日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボークラン石」の意味・わかりやすい解説
ボークラン石
ぼーくらんせき
vauquelinite
第一鉛および第二銅の含水正リン酸正クロム酸鉱物。ヒ素置換体フォルノー石fornacite(化学式Pb2Cu[OH|AsO4|CrO4])とほぼ同構造。フォルノー石系列の構成が可能である。自形はc軸方向に伸びた楔形(くさびがた)の断面をもつ柱状結晶で、頭部が斜めに切れる。普通は団塊状、粒状、皮膜状、塊状など。深熱水性多金属鉱床の酸化帯に銅および鉛の二次鉱物として産する。クロムの根源としては紅鉛鉱の場合があると考えられている。日本では兵庫県養父(やぶ)市明延(あけのべ)鉱山(閉山)から微量を産した。
共存鉱物としては紅鉛鉱、緑鉛鉱、ミメット鉱、白鉛鉱、ビューダン石、ダフト石duftite(PbCu[OH|AsO4])など。同定は色、光沢、大きな比重、金剛光沢などが特徴であるが、色の変化に多様性があり、肉眼的な決定は非常に困難である。ただ紅鉛鉱と共存している場合はわかりやすい。命名はフランス、パリ大学教授で新元素クロムの発見者であるボークランにちなむ。
[加藤 昭]