改訂新版 世界大百科事典 「ホンゴウソウ」の意味・わかりやすい解説
ホンゴウソウ
Andruris japonica (Makino) Giesen
暗い林の下の落葉の間にはえるホンゴウソウ科の多年生腐生植物。地下に白色の根茎があり,これから生じる根の中には共生菌の菌糸が入っている。菌糸は地中の腐敗物を分解し,植物体はこれを栄養としている。地上茎の高さは3~13cm,きわめて細く,径0.5mm以下である。葉は鱗片状で長さ約1.5mm,葉緑素がなく,茎とともに紫褐色をしている。7~10月に総状花序をつくり,花序の上部に雄花,下部に雌花をつける。雄花は径が約2mm,花被は紫紅色で6裂し,裂片のうち3枚は披針形で幅広く,他の3枚は狭く,先が細長く伸びて球形の付属体をつけている。おしべは3本あり,花糸は短く,基部は互いに合生している。葯は横方向に長い。葯隔から針状の付属突起が出ている。雄花は開花が終わると,花柄の中央から切れて落ちる。雌花は径が約1.5mmで,花被はやはり6裂する。心皮は多数あって離生し,集まって球状の雌蕊(しずい)群をつくる。花柱は糸状で各心皮の腹面から出ている。種子は各心皮内に1個でき,中に胚乳がある。三重県四日市市の南方,楠町本郷の樹林内で最初に発見されたので,この名がついた。関東地方から沖縄まで分布地があるが,ややまれにしかみられない。
ウエマツソウSciaphila tosaensis Makinoは雄花の葯隔に付属突起がなく,花被裂片は細い線形である。和名は発見者の植松栄次郎にちなむ。
執筆者:山下 貴司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報