メルカトル図法(読み)めるかとるずほう(英語表記)Mercator's projection

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メルカトル図法」の意味・わかりやすい解説

メルカトル図法
めるかとるずほう
Mercator's projection

地図投影の一種。正角円筒図法経線平行直線で、その間隔は標準緯線弧長と等しい正距にする。緯線はそれと直交する平行直線で、間隔は緯度が高くなるほど広がり、極は無限遠になり表されない。地図上の任意の直線は地球上の航程線(地球上で方位が一定の線)を表し、すべての経線との交角が等しく、その交角は地球上の方位角を正しく表す。この性質から航海用の海図に用いるように国際的に指定されている。これとよく混同される心射円筒図法は、正角図法でなく航程線も直線に表されない。オランダメルカトルが1569年に刊行した世界全図の名声が高かったためメルカトル図法と命名されているが、1511年にドイツのエッラーブErhard Etzlaub(1460―1532)作成の地方図に同じ図法の経緯線目盛があった。メルカトルは図解的に作図したが、その理論は1599年にイギリスのライトEdward Wright(1558―1615)が発表した。

[金澤 敬]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メルカトル図法」の意味・わかりやすい解説

メルカトル図法
メルカトルずほう
Mercator's projection

地図投影法の1つで,正角円筒図法。経線は等間隔の平行な直線,緯線は赤道と同長の直線で,その間隔は,一定の方向線が図上で直線になり,経線となす角が地球上と同角となるようにとるので,高緯度にいくに従って大きくなる。 G.メルカトルが 1569年に発表した世界全図 (メルカトルの世界図 ) に用いられたところから,彼の考案といわれるが,11年に E.エッラーブが作成した地図に用いられていた。その数学理論は 99年にイギリスの E.ライトが明らかにした。この地図投影法は,地図上で任意の2点を結ぶ直線が地球上では航程線となる唯一の地図投影法で,世界中の海図に標準として用いる地図投影法となっており,国際水路機構規程で,国際間で用いる海図の地図投影法に指定されている。なお,メルカトル図法を心射円筒図法とまちがえて説明されていることが多い。心射円筒図法では,地球の中心と地球上の任意の点とを結ぶ直線と円筒との交点をその投影とし,正角図法でないが,メルカトル図法ではこのような関係は成り立たない (→心射図法 ) 。

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