛ガラスについて発見した。強さ H の磁場中に置かれた厚さ l の試料を透過したとき,入射直線偏光の偏光面は角度 θ=VlH だけ回転する。 V は比例定数でベルデの定数という。電波を一方向だけに通すアイソレータや,磁気光学的記録の読取りに利用されている。また,光の電磁理論の形成のほか,分子構造や化学式の決定に役立っている。

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