フィッショントラック法(読み)フィッショントラックホウ(英語表記)fission track dating method

デジタル大辞泉 「フィッショントラック法」の意味・読み・例文・類語

フィッショントラック‐ほう〔‐ハフ〕【フィッショントラック法】

放射年代測定の一。鉱物中に含まれるウラン238崩壊すると、高エネルギー核分裂片が生じ、火山ガラスジルコンの結晶中に飛跡を残す。この現象を利用し、飛跡の数から鉱物の年代測定できる。数万年から数億年の年代測定が可能。フィッショントラック年代測定法FT法

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改訂新版 世界大百科事典 「フィッショントラック法」の意味・わかりやすい解説

フィッショントラック法 (フィッショントラックほう)
fission track dating method

ウランの放射性同位体238Uの自発核分裂崩壊定数λsf=7~8×10⁻17/年)で生じる飛跡(フィッショントラック)の数を顕微鏡下で計数し,Uの量との関係から年代を求める方法。数万年前から数億年前の年代測定に有効。単位面積中の飛跡の数ρsは単位体積試料中の238Uの初期の量と年代t0に比例する。全飛跡のうち計数される飛跡の割合(計数効率)を238αとすると,ρs=(λsft0)・238U・238αとなる。一方,この試料とUの含有量のわかった標準試料を同時に熱中性子で照射し,235Uの核分裂によって生じる飛跡の数を比較することにより,試料中の235Uの現在量がわかり,さらに,天然に存在するウランの同位体比238U/235U=137.8を用いて試料中の238Uの現在量を知ることができる。前述のρsから238Uの崩壊量が知られているので,年代t0が計算できる。飛跡はケイ酸塩中で10μm程度なのでエッチングなどで大きくして観察する。フィッショントラック法は火山ガラスやジルコンの年代決定に用いられるが,温度が500℃に達するとトラックが消滅してしまうため,試料が熱を受けた場合には若い年代を与える。受けた熱が十分に高い時には,それまでのトラックは完全に消滅する。土器の焼かれた年代が測定できるのはこのためである。
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百科事典マイペディア 「フィッショントラック法」の意味・わかりやすい解説

フィッショントラック法【フィッショントラックほう】

絶対年代測定法の一種。鉱物中で核分裂(フィッション)が起こり荷電粒子が発生するとき,その粒子が通過した鉱物内部に長さ約10μm,幅0.001μmほどの飛跡(トラック)がつくられる。この飛跡の密度は時間経過とともに,核分裂が進行するにしたがって増加するので,その変化を利用して鉱物の生成年代(形成されてから現在までの時間)を求めることができる。このような原理に基づく年代測定法をフィッショントラック法(FT法)と呼び,その手法で得られた年代値をフィッショントラック年代(FT年代)という。
→関連項目年代測定法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィッショントラック法」の意味・わかりやすい解説

フィッショントラック法
フィッショントラックほう
fission track method

年代測定法の一つ。天然または人工の鉱物には必ず微量のウラン 238が存在する。ウラン 238は,自然に核分裂を起し,その核分裂片の通過した跡が飛跡として記録される。この飛跡は非常に安定で,常温では保存することができる。したがって鉱物中のウランの原子数と飛跡の数とから,年代測定ができる。しかし材質によっては 300~700℃に熱されると約1時間で飛跡が消滅してしまう。そのため火山噴出物や人造ガラスなどは,この性質を利用して年代を決定することができる。たとえば遺跡で火を受けた黒曜石を使えば,黒曜石の噴出時の年代ではなく,それ以後人為的もしくは自然的に加熱された年代,すなわち遺跡の年代を知ることができる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「フィッショントラック法」の解説

フィッショントラック法
フィッショントラックほう

天然ウランが核分裂(フィッション)した際,ガラス質の鉱物に残した傷跡を数えて,試料の年代を測定する方法。考古学では土器や窯跡など加熱された試料の測定に利用される。また火山灰の年代測定にも利用する。炭素年代測定法では3~4万年までが限界だが,この方法はさらに古い時代まで測定できる利点がある。

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