日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェリシアン化カリウム」の意味・わかりやすい解説
フェリシアン化カリウム
ふぇりしあんかかりうむ
potassium ferricyanide
赤血塩ともいう。ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウムが正しい名称である。1822年ドイツのL・グメーリンによって初めてつくられた。フェロシアン化カリウム(黄血塩)を塩素、過マンガン酸カリウムなどの強力な酸化剤で酸化するか、電解酸化すると得られる。たとえば、
2K4[Fe(CN)6]+Cl2
―→2K3[Fe(CN)6]+2KCl
結晶はニクロム酸カリウムに似た赤色であるが、粉末になると黄色を呈し、水溶液も黄色である。水、アセトンには溶けるが、エタノール(エチルアルコール)にはほとんど溶けない。含まれる錯イオン[Fe(CN)6]3-が不対電子を有するために常磁性を示す。太陽光に当たると分解をおこすので、フェロシアン化カリウムより不安定で、水溶液中では加水分解して遊離のシアン化物イオンCN-を生じ有毒である。アルカリ性溶液において強い酸化剤として働く。鉄(Ⅱ)塩によって青色の沈殿(タンブルー青)を生ずる。青写真の感光剤、インジゴの染色の際の酸化剤、鉄、銅、亜鉛、銀の定性分析などに使用される。
[鳥居泰男]
フェリシアン化カリウム(データノート)
ふぇりしあんかかりうむでーたのーと
K3[Fe(CN)6] | |
式量 | 329.3 |
融点 | (分解) |
沸点 | - |
比重 | 1.878(測定温度25℃) |
結晶系 | 単斜 |
溶解度 | 1g/2.73g(水10℃) |