外陰炎(読み)がいいんえん(英語表記)vulvitis

  • (女性の病気と妊娠・出産)
  • (感染症)
  • 外陰炎 Vulvitis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

女性性器の腟口,大・小陰唇,周囲の皮膚などを外陰部と呼ぶが,この部分の炎症のこと。カンジダトリコモナス細菌などの感染による。多くの場合に腟炎を伴い,腟からの分泌物で汚染されて起る。局所かゆみ,痛み,排尿痛がある。腟炎の治療とともに,抗生物質,副腎皮質ホルモンを含む軟膏やクリームを塗布する。女児外陰部や腟の抵抗力が弱いため,公衆浴場などで淋菌性外陰炎に感染することがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディアの解説

外陰部に起こる炎症の総称。外陰部の皮膚炎,頑癬(がんせん),外陰カンジダ症,外陰ヘルペス(疱疹),尖圭(せんけい)コンジロームベーチェット病など多種のものが含まれる。原因によって,感染性外陰炎と,非感染性外陰炎に大別できる。感染性のものは,細菌,ウイルス,真菌,原虫などによる。非感染性のものは,衣類,衛生材料,セッケンなどの化学的刺激や肥満による摩擦刺激,外陰部の非衛生などが原因となる。ことに女性の場合は,帯下(たいげ),月経血,糞便などの刺激を受けやすく,これらが誘因となって感染を引き起こすこともある。症状は,発赤,腫脹(しゅちょう),発疹,糜爛(びらん)など。治療は,原因となる刺激の除去と,抗生物質,抗真菌薬など,原因菌に対する化学療法による。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 外陰部におこる炎症を総称して外陰炎といいます。外陰は、腟(ちつ)からの分泌物(ぶんぴつぶつ)(おりもの)、尿、便で不潔になり、炎症をおこしやすいところです。しかし、正常な月経周期をもつ健康な女性は、卵巣(らんそう)から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンの影響で、細菌などに対する抵抗力が強く、簡単には炎症はおこりません。
 ところが、幼児や老人、妊婦や産褥期(さんじょくき)の人、さらに糖尿病(「糖尿病」)をもっている人は、外陰部の抵抗力が少なく、炎症がおこりやすくなります。
[原因]
 ひっかき傷やけがなどの外傷、腟炎(ちつえん)(「腟カンジダ症(カンジダ腟炎)」)の原因となる病原微生物、月経時の手当が不適切であったり、ナプキンや下着にかぶれておこるものなどがあります。
[症状]
 外陰部の腫(は)れ、かゆみ、痛みなどがおもな症状です。かいたあとに細菌感染などをおこすと、症状はさらに悪化します。
[治療]
 腟炎や糖尿病があれば、まずそれを治療しましょう。排尿のたびに、かゆみ止めや抗炎症薬の軟膏(なんこう)を塗りますが、必要に応じて抗生物質や副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン剤を使用します。
 治療中は、とくに局所を清潔に保つようにしますが、石けんはかえって刺激になるので、ぬるま湯でよく流し、そのあと軟膏を塗るようにします。また局所をしめつけるような下着やズボンも避けたほうがよいでしょう。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

女性の外陰部(大小陰唇・恥丘・陰核・腟前庭・尿道口・バルトリン腺を含む)の炎症性疾患をいう。通常の皮膚・粘膜にみられるかぶれ,間擦疹,毛囊炎,癤(せつ)などの炎症性疾患と,性器に特有な炎症とがある。後者には,性行為と関連する感染症(これを性行為感染症という)すなわち性病,性器ヘルペス症トリコモナス症や真菌(カンジダ)症,バルトリン腺炎などがある。年齢によって好発疾患が異なる。小児期や老年期には接触皮膚炎や細菌性炎症が多く,性成熟期にはカンジダ症や上記の性行為感染症などが増加する。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

女性性器の外陰部に生ずる炎症で、患部が赤く晴(は)れ、痛みやかゆみがあり、運動時や排尿時に激しくなり、ひどいときには会陰(えいん)から肛門(こうもん)の周囲まで広がる。普通、腟(ちつ)炎と合併して現れることが多く、外陰腟炎の形をとる。また、慢性化すると湿疹(しっしん)状となる。原因としては中毒疹やじんま疹など皮膚科的疾患によるもの、性病や結核など特異的な感染源によるもの、さらに一般細菌などによるもの(非特異性外陰炎)がある。妊婦、高齢者、糖尿病患者などがかかりやすい。代表的なものに、カンジダなど真菌による外陰真菌症をはじめ、左右の腟入口部の腺(せん)が淋菌(りんきん)などの細菌によって炎症をおこすバルトリン腺炎(膿(うみ)が貯留するとバルトリン腺膿瘍(のうよう)となる)やウイルスによると考えられるいぼ状の腫瘤(しゅりゅう)ができる尖圭(せんけい)コンジローム(尖圭コンジローマ)などがある。[新井正夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 外陰部の皮膚は抵抗性が弱く、しかも尿・便・帯下(たいげ)(おりもの)・生理による出血などによって汚染されやすいため、炎症が起こりやすい状態になっています。もともと腟内に炎症が起こっている時には、帯下により原因菌が外陰部に付着するため、腟炎(ちつえん)に続いて外陰炎を合併することも少なくありません。この場合、外陰炎だけを治療しても根本的な解決にはならないため、腟内の炎症の有無についても注意が必要です。

 外陰炎は、化学的刺激(石鹸や薬剤など)・物理的刺激(下着や生理用ナプキンなど)などによって起こる非感染性のものと、細菌・カビ(真菌(しんきん))・ウイルスなどによる感染性のものとに大きく分けられます(表5)。

症状の現れ方

 多くの場合、かゆみ、痛み、熱感などのほか、腟炎合併時には帯下の異常(量が多い、においや色が気になる)が現れます。そのほか、異物感、しこり、出血、潰瘍などがみられることもあります。

 以下、外陰炎の個々の疾患について述べます。

織田 克利


どんな感染症か

 外陰とは、性器の外側の部分(恥丘(ちきゅう)、大陰唇、小陰唇、陰核、外尿道口、腟前庭(ちつぜんてい)会陰(えいん)など)の総称です。

 この外陰部に、細菌やウイルス、カビなどの病原体が感染したり、薬物などの化学物質、腟からの帯下(たいげ)(おりもの)などにより急性・慢性の炎症を引き起こした状態です。

 炎症は、前述のような外的な原因に体の抵抗力の低下が加わって発症します。糖尿病やアレルギーのある人は、とくになりやすい傾向があります。また、老人や子どものように外陰部の皮膚や粘膜が弱い人でも発症しやすくなります。

症状の現れ方

 外陰部の痛みやかゆみ、時には違和感が主体です。外陰部が発赤したり、はれたりもします。炎症が慢性化すると、皮膚や粘膜が白っぽくなり、がんこなかゆみが続きます。

 しばしば、前に解説した腟炎による帯下が刺激となって外陰炎を発症します。

検査と診断

 外陰部の所見に加え、外陰や腟分泌物中の病原体を検出するなどして原因をつきとめます。

治療の方法

 原因を探し、これを治すとともに、かゆみに対しては抗ヒスタミン薬やステロイドホルモン含有の軟膏やクリームを塗ります。また、高齢者のように外陰や腟粘膜の弱い場合は、ホルモン剤を投与して強化を図ります。

病気に気づいたらどうする

 外陰部のかゆみは、いろいろな原因で起こります。2~3日しても治らない時は産婦人科を受診しましょう。とくにがんこなかゆみが3カ月以上続く時は、外陰の硬化性苔癬(こうかせいたいせん)(外陰部の粘膜が白く硬くなる)や悪性病変も考えられるので、必ず医師に診てもらってください。

川名 尚

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

外陰炎の関連情報